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信州青木村?国宝大法寺三重塔と田沢温泉有乳湯

五月のゴールデンウイークは今年も蓼科の小屋開きに行くことになりました。昨年の秋以来の訪問で、萱の屋根が落ちていないか、水道は破裂していないかとの不安を抱えての道中になります。

幸い萱は健在で、水道水も無事に出て、一安心でしたが、今年は例年よりかなり寒く昼間から炬燵が恋しいほどで、タラの芽の木も例年なら僅かに芽吹いているはずの蕾の芽も全く見られず、春には未だ程遠い風景でした。

山荘はまだ冬

翌日は、春を求めて里に下りることにし、上田市の隣にある青木村に行ってみました。目的は温泉のバイブル本で調べた田沢温泉の日帰りの湯で、お風呂セットとおにぎりを持参してののんびりとしたドライブです。

青木村は、群馬の里村とはまた違ったのどけさと優しさを肌で感じさせてくれる所で、田沢温泉のちょっと手前で国宝大宝寺の案内標識を見つけ、急ぐ旅でもないので立ち寄ってみました。

それは塩田平を望む山間にあり、桃や山吹、山桜が咲き誇る、美しい日本の山里の原点を思わせるような風景の中にありました。その時、僕はある情景を思い浮かべました。

それは、あの三大テノールの一人と謂われ人気のオペラ歌手のプラシド・ドミンゴが東日本大震災の直後の日本公演の際、アンコールで日本国民の愛唱歌である「故郷」を日本語で熱唱し、多くの観客が感泣したというエピソードです。観客の多くは、きっとこんな美しい日本の山里の情景が目に浮かんだのではないかと思ったのです。

青木村の春CIMG1166

大法寺 (2)


国宝三重塔は、鎌倉時代に大阪の四天王寺の匠による作とのことですが、なにゆえこの辺鄙な山間に、奈良興福寺の三重塔と並び称される、このような見事な三重塔が建立されたのか不思議に思えましたが、建立の縁起は実は良く分かっていないそうです。

三重塔(1)

三重塔(2)


塔の背に当たる山に立ち、村を見下ろすと、そこが京都でも奈良でもない無名の鄙びた山村である事に一種の感動を覚えました。

塩田平

大法寺の隣には近代的な建築の青木村郷土美術館があり、この地方ゆかりの作家の絵画や彫刻が展示されていましたが、印象的だったのは、入館料が安くて喫茶のお菓子とコーヒーがとても美味しかったことです。

青木村郷土美術館

青木村は辺鄙な山村にしてはどこか垢ぬけている感じがしたのですが、この地方は江戸時代から義民(百姓一揆)の伝統があり、村民の政治的、文化的意識が高いのが、多くの研究者によって指摘されているのも納得のいくところでした。

田沢温泉は、同じような山間の、数軒の宿からなる小さな温泉地で、源泉でもある共同浴場の有乳(うち)湯が中心で、お湯番によれば、お湯は硫黄泉でありながら気泡が出るのが特徴の子宝の湯として有名とのことでした。確かに身体の芯から温まり湯冷めのしない、お肌すべすべの良い湯でした。

田沢温泉

有乳湯共同浴場


家人共に青木村、田沢温泉の雰囲気がすっかり気に入り、日帰りは止めて、当地で一泊しようとしたのですが、生憎、空いている宿はなく、仕方無く、もう一か所気になっていた「修那羅峠の石仏群」を見て帰ることにしました。

それは、修那羅峠から1キロほど急な山道を歩いて、ようやく辿りつくような所にありましたが、860体を超える石仏が山中に林立しており、京都の石峰寺の五百羅漢ほどの調和のとれた美しさはありませんでしたが、粗野ながらも迫力は十分にあり、苦労の甲斐は報われたと納得できるものでした。

修那羅峠の石仏群

信州のほとんど無名の観光地を訪ねた今回の小旅行も意外な発見の連続であり、心癒される良い休日になりました。

皆様も機会があれば、青木村をお尋ねになられることをお勧めいたします。

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