蓼科山の肩、大河原峠を下りたところにある里山、
春日には、知る人ぞ知る蕎麦屋職人館があります。
近くにゴルフ場がいくつもあり、またテレビで紹介された事もあってか
県外にも知れ渡り、そのためか、駐車場には県外ナンバーが多かったようです。
信州らしい白漆喰の民家で、入り口は障子の引き戸になっています。
中は板張りの部屋に大きな座卓と、和室にテーブル、椅子というしつらえ、囲炉裏の部屋もあるそうですが、今は使用していないとのことでした。
メニューは写真にあるとおりですが、
食材は、蕎麦をはじめ、すべて春日の里で採れたものを使って作られているそうです。
当日は一番お安いランチメニューを注文しました。
まず、突き出しに大豆の煮たものが小鉢で出ました。
上品なうす味で、豆の味が際立っていました。
続いて、村の豆豆腐。
大き目な豆腐を2種類の塩で頂きます。
一口食べて、すぐに、水分を絞った、あの佐賀の唐津豆腐を思い起こしましたが、それによく似た、いやそれ以上の味わいで、多分先に出たのと同じ豆で作ったと思わせる豆の風味が舌に残る秀逸な豆腐でした。
次は、“蕎麦のほかに何かが欲しい人の一皿”で、当日は地の採れたての野菜のサラダでした。キャベツ、芯の青いのと赤いのとの2種類の大根、青りんごのスライスが上品な和風ドレッシングで和えられ、菊の花弁が上に散らしてある、シャキシャキ、パリパリのサラダで、今までに体験したことのない感覚のご馳走サラダでした。
最後に10割手打ちそばです。
丁度、今は新そばとのこと。そば粉もこの里で採れたもの。
これまた蕎麦の香りが強いもちっと腰の強い個性的な田舎そばで、
私のベスト5に入れてもいいくらいの出来です。
つけ汁がもう少し濃い目ほうが個人的には良かったと思いましたが、
それは好みの話で。
周辺が温泉地とは言え、ほとんど無名に近い里山で、これだけの料理を出して来るとは、と不思議な感覚に襲われました。
どこでこのセンスを身に着けたのだろうか、と。
帰り際、靴を履いていると、どこからともなく主人が現れ何やら声をかけてきました。
尋ねると、夜の予約制のコースメニューは、客の要望によって考えるそうで、イノシシや山鳥も出たりするそうな。
使っている器の趣味の良さを褒めると、焼き物の話になり、この辺りには一時、100人近い陶工がいて窯があちこちにあったそうだが、残念ながら今は、案内できるようなところはないとの返事。
何かいわくありげな郷でした。
近くにはこんな美しい池もありました。
ご主人は駐車場まで見送ってくれ、別れ際に、魔除けになるといって、真っ赤に実った唐辛子の枝をくれました。
その時、漸く理解で来ました。
多分誰かと勘違いされているなあと。
この髯面のせいで、それなりの方と間違えて主人がお出ましになったに違いないと。
ま、とにかく丸で仲間のように、親しみを込めて大事に扱っていただき、当方は嬉しかったです。
次回はただの馬の骨とバレてもいいから、また来ます。
ありがとうございました。
帰り道に、農家がやっている農産物の店に寄ると、芯が緑ではないかと思わせる大根があったので、買って帰ってサラダに入れて食べてみましたが、なかなかいけましたよ。
芯の赤いのは紅芯大根とのことでしたので、これは多分、緑(青)芯大根とでもいうのかも知れません。
唐辛子は今、高崎の部屋の飾り棚に魔よけとして立派にぶら下がって
存在感を示しています。