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リニューアルした扉温泉・明神館―ほんとうの「温泉の癒し」を知る

原村風景

原村風景

山荘の初秋の庭

山荘の初秋の庭

囲炉裏で信州産松茸を焼く

囲炉裏で信州産松茸を焼く

シルバーウイークは5泊5日で蓼科の山荘に行った。春のゴールデンウイーク以来の訪問であった。
夏休みがうまく取れず、今年は霧ヶ峰のニッコウキスゲのお花畑は見ずに終わったが、聞くところによると今年は、ここ数年では最高の咲き具合であったという。ほぼ毎年行っていたというのに、人生は、えてしてそんなものである。(大げさ過ぎか?)
 白樺湖が見えて、到着直前に「去年は何をしたっけ?」という話題になり、昨夏は友人と扉温泉・明神館に行ったことなどを思い出した。(CASA-AF,2014.8.6.)そこで、ひょっとしたらこの連休にキャンセルがあるかもしれないと思い立ち、早速電話してみると、運よく22日に空きがあり、それもお気に入りのベッドの部屋が一つ取れた。
 最近の温泉地の旅館やホテルは、大抵が夜9時過ぎになると留守電になっているが、明神館は夜10時近かったが、普通にフロントが応対してくれており、無事予約が取れたのである。

明神館ロビー

明神館ロビー

フレンチレストラン

フレンチレストラン

和食レストラン

和食レストラン

 今回が3回目の訪問であったが、新たにいくつかの発見があった。
 まずは、この春にリニューアルしてレストランのシステムが変わっていた。先には懐石料理、フランス料理、創作和食の3種類からの選択であり、前者2つの予約競争であったものが、フレンチと和食の2本立てになっており料理が平均化し予約の過当競争は無くなった。レストランの場所も、インテリアの趣もすっかり変わっていた。

夕食の椀

夕食の椀

明神館メニュー

明神館メニュー

朝食のサービス

朝食のサービス

 朝夕食ともに時間の予約制ではなく、夕食は6時から8時までの、朝食は8時から10時までの好きな時間に行けばよいというのも、客本位のサービスであると感じた。(一テーブル、一組であれば、それで済むはずである。)

ラウンジのフリーサービス

ラウンジのフリーサービス

ラウンジのライブラリー

ラウンジのライブラリー

 それとゲストラウンジの存在を初めて知った。パンフレットにもホームぺージにも、館内案内のどこにも載っていない秘密の部屋にラウンジはあった。今回、部屋に通されるとテーブルの上にキーカードと案内書きが置いてあり、客室係の仲居さんからも重ねて説明を受けた。
 3回目以上の訪問客(JTBや一休での予約はカウントされないそうである。)に限定した食前酒のサービスであるが、かなり広めのスペースがあてがわれており、ブッフェ形式でオードブルとシャンパン、ワインが好きに飲めるシステムであった。落ち着いたライブラリーも併設され、サービスは若女将が一人でしていたのも感じが良かった。

 外国のリゾートホテルではこのようなサービスは珍しくはないそうだが、小生は鹿児島、妙見温泉の雅叙苑で体験したのが初めてであった。もっとも、そこではすべての客が対象であり、食後酒のサービスもあった。東屋に囲炉裏が切って在り、それを囲んで、筒切りにした青竹で燗をしたお酒が振る舞われたことを思い出した。

ルレ・エ・シャトー

ルレ・エ・シャトー

明神館

明神館

ルレ・エ・シャトーという世界の一流の個人経営のホテルやレストランのオーナー500名くらいが加盟してるフランスのガイドブックがあるが、日本からはレストラン5軒と旅館6軒が登録されているに過ぎない。ミシュランの三ツ星レストランが、東京で12軒、京都7軒、大阪4軒、神戸2軒を載せているのと比べていかに倍率が高いか、想像がつくというものだ。
 最近は女性誌25anとも連携していて、関連記事を載せるので、ご存知の方も少なくはないと思うが、日本では明神館の他には旅館では、修善寺のあさば、箱根の強羅花壇、山代温泉のべにや無可有、神戸の北野ホテル、谷川温泉の仙寿庵別邸が載っており、レストランでは、オテルド・ミクニ、ラ・ベカス、レストラン-サンパウ、青柳、柏屋が名を連ねている。最近になって、先に述べた雅叙園やヒカリヤ-ニシなど4軒が新たに加わった。ヒカリヤ-ニシは明神館が松本で経営するフレンチレストランであるから、明神館の料理が悪かろうはずはないのである。

 宿のホスピタリティとは居心地の良さに尽きるが、居心地には主観が伴うものであるから、人それぞれによって異なるものであろうが、最低限の共通性はあると思う。
 例えば、清潔感とか、スタッフの応対のマナーの良さなどである。
 小生は決して高級志向ではなく、コストパフォーマンスのバランスを重視するが、それでも修善寺のあさば、那須の二期クラブのフアンであり、湯河原の海石榴や箱根の強羅花壇は苦手な方である。もちろん逆の方もおられようが。

