1. 中嶋英雄AIF研究室
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理解のための基礎知識① - フロイトの心的構造と自我

(プロローグ さらなる続き)

形成外科から精神科に転じて4年の間、精神科医療の現状に対する疑問から、「心とは何か?どこにあるのか?」という心脳問題に興味を持つようになり、勉強してみると心には量子論が関係するという興味ある知見、考察があることを知り、必然的に量子論、脳科学、心理学、分子生物学、免疫学、精神神経免疫学、科学哲学など学ぶことになりました。
  量子論は、古典物理学が示した、ラプラスの悪魔に象徴される因果論、決定論が物質的世界では成立しないことを示しました。
  分子生物学(免疫学)は、生物の自己を決定づける免疫の仕組みは、造血幹細胞から未熟リンパ球を経て、B細胞、T細胞が生成される過程が全くの偶然性に依ることを示し、またB細胞T細胞の抗体、受容体タンパクがDNAの切り貼りという、これも偶然性による遺伝子の再編成によって作られることを明らかにしました。(利根川進1983)。
  また脳科学は、脳ができる時に、1つ1つの脳細胞がお互いどのように結合するか、どの脳細胞がどの脳細胞と結合できるのか、どの脳細胞が結合出来ずに死んでしまうのかは全くの偶然によって決まるということを明らかにしました。

つまり、身体的「自己」を決めるT細胞と、精神的「自己」を決める脳細胞が、同じような偶然性に依拠するアポトーシス(細胞の自然死)の仕組みで出来ているのです。

現代の最先端科学は生命、精神、物質の森羅万象が偶然の結果でしかないことを教えていまするが、しかし、原子核と電子の構造決定の巧みさや、フィナボッチ数列、黄金比、フラクタル現象などの神の技としか思えない自然のデザイン性や、バイオミミクリー(生物模倣)が教える超越的な自然現象の合理経済性などを見ると、「摂理」とでも言うべき何か超越的な力の存在による差配を感じざるを得ないものです。
  一方で、私は、真・善・美や自尊心、良心、憐みの気持ちなど、精神には自我のシステムを超越したメタシステムとしての領域(霊性spirituality)があると考えるようになり、また、前記したように有機物から無機物まで、あらゆる存在、万物、万象の世界(精神、生命、身体、社会、自然、宇宙)にはその営みの規範となり、調整を図る規律、根元的原理(摂理)があると考えるようになりました。
  その霊性と根源的原理は連続して、個の内的世界から宇宙全体の中心軸をなしており、私はそれを自律統合性Autonomous Integrity:AIと名付け,その機能的役割を自律統合性機能Auotnomous Integrity Function:AIFとしました。(心の部屋、「人の存在と心の構造モデル」2013.03.11)図1.

AIFは、人の健康においては、「神経系」、「内分泌系」、「免疫系」に「心(精神活動)」を加えた4者が相互に関連しあいながら、心身一体のバランスをとり、健康を維持する働きであろうと推察しています。(再び自律統合性について、2014.6.5.)

私は、これらの内、身体においては古代中国の『扶正』の考え、西洋では、ヒポクラテスからベルナール、キャノンにつながる自己治癒能、恒常性ホメオスターシスの概念に近いものであり、精神においては昨今「レジリアンス」と呼ばれる概念に近いものではないかと思っています。

一方で私は、量子論、脳科学、心理学、分子生物学、科学哲学等を勉強する中で、心・精神にも波動性があるとの見解に至り、量子論でド・ブロイの言う「物質波」(電子に限らず、すべての物質の正体は波である。)に対比して「精神波」の概念を創発し、物質も精神も、すべてのものは波動である(波動性を持つ)という考えを持つようになりました。また、物質波の内で肉体の波動を身体波と名付けました。

自然界には、リズム(ミクロリズム)が多数寄り集まれば、大きなリズム(マクロリズム)にまとめ上げようとする自然の力による集団のリズム現象,同期現象があるとされ、これは、ペンローズが、心は脳神経細胞の骨格細胞のシンクロニシティ(同期生)によって生じるとする説や、私が精神は波動性を持つとする仮説(「精神波」心は波動である①②2014.04.08.)を支持するものとなっています。

また、健康を波動で考えると、健康とは身体波(物質波)と精神波の振動が正調(リズミカル)であって、両者が共振している状態であり、自律統合性機能autonomous integrity function: AIFが神経系、内分泌系、免疫系を通してそれらをコントロールしていると説明します。
  ここでいうコントロールとは、AIFが一方向的に身体波、精神波を支配するものではなく、身体波、精神波の状態もAIFに影響し相互的に働くものであり、また身体波、精神波はAIF絵を通して霊性領域、宇宙にも繋がるとします。

つまり、AIFの作用は、ゲシュタルトの言う「全体が部分の総和としては理解できない」非線形的な作用であり、神経系、内分泌系、免疫系の3つ身体的要素と身体波、精神波の波動的要素とAIFはシンクロニシティ(共時性原理、非因果的同時生起)で作用、機能していると考え、自己、自我と呼ばれる人の心、霊性領域の心、それに肉体、社会・自然・宇宙までもが一体性の中で存在すると捉えます。

AIFが、何らかの理由でバランスを乱すと、身体波、精神波のリズム、共振が失調するために心身の健康を失います。また身体波、(あるいは精神波)のリズムが乱れるとAIFの機能がバランスを失い、精神波(あるいは身体波)に波及し、心身の健康を失うことになます。私の仮説では心身一体の相関は、この様に説明されます。

またAIFの失調は心身の健康ばかりではなく心的霊性領域、社会、自然、宇宙の見方にも影響を及ぼし、人の生き方、アドラーの言うライフスタイル(各人の自己認識や世界観の総体のようなもの)やストロロウの組織化原則(自分の主観的世界で体験を組織化する原則)を変えることになります。
  従って、心身の健康を失うと、多くの場合は、前向きな、積極性のある生活が困難になります。

身体波、精神波のリズム失調を「自然回復可能な領域」と、「医学的支援なしでは回復不可能な領域」に分けて考えると、前者の状態は、病気未満といえ、後者に移行した状態が病的な状態と言えます。

この自然回復可能な未病なうちに対処しようとするのが先制医療の概念であり、心の領域では私の提唱する整心精神医学の概念(心の部屋「整心精神医学Orthopsychiatryの概念」)です。

自律統合性機能主義Autonomous Integrity Functionarismというのは私が提案するライフスタイルですが、そこでは自律統合性Autonomous Integrityという摂理を信じ、主として免疫力を強化することで、揺らいだ身体波、精神波のリズム、共振を復調させ、心身、霊性、社会、自然、宇宙の万物、万象に繋がる自律統合性機能を強化させ、心身の健康の主体性を自分の手に取り戻し、自らの力で精神、肉体、社会、自然、宇宙に広がる安定した身体的、精神的、霊的に健康的な、持続可能な暮らしを立て直そうとするものです。