仕事を引退して、ほぼ読書三昧の日々で、身も心も老いるに任せるような日々ですが、
ごくまれには楽しい出来事もあります。
今回は、近年とみに、ごく稀になった、淑女とのデートの半日の思い出を綴ります。
これは他人が読んでもしょうもないことで、書いてる本人が一人で反芻して喜ぶためのものですので、悪しからず。
(この先をお読みになるのは、あまりお勧めはしません。)
銀座4丁目の看板ともいえる銀座和光で、2か月ほど前にセイコーの腕時計を買ったら、ピアノコンサートに招待されたので行ってみました。
特段、高級時計を買った訳でもないので、大して期待したわけでもなく、ただ演奏が前田憲男ということだったので、お誘いに乗ってみたのです。
招待は2名でしたが、家人は、あいにく仕事だったので、どなたかお供してくれるご婦人を募ったところ、運よく1名の淑女、Y嬢が名乗りを上げてくれたのです。
まだ大学病院に勤務している頃は、何の縁か知りませんが、年中、若い女性と合コンをしており、当時はまだSJ大学の学生だった彼女とも数回食事をし、面識があったのです。
コンサート開始15分前に和光の前で待ち合わせをし、7階の会場に赴くと、ホールというよりサロンというような小体なもので、グランドピアノを囲むように椅子が2,30脚並んでいました。
和光店長の挨拶と、本日のコンサートの説明があり、14時きっかりに白髪の老人が現れ(前田憲男氏も老けましたね!)、にわかにピアノを弾き始めました。
スポンサーにちなんでtimeにかかわる曲を混ぜながら、懐かしいポピュラージャズから‘愛の賛歌’、‘花は咲く’など、幅広い名曲を一時間ほどの演奏で、途中で男性のボーカルも入ったり、客のリクエスト曲を弾いたりと、サービスの行き届いたミニコンサートでした。
和光の品格が出た素敵な催事でした。
ホールの建物の下は銀座4丁目の交差点で、おりしも歩行者天国で、多くの人が行き来しているのがウソのような、落ち付いた優雅な空間でした。
贅沢を言えば、シャンパンの一杯でも出れば最高だったのに、という思いが少しだけ残りましたが。(これは和光の上客には無い発想で、下品で申し訳ありません。)
それでも和光はサプライズを用意していました。
招待客を和光ビルの屋上に上げて、時計台を見せてくれたのです。さすがに中には入れませんでしたが、時計台と三越の看板が水平にみられるという貴重な体験をしました。
優雅で贅沢な気持ちを味わって、夕方の食事までの2時間をどう過ごすかは、少々迷いましたが、前日、届いたばかりの雑誌“芸術新潮”を見ていたら、日本橋の三井記念美術館で『超絶技巧!明治工芸の粋』をやっているのを知り、彼女が大学時代に美術史を専攻していたことを思い出し、その見学に決めていました。
行ってみると、結構な賑わいで、ヒトの頭越しで見るような鑑賞でしたが、象牙の微細な彫刻や金物細工など目を見張るような作品が展示されており、予想外に見ごたえのあるもので、Y嬢も感心し喜んでくれ一安心でした。
その後は三井タワーの1階に出来たマンダリンホテルのカフェでお茶をし、すっかりデート気分に浸りました。(僕だけでしょうが。)
コレド日本橋の新館をはじめ、日本橋はすっかり様相が変わり、オープンカフェのテラスにいるとまるでヨーロッパの街角にいるような気分になりました。
それに加え、マンダリンのお茶もお菓子もとても美味しく、お皿からフォーク、ナイフまで紙で出来ていながら、チープさもなくセンスの良さにも感心しました。
後日談ですが、ここではホテルのフレンチ、シグネチャーの特製サンドイッチをテイクアウト出来ることを雑誌LEONで知りました。今度ドライブの行きがけに、さりげなく寄りランチに買えば、ニキータのハートをわしづかみにすること間違いなしと、ついヨコシマな考えがよぎってしまいましたよ。
さて、夕食は最近行きつけにした、銀座で唯一顔のきく鮨屋、‘すし家’に行き,思う存分お寿司を味わってもらいました。Y嬢は育ちも良く、中々お店を良く知っているので、その評価が楽しみでしたが、十分満足していただけたようで、安心しました。
ここまでで、まだ8時前でしたが、老いた僕にはさらに飲みに行く元気は無く、楽しかったデートも無事、平和的に終わりを迎えたのです。
帰宅すると、すっかりご機嫌な僕を見て,『あなたは若い娘と遊ばなきゃダメよ。老けちゃうからどんどん遊びなさい』と、山の神が言ってくれましたが、さてさてどこまで本当にして良いのやら、実に悩ましいところです。
僕にも、まだ多少の学習能力は残っているのですよ。