(私のウエブサイトがリニューアルされたのを記念して、今週は水曜日に続き第二弾を載せます。記念号にふさわしい?内容になっていますのでお楽しみに。)
ST.Dupontの新作発表会が9月下旬にフランス大使公邸であり、招待状が来たので、同伴者を募ったところ、M嬢が名乗りを上げたので、夕方を見計らって、行ってみた。
もう締め方を忘れてしまいそうな位、久しぶりに、ネクタイを締めてのお出ましになった。
M嬢は英、仏、伊語をこなす才媛なので、僕の秘書兼通訳を装ってもらった。
ただ年寄と若い御婦人が、距離を置いて佇んでいても様にならないので、始めからちょっと怪しい雰囲気で行こうよ、と密約を結んでおいた。
つまり、雑誌レオンのニキータの役回りをお願いしたわけである。さしあたって小生は、ちょい悪オヤジ気取りという次第である。
今は、小生のような年齢のちょい悪オヤジは、レオン世代からはヤンジー(やんちゃジジー)と言われ、ニキータも昇格して姫―ナと言うらしいが、この時点では、まだ雑誌MADUROは発行されておらず、ニキータであった。
フランス大使公邸は大使館に隣接しているが、入り口は離れており、少々迷ったが、到着しても、門はしっかり締まっており、近づくとガードマンが招待状をチェックして入れてくれた。
玄関口で再度身分チェックがあり、ようやく会場に入れた。
入り口でシャンパングラスが渡され、同時にデュポンの社員にガードされるようにして、商品説明を受けることになった。歴代のライターや万年筆の名品や新作などが、きれいにディスプレイされており、皆興味深く、余り退屈することはなかった。
シャンパンは、宴会のビールのごとく、飲み切ることなく継ぎ足しされ、お蔭でぐいぐいとアルコールは回ったのである。
途中で本国フランスから来ている,彫金のマイスターのデモがあり、ついでに体験彫金をさせてくれた。この辺りから、酔いも本格的に回って、緊張感もとれ、ついスカルのカフスを予約してしまった。(家人からは、何も買うなと厳命されて来たというのに。)
ニキータにも、もちろん心遣いはしたのだが、魂胆怪しまれ固辞されてしまったのは、ヤンジーの技が未だ未熟なるせいかと反省した。(ここら辺りは畏友ジョージの指南を受けなくてはならない。)
そこいらまでの展開で、テラスに出て、シガーを吸うことにした。
無論フリーサービスである。Dupontのシガーカッターとライターを使っての美しい所作で火を付けて渡してくれた。
小生は日頃喫煙の習慣はないが、ごくたまにシガーは吸うことがある。友人Y氏夫妻が食後にはシガーを吸われるので、時々真似をする程度である。
公邸の庭は広い芝生が緩やかな波を打ち、先には大きな灯篭と落葉樹が植えられ、和風の仕立てであるが、テラスはフレンチモダンのデザインで異国風に居心地よくバランスがとられており、、初秋の爽やかな気候も相まってテラスはとても快適であった。
何種類ものアミューズが運ばれたが、意地汚くも全種類食べた。ニキータも同じように食べ飲んでいた。多分、彼女もニキータ気取りも悪くはない、と思っているのではないかと勝手に妄想した。
当初は30分位の滞在の予定であったが、1時間以上いて退散した。夕食の予約時間はとうに過ぎていたのである。
帰りにはお土産を各々にくれた。ST.Dupontのエンブレムが彫られたキーリングであった。
その後、至近にある、馴染のラシエット・ブランシェで夕食を食べた。
アペリティーフは既に十分飲んできたので、すぐに白から始めた。
二人で白のグラスを6杯、赤を4杯飲んで、すっかりご機嫌になり、ニキータごっこも佳境に入り、訳あり風の記念写真をとった。
これは、後で考えると、殆どセクハラと言っていい失態であったようで、M嬢には大変ご無礼致しました。
ただ、家に帰ってからデジカメを覗いてみると、中々堂に行ったもので、良い雰囲気が出ているのではないかと、一人でニンマリとほくそ笑んでは、何度も見ては反芻して楽しんだのである。
帰りの別れ際に、今後もニキータごっこを継続しましょうと、さらなる密約の延長を申し出たのでありますが、さて、返事はどうであったか、老人の事ゆえ忘れてしまいました。(チャンチャン。)