クローゼット

クローゼット

 まずは気配りが建物、家具調度品からサニタリー、カトラリーのすべてに行き届いていることで、しかもそれが自分のセンスに合えば尚よいのである。
 客に対する気遣いも万事に行き届き、かつ押しつけがましくないことが大事である。もてなし側のルールとか美意識を強引に押し付けるのは、それがどんなにハイレベルなものであれ、興ざめになるものだ。
 それに大事なのは、客層である。お客様は神様であっても、オールマイティではないのだから、大声を出したり、傍若無人で無遠慮な振る舞いを見せたり、あるいは家族連れでも、騒ぐ子供に注意できないような客は、二回目は来れないように因果を含めて誘導すべきなのである。そうしておれば、おのずと客層も限定されてくる。

 旅館やレストランが忘れてはいけないことは、使い手、つまり客の方の評価のかなりの部分が、お店の醸し出す雰囲気であることをよく知ることである。お店というものは、店と客が一体となって出来ているということだ。建物や料理などのハードがどんなに良くてもモテナシの心、マナーなどソフトが駄目なら駄目なのである。
 上客とは決して富裕層を指すのではなく、常識と最小限の教養を持った品格のある人達のことだと思う。

 先日こんな体験をした。
 蓼科に向かう中央道のサービスエリアで食事をした時、大変な混雑で、空いたテーブルが見つからず、うろうろしていると、席を譲ってくれて相席のようになった親子連れがいたが、小学校2,3年生くらいの女の子と父親であったが、とても行儀よくオムライスを食べていて、話しあう親子の雰囲気もとても良いものであった。お蔭で私達の食事もサービスエリアとは思えない豊かな味わいになった。
 昨今は、我先にとガサツな家族が目立つばかりで、このような親子連れを見かけることはほとんどない。常識、教養とはこのような場面でよく出るものである。

 旅館のパブリックスペースも同じである。ロビーもお風呂もラウンジも客が雰囲気を作るのであって、高価なインテリアや家具が作るのでは決してないのである。

 レストランのグランメゾンも当初はアラカルトメニューに力を入れているが、少し有名になり、ウエディングを始めるようになると概してだめになる。第一、貸し切り状態を作れば、その一事だけでも一般客に迷惑をかけ、客を軽んじることになるから、ヨーロッパのレストランでは矜持として決してしないものであるのだが、わが国では貸し切りは普通に行われている。
 店側にしてみれば、画一料理が多人数分はけるとなれば、利益率からみて注文があるかどうか判らないようなアラカルトを維持するのがばかばかしく思うようになるから、益々ウエディング中心に経営するようになる。そうなると、結婚式の下見と結婚記念日のサービス料金のそれだけの若い客層が増え、店の雰囲気はすっかり変わり、必然的に常連や一般客は足が遠のくのである。

 旅館であれば、目立たないところは手を抜きがちになるのだが、一流とは、見えないところまで、決して手を抜かないものだ。
 確かに、一般客はそんなに頻回に行くわけではないので、お店にとっては、是に腹は変えられないというところだろうが、やせ我慢してでも矜持を保つのが本当の一流であろうというものだ。
 また客の方も、気に入ったレストランンなり旅館なりは、たとえしょっちゅう行かなくとも、常に気にかけており、もし客が減っていそうなら、無理をしてでも通ってやるのが贔屓の心意気というものであろう。

真空管アンプ

真空管アンプ

立湯

立湯

立湯

立湯

夜食

夜食

 明神館は、客にいかに癒してもらうかがテーマであるかのような気遣いが至るところに垣間見える。ベッドは欧米5つ星ホテレルが使用する米シーリー社のポスチャーぺディックのマットレスが使われているし、ベッドルームには真空管のアンプでヒーリング曲がBGMで流れるように設えられ、良眠を誘うハーブティも色々揃っている。ルームキーも当然のように2個あり、各自が自由に風呂に行ける仕組みになっている。健康には良くはないが、希望すれば気の利いた夜食も出る。
 外風呂は3か所あるが、特に「立ち湯」は山の緑が眼前に迫り、森林浴の気分も味わえる。
 駐車場は玄関から少し離れているが、行きは駐車場に止めても、すぐ気づいて迎えに来てくれるし、帰りは当然バレーサービスがあるが、ロビーで待つ間にもお茶のサービスがあるという具合である。

 本当に何の変哲もない、特に風光明媚でもない普通の山間に立つ温泉宿であるが、このような洗練されたサービスで、創業が1931年というから驚きに値する。
 都会からは少々遠くて不便だから、予約制限もないし、料金もコスパが非常に良い。

 そして何より、心身共に癒される。
 小生が今,最も常宿にしたい一軒である。

茹で栗

茹で栗

自家製焼き菓子

自家製焼き菓子

 

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