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ヌーベル和三盆―スカルのお菓子

高松市丸亀町商店街がお土産物プロジェクト委員会を立ち上げ、作ったのがこの和三盆のスカル干菓子です。

箱もスカルのデザイン

粒もスカルの形


私の前職は形成外科医で、中でも頭蓋顎顔面外科を専門としていたので、スカルのアイテムに目が無く、指輪、ネックレス、スカーフ、靴下、セータ―とスカルがデザインされていれば、つい買ってしまいます。そんな事情を知った慶応病院の形成外科の後輩がこのお菓子を見つけ送ってくれました。

口に入れると、すぐに溶けて、口中に上品な甘みが残る、雅な美味しいお菓子ですが、それがなぜスカルの形なのかよくわかりません。

高松丸亀といえば、讃岐うどんが思い浮かびますが、それが嫌で今度はスカルで町興しなのでしょうか。

デザインは高橋信雅、木型職人は市原吉博と書いてあります。確かにこの木型を作るのは結構大変かもです。?

所で、頭蓋顎顔面外科というのは、頭がい骨や、顔面の骨をバラバラに切断して組み立て直して、頭や顔の形を整える形成外科の一つ手術分野ですが、約50年前にフランスの天才形成外科医テシエが創始しました。?

私が医者になりたての頃の日本の形成外科医は、テシエの文献片手に、スゲーなあ、とただ感心するばかりでした。

手術もダイナミックで、結果もドラマチックに出ますが、手術そのものが大変で、(12時間くらいかかる手術は珍しくありませんでした。)形成外科医の志が高かった頃はともかく今や、日本はおろか世界でも、この分野を志す形成外科医はごくごく少数になってしまいました。

その希少な一人がスカルの菓子を送ってくれた慶応病院のS君なのです。

頭蓋顔面外科は、かつては手術が難しいが故に、形成外科医の中でも敬意と羨望の目で見られたものですが、今や若い形成外科医は我関せずで、美容方面ばかりに人気が集まる中で、彼は本当によく頑張っていると感心します。

最近は眼球が飛び出たのを、顔に手術瘢痕を残さないで治す手術が得意分野になり、これって、美容の究極ですよね、と美容外科では絶対にできない手術を保険でしかできない現状を嘆いています。10ミリ位までは眼球を後ろに下げる事が出来ます。

眼球が出過ぎていて、悩んでおられる方は慶応病院形成外科をお尋ねください。

 

頭蓋や顔面の骨自体のゆがみも、最近は骨延長という技術で低リスク、低侵襲で治せるようになりました。実例をお見せ出来れば一目瞭然で良いのですが、さすがにそうもいけませんので、イラストで手術の概要をご紹介してみます。。

 

全頭蓋再建術ーバンブーウエアー法

図1.全頭蓋再建法、頭の形を全部作り直す方法


人の頭骸骨は縫合というつなぎ目があり、そこで、骨を成長させることで、脳の成長につれて頭蓋も大きくなっていくことが出来ます。

しかし、生まれつきそのつなぎ目が閉じてしまっていて、頭蓋が大きくなることが出来ない病気があります(頭蓋縫合早期癒合症)。その子たちは、脳が窮屈になり知能の障害を起こしたり、頭の形が大きく変形してしまいます。そこで頭蓋を大きく拡大し、かつ正常な形に再建する手術があります。テシエは頭の前額部(おでこ)だけを前方に出す方法を発表して、それでも皆がビックリしたわけですが、その約10年後に、私達は頭蓋骨を全部をいったん取り出して、骨を分割して、理想の形に自由に拡大して作りなおす方法を考案しました。図1はその方法の概略です。この方法ならどんな変形にも対応でき拡大も自由です。

 

ルフォ―?+?顔面骨延長法(NAVID)

図2.ルフォ―?+?顔面骨延長法左赤線のように骨を切り、右図のように移動する


頭蓋ばかりでなく、顔面の骨の発育も悪く、大変強度に顔の変形をきたしてしまう生まれつきの病気もあります(頭蓋縫合早期癒合症候群)。多くは眼球が突出して反対咬合(受け口)になっています。顔の骨の真ん中を2つのブロックに切り離し、それぞれを前方に移動して顔の土台を作りなおします。少し前までは一気に移動して骨を移植して固定して直したのですが、現在では骨を徐々に移動する方法で、骨移植も固定もしなくてすむ方法に変わっています。図2は、NAVIDという私達の考案した延長方法です。これで、目の突出も咬合も良くなり、ほぼ正常の顔貌になります。

 

ルフォ―?+?顔面骨延長法(NAVID)

図3.ルフォ―?+?延長法、前額も眼窩も上顎も別々に移動する


顔面だけでなく前額部も後退していて、眼窩の上も前方に移動する必要がある時は、図3のように、頭蓋骨の一部も同時に延長して拡大します。

これらは頭蓋顎顔面外科の手術法の一例です。変形は千差万別であり、一つの症例に一つづつ手術法を考えていくというのが、形成外科の基本的なスタンスです。

 

精神科の病気に身体醜形障害という、身体のどこかに醜いところがあると、勝手に思い込んだり、あるいは僅かな問題を極端に誇大的に考え悩んで日常生活もままならなくなってしまう心の病気があります。

それらの人には形成手術は禁忌と言われているのですが、形成外科が扱うのは基本的に外観の病気であり、悩んで当然な理由があるわけですから、その原因を出来るだけ解消する事には大きな意味があるわけです。

引きこもりだった子供たちが、学校に通い始め、引っ込み思案だった少女が外来診察で、恋の悩みを語るようになるのに接するのは形成外科医の大きな喜びの一つでもあります。

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