ホームへ戻る

ゴールデンウィークにしたこと、その②-立科、日日是好日

五月の八ヶ岳

五月の八ヶ岳

三井の森

三井の森

民家の花桃の木

民家の花桃の木

白と赤の花の同居を咲き割れという。

白と赤の花の同居を咲き割れという。

 ゴールデンウィークは、毎年、白樺湖近くの長野県立科町を訪れ、山荘の小屋開きをする。去年は夏に行ったきりだったので、私の小さな、良寛の五合庵のような山荘は、無人のまま秋の紅葉を迎え、冬の大雪に耐え、4月になってようやく雪が解け、今主人を迎えることが出来たのである。軒の瓦が何枚か割れていた以外は大きな変化もなく、蜘蛛の巣を払い、風を通し、囲炉裏に薪をくべれば、直ぐに、またいつもの居心地、風情に戻ったのである。

五月初旬の山荘風景

五月初旬の山荘風景

囲炉裏に薪をくべる。

囲炉裏に薪をくべる。

茅葺

茅葺

 別荘は退屈であるし、経済的にも大いに無駄である、という人が少なくない。
 それは別荘に何かを求め、それを経済効率で計るからではないだろうか。購入費と維持費を宿泊日数で割れば、どんな高級旅館やホテルより高くつくことは小学生の算数でもわかることである。

 それでも世の中には沢山の別荘が存在するには、それぞれ、いろんな理由があるのだろうが、僕が思うのは、別荘には何も期待しない、予定しない、身も心も弛緩できるだけ弛緩する場であると思えば、その価値はあろうかと思うのである。

 ただ、だからと言って建物は何でもいいという訳にはいかないのが、本人のこだわりであり美意識のなせるところであろう。山荘風のログハウスであったり、英国風の煉瓦つくりの洋館風であったり、いかにも有名な建築家がデザインしたモダンな建築であったり、あるいは街中と変わらないツーバイフォ―の建売風であったり、持ち主の好み、センスで様々である。
 私の山荘は、建坪30坪あまりの2LDKの古民家で、リビングは囲炉裏がついた板張りであるのと、屋根が茅葺であるのがこだわりである。もっとも私が初めから移築し建てたものではなく、前のオーナーから引き継いだものである。前のオーナーは雑誌「芸術新潮」の初代編集長をした、その世界では有名な編集者で、数年前に亡くなった時には新聞で記事になったほどの人物である。
 従って、彼の縁でこの山荘には色々な芸術家が出入りしたようで、特に岡本太郎は毎夏長く逗留しており、彼の著作の中にもこの山荘が登場する。彼は、古墳時代の土偶に強い興味があり、この八ヶ岳周辺には古墳遺跡が多いのも、その理由の一つであったのだろう。

平出古墳群

平出古墳群

人柱

人柱

 私の代になってトイレは水洗にし、風呂もヒノキ風呂に変えたりしてアメニティの改善を図った。また庭のカラマツを伐採し白樺を植え、テラスを作りBBQが出来るようにし、縁側も月見台に変え、酒宴が持てるようにした。入り口には朝鮮の石造の人柱を置き門柱代わりにし、白樺の枝でお止めを作って遊んだりしてもみた。その時に植えた1本のこぶしの木が今年初めて花をつけた。

こぶしの一輪

こぶしの一輪

 こうして約30年が経ち、もう何も手を加えるところは無くなったが、すると茅葺の茅の寿命がきて、屋根をどうするかが目下の焦眉の課題になった。建築評論家で、建築家でもある藤森照信氏にもお出でいただき相談もしてきたが、いまだに結論がだせない優柔不断さは、ひとえに小生の年のせいであろうか。

 そんなある程度のヒストリー性を持つ小屋であるが、その小体ぶりといい、風情といい小生の好みに合っていて、とても居心地がいいのである。

雑木林の新緑の下でお弁当を広げる。

雑木林の新緑の下でお弁当を広げる。

タンポポ畑

タンポポ畑

ホテルハイジ

ホテルハイジ

ハイジの庭も新緑の兆し

ハイジの庭も新緑の兆し

蕎麦屋黒曜

蕎麦屋黒曜

ダッタンそば3種盛り

ダッタンそば3種盛り

 ここでは、何故か早寝、早起きになるので、朝起きて天気が良ければ、おにぎりを用意して、特別の反対が無ければ近場に出かける。八ヶ岳の麓の里山であったり、あるいは山稜の峠であったりするが、おにぎりのお弁当を食べれば近場の日帰りの湯に立寄り、夕方前には帰ってくる。そしてしばらく昼寝をし、夕飯を作る。野菜は地場のものを好んで使うが、肉は家の冷凍庫から持ってきて在庫整理をするのが常である。

中山道和田宿温泉のホール

中山道和田宿温泉のホール

ふれあいの湯露天風呂

ふれあいの湯露天風呂

 夜は本を読むくらいしかすることもなく、深々と夜は更け行き、早い眠りにつくのである。

 前向きなこと、生産的なことは一切しないし考えない。身も心も弛緩するだけ弛緩するのである。布団も敷っぱなしで過ごすのである。

 このように過ごすには、旅館やホテルではなく、やはり自分の家であるほうが都合が良いと思うのである。たったそれだけのことのために?と思うかもしれないが、その為だけでも数日の小屋暮らしの価値があると小生は考えるのである。

 今回の5泊6日の小屋暮らしで撮ったスナップを御覧いただき里山の自然の豊かさを感じていただければ、小生の気持ちもご理解いただけるような気もします。

車山湿原は未だ枯れたまま

車山湿原は未だ枯れたまま

コロボックルの定番。チーズケーキと子ヒートココア

コロボックルの定番。チーズケーキと子ヒートココア

芝桜

芝桜

女神湖の水芭蕉

女神湖の水芭蕉

女神湖のザゼンソウ

女神湖のザゼンソウ

 私達は、恥を忍んで言えば,行きの中央道の車中からして、すでに諍いが始まるのが常であったが、それでもその数は年々減少し、今回はとうとう一度も言い争いは無かった(と思う)。

 これは歴史的な出来事であったと密かに思うのだが、今のところ僕には、その腑に落ちる理由は分かっておりません。

 

ログイン