我が家風というと偉そうだが、ちゃんとネタ本がある。昔、鎌倉書房という出版社があり、食関係の本、雑誌を出していた。
『四季の味』という森須滋郎さんという方が長年編集長をしていた季刊誌があり、亡くなられる前後に出版元が変わり、従って編集者も内容も変わってしまったが、かつては質の高い、数少ない、いわゆるグルメ雑誌であった。
使われる器もセンスが良く、一部は通販で買うことも出来た。
森須さんのおかげで「四季の味」に取り上げられ、世に出た料理人も少くないはずだ。事情は知らないが、静岡から横浜あたりの人が多く、静岡、西堀の西堀高市氏、熱海のラヌーヌの斉藤元志郎氏などが代表的か。
西堀は東京に出ず、静岡で店を閉めたが、斉藤氏は赤坂で旬香亭、グリル旬香亭、フリッツなど手広く展開し名をなした。
さて、その四季の味では、ある人物を取り上げ、自慢料理や、自慢のお店を紹介してもらうコーナーがあった。
その中であったと思うのだが、かなり昔のことなので間違っているかもしれないが、伊賀の土楽窯の福森雅武氏が出たことがあった。
食通で有名な陶芸家だが、自分の焼いた土鍋ですき焼きを紹介していたように思う。
その模倣が、実は我が家風すき焼きなのである。
浅い土鍋で(土楽鍋、すっぽんの亀甲鍋に似ている)、薄く出汁をはって、焼くでもない、煮るでもなく火を通して食べる方式である。
すき焼きで、鍋で肉を焼かないで、先に割り下を少し入れ肉を煎りるがごとく煮て食べる方式(関東式?)があるが、それに近いが、割り下が、醤油、味醂の濃口ではなく、一番だしに香り程度の薄口醤油で味付けした、いわば吸い物の出汁のようなモノを使うところがミソなのである。
汁が多すぎるとしゃぶしゃぶになってしまうが、ま、大雑把に言えば、すきしゃぶ、しゃぶすきというところか。
肉の脂が適度に落ちるので、肉がすんなりといくらでも食べられる。
この肉は、やはりサーロインがいい。
肉の厚さはすき焼きとしゃぶしゃぶの中間くらい、厚めのしゃぶしゃぶ肉がいいだろう。
つけあわせは、我が家ではしゃぶしゃぶと同じ要領で用意する。
ネギは太い白ネギの芯を取って2、3ミリの輪切りにして水にさらしてパリパリする。
あとは水菜とアスパラをマッチ棒の様な形に切りそろえる。
豆腐はそのままだが、葛切りは柔らかく戻し、糸こんにゃくの時は、から煎りにして水分を飛ばしておく。あれば松茸は欲しいが、東京ではもちろん外国産となる。
すべて揃ったら、「いただきます」と合唱して、贅沢できる幸運に感謝しつついただきます。
締めは、出汁をたっぷり足して、ラーメンを食べるのが我が家の長年の習慣です。
最近は鍋用ラーメン(丸ちゃん食品)なんていう便利なものがあり、重宝しています。(生麺だと、茹で加減が難しいし、滑りを取らないとどうしようもないが、これならそのまま入れれば良い。)
味付けは塩コショウのみが正解だと思います。
もちろん我が家でも、鉄のすき焼き鍋で、牛脂をたっぷりとかし、肉の両面を焼き、砂糖をふりかけ、味醂、醤油、酒で濃い目の味付けをし、生卵で食べる、親父直伝のやり方もしますよ。
最後にご飯を入れて犬?猫?飯にするのも嫌いではありません。