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SUV系④957型(2009年)カイエンターボーカーナビの罠にはまる

カイエンターボ957

カイエンターボ957

私にとって、2代目のカイエンターボである。1代目の955型カイエンは事故車になった上に走行距離が8万kmを超えたので、買い替えのタイミングと思っていたところに、3年落ちで走行1万kmの出物の957型カイエンターボがポルシェ浜田山の中古車センターにあったので買い替えた。前の955型に比べると、排気量が300cc増え、車重が軽くなったせいか、加速が見違えるほど良くなり、軽快さが明らかに違っていた。かつての955型カイエンは、911カレラを代表とするポルシェのイメージからすると鈍重という感じは否めなかったが、957はかなりポルシェらしいというかスポーツカーの感じが備わってきたというのが第一印象であった。0-100などのスペックも911と遜色のないものになった。リアゲートはオートであり、その便利さを初めて知ることになった。ナビはもちろん、キセノンライト、電動シート、シートヒーター、オートクルーズ、レーダー探知機や後部座席にもテレビモニターなどのオプションが付いていた。

 これは小生の持論であるが、ポルシェのように品質が安定し安心感があり、かつ、頭初の設定価格が「かけそば]状態で、乗り出しには種々のオプションが必要になるような車は、中古車で買うに限ると思うのである。外車は登録するだけで半額になるという位、中古車の値落ちは大きいし、オプションは基本的に査定に影響しないから、距離の出ていない中古車はお買い得感が強いのである。新車にこだわる人は仕方ないが、拘らなければ新車との価格の格差は歴然であり、新車のメーカー保証の付いたような日の浅いものは、特に狙い目だと思う。大体、全体、ポルシェは提示されている新車価格と、実際の乗り出し価格差が大き過ぎるのである。(オプション無しでは走れない)
今回小生の購入したものは、3年目の車検が付いて、タイヤは新品にして、距離は1万キロ強で価格は新車の約半額であった。928も911カレラ4も911ターボも新車で買ったが、前回、一代目のカイエンターボを中古で買ってみて、その様に考えるようになった。始めが中古であれば、下取り価格との落差も少なく、経済性には富んでいるのである。

 少なくとも週一で、東京―高崎間を往復し、乗る機会が多く、また気持ち良く走ったせいでもあるまいが、関越自動車道では、覆面パトカーにしばしば捕まった。あまりに露骨に狙い撃ちされるものだから、家族の提案で、車両ナンバーを1番に変更した。理由は警察も面倒なことは嫌だろうから、面倒で嫌な相手が好むような番号をつければ、お目こぼしの機会も増えるのではないかという、根拠のない推測に基づくものである。さてそれで検挙率が下がったかというと、見事に下がったのである。警察官も人の子である、と言っていてはいけないのだが、警察という合法的権力は、非合法の権力には弱いというのは、どうやら事実のようである。

 ボディカラーは、先代は黒であったが、今回は白となった。新車ではないから、色は自分の好みが最優先されることはないが、白であれば無難だろうと判断した。カイエンは黒が第一人気らしいが、車の維持には、実際は白が断然楽である。黒はちょっとした汚れでも目立つが、白は目立ちにくい。黒では僅かなパラパラと降る程度のにわか雨でも見事な斑点模様を描いてしまうが、白ではあまり目立たないから気楽に乗れるのだ。

 以前にアーデンジャガー40ビトルボに乗ったことがあるが、漆黒であった。車の形に良くマッチし素敵な雰囲気を醸し出してはいたが、その風格を保つためには小生は始終車を磨いていなくてはならなかった。段々、車に使われているような気分になったものであった。

 さてこの車の記憶に残るエピソードを一つ。
 ある夏休みに、長野県北信地方に旅行に行った。栗と北斎で有名な小布施に寄り、野沢温泉の評判の温泉宿を訪ねた。「住吉館」という、決して高級ではないが、モテナシの良さで、予約の取れない宿として常に上位にランクされる宿である。
 野沢菜で有名な野沢温泉は、温泉街のご多分に漏れず、坂の多い街である。山の斜面に温泉旅館が貼りつくように建っている。私たちはナビを信じて、その指示通りに行ったのだが、最後に狭くて急峻な登り道になった。中央が階段状になっていて、その両側が平な斜面でタイヤが走れるようになった急坂であり、少々ためらったが、ナビは繰り返し指示するからハンドルがのけ反るようにして登っていった。すると、最後は本当の神社の参道の石段に繋がっていた。その手前に直角にクロスする細い道があり、ナビは左折して野沢温泉源泉場の方向へと指示したが、とても左折できる余裕は無く、何とか曲がれそうな右折路を思わずとった。その先には神社の敷地があったので、停車して旅館に電話して尋ねると「その坂を戻って、00の先の商店街を進んで、、、。」と教えてくれ、同時に「ナビが間違えることが、よくあるみたいですよ。」と付け足した。

狭くて急な登り道

狭くて急な登り道

急な階段のついた道に変わった

急な階段のついた道に変わった

その先は石段になっに

その先は石段になっに

 仕方ないからUターンして、問題の交叉したところを左折しようとしたが、右側が崖になっており、右前輪が脱輪したらとの恐怖感が先に立ち、左後輪を置き石に当ててしまった。かなり抵抗があったが、曲がるしかないと思い強行したら、フェンダーがへこんでハズレかかった。後で冷静になって考えれば、右前輪にはモニターカメラが付いていたし、一人が外に出て、目視して誘導すればギリギリ左折できたのではないかと思えたが、その時は登攀して来た時の恐怖感が先に立ち、感動錯覚を起こしていたのではないかと思う。

フェンダーが外れた

フェンダーが外れた

 それにしても、こんな死ぬかと思うような恐慌状態に陥る客が時々いることを承知しているのなら、旅館の人は、予約時に、「車で来るなら、最後はナビが間違えることがあるから、道を確認して来るように、」くらいのアドバイスは出来なかったものだろうか、と痛切に思ったものである。
 評判のいい、「日常的な最高のおもてなし」を誇る旅館の気遣いがこの程度ではなあ、という思いがバイアスになってか、果たして、住吉館の部屋も設えも風呂も料理も、持て成しも平凡なものであり、前評判の高さが一体どこにあるのか私達には皆目理解できなかった。

 JAFを呼んで、この先走行に支障はないかを確かめるなど、思わぬ無駄な時間使ってしまい、楽しかるべき旅行もちょっとしたトラブルで気分を壊すところであったが、この時は年の功で、きっぱりと気分転換を図り、車は100キロを超す高速では走れなかったが、それでも、それなりに楽しみながら帰ることが出来た。

 この車には、何の不満もなかったが、走行距離が5万キロ近くになったので下取りの良い内にと、かねて評判のマカンに替えることにした。
 こうして私の2代目カイエンは我が家での役割を終えることになりました。


 

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