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安倍政権の暴走を止める手段はあるのか?

 総選挙で、安倍首相の思惑通りの結果になった。
これで、彼は自分の思うように政治を持てまわすだろう。

 安倍の安倍による安倍のための政治が始まることになる。

 国民は、決して白紙委任をしたわけではないが、与党で3分の2も議席をとれば、開き直ることもできるだろう。

 集団自衛権、秘密保護法、残業規制・派遣法、原発再稼働、IR法案、原発・武器輸出規制緩和から憲法改正に至るまで、したい放題やるに違いない。

 今回の選挙は官邸の作戦勝ちではあったが、別に違法選挙でも、不正選挙であったわけではない。国民が下した結果がこうなっただけのことである。

 野党不在で、事実上の一党政治になったのだから、民主主義の下では、与党には政策の一つ一つに丁寧な説明責任が求められるが、今までの日本の政治風土から見れば、望むべくもなく、国民には真実が知らされないまま重要法案が矢次早に成立していくに違いない。

 先に「IR法案に反対する。」(2014.11.26ラプラスの妄想)で危惧した通りの結果になり、失望感は拭いきれないが、今回の総選挙で2つの課題が見えてきた。

 一つは沖縄県民の米軍基地辺野古移設反対の決定的な民意の表明にかかわることである。中央政府への異議申立てに対する,これからの政府の対応で、今後の日本の民主政治の方向性が見えてくるであろうという課題である。
 沖縄県民が知事選に続いて、総選挙でも移設反対の意を示したことに対して、政府がどう対応していくかは、国民が政府に刃向ったときに、国民は国からどういう扱いを受けるかのよい参考事例になるだろう。
 成田の二の舞にならないことを願うばかりだが、沖縄の反対闘争が起点になり、再び政治の季節が廻って来るような気がしないでもない。
国状が不安定な国なら、これは沖縄の独立運動にも発展しかねない問題であろう。

 もう一つは、政治家の資質に左右されない、民主主義に基づく政治が実現できる政治システムを作る必要があるという課題である。

 政治家の能力、人格にかかわらず、国民の監視下で、国民の意に沿った政治が行われるようなシステムを考え出し、作り上げることである。(もちろん、小生も国民の総意が常に正しいとは思っていませんが。)

 物理学者の山田廣成が「対話原理が導く議会制度」(「量子力学が明らかにする存在、意志、生命の意味」Pp149-151,光子出版、2014)と称して、面白い提案をしている。
 山田は、日本を代表する核物理学の俊英だが、現在の量子論解釈に異を唱え、電子は波動ではなく常に粒子という実体であり、かつ電子にも意志があるとして対話原理という概念を創案し、自然科学から、経済学、社会学まで、あらゆる学問の統一を図ろうとし、物理学を思想に昇華しようとしている,わが国ではかなり変わった思考法する異端の物理学者である。
 その理論の詳細はまたの機会にして、ここではその議会制度を見てみよう。

 まず、人は他人との対話なくして、己の存在の確認のしようがない、アイデンティティも確立されないという基本的な考えがあって、かつ物事はディベートによる弁証法で最善の結論が出るという彼の信念がある。

 また、日本の政治が分かり難いのは、政治家の発表能力の低さに大きな原因があるとみる。
 確かに我が国は、当用漢字が読めなくて答弁の原稿にはすべてルビが打ってあるような元総理、現副総理が、そっくり返って口をゆがめて国民を見下ろすようにしゃべるお国柄である。

 政治を家業のようにして、既得権を持ちまわすような世襲政治家に、本人の政治理念を求める方が間違いであり、自らの努力の賜物である教養を期待するほうが滑稽というものである

 山田の論理の要点は、実際に政策、法案を作る官僚達とは別の官僚グループに、その政策の問題点を詳細にまとめて対案となる政策を報告させるというのである。法案を作るのと同じか、それ以上のエネルギーを労して、反対法案を作成するように官僚組織に義務づけるのである。
 つまり、案件毎に、担当官僚を二つのグループに分け、推進グループと反対グル―プを作り法案、ディベートの資料を役人の全能力をかけて作らせるのである。思想、信条とは関係なく、能力を尽くさせ、それを役人の評価に繋げるのである。
 日本のエリート官僚は真面目で優秀であるし、第一、情報を誰よりも多く持っているから、反対法案も野党の議員が作るより、より的確で、説得力のある鋭いものになるだろう。
 これはあくまでロールプレーであるから、別の案件では攻守を交替すればよい。

 弁証法ではテーゼ、アンチテーゼが論争し、ジンテーゼが生まれる。つまり止揚する。そのジンテーゼを作るのが議会であり、政治家の役割である。政治家がどんな選択をしたかが、国民の監視下にあれば、政治家も勉強するし、襟も正すだろうというのが山田の意見である。

 

 反対意見は意見が正確に提示されてこそ核心を突くし、意見は反対意見が示されてこそ、その真実が見えてくるものである。役人は、自分の能力のプライドをかけてディベートには勝とうとするだろうし、大方は出世が好きな人種であるから評価を気にして、ディベートは熱を帯びた真剣なものになるだろう。

 この方式では、役人には大変なストレスになるだろうから、国Ⅰ試験は忌避されるようになるかもしれないが、官僚という仕事は、国の命運が自分の肩、頭脳にかかってくると思えば、自分の能力に自信がある若者なら、それが気概となり、本懐と思う者も出てくるに違いない。

 そういう意味では、日本にもフランスのようなエリート養成学校グランエコールがあっても良いのかも知れない。

 もちろん政策の発案の基本は議員立法でなければならないので、野党も官僚組織を使えるようにするのが良いだろう。

 さて、今とりあえず求めることは、安倍首相には勝って奢らず、真摯に謙虚になり、法案の説明責任をしっかりと果たして欲しいと思うばかりである。
 

 各野党は共産党を見習って、組織を固め、有権者に目を向けることである。
 そして再編を急ぎ、与党の対抗勢力を早く作ることである。

 それが出来ない野党なぞ、今や誰も見向きもしないだろう。

 

 

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