家人が開業しているクリニックから徒歩1分という至近の場所にとてもいいお蕎麦屋さんがあった。
いつからあったのか知らないけど、某雑誌でレストランや料理店の主人がリレー式にお店を紹介していくという企画のなかで、下高井戸の有名な居酒屋“おふろ”の主人が紹介していたのを読んで、初めて行ったのが約半年前である。
蕎麦屋というよりナポリタンを出すような喫茶店風の店構えで、一抹の不安があったが、入ってみると、蕎麦、料理は僕の経験する範囲では上等の部類に入り、店の持つ空気も良くて一遍で気にいり、その後、月に1,2回のペースでは行くようになった。
家人のクリニックが終わるのを待って、家人にお供するのである。
蕎麦は毎日2種類の蕎麦を日替わりでとっかえひっかえで出す。いったい何種類の蕎麦を持っているか知らないが、ほとんど重複した記憶がない。
料理は、種類、味、器の設えともに、いわゆる私鉄沿線の商店街の蕎麦屋の域は超えており、献立の内容も、蕎麦屋の延長というより、日本料理、それもかなり上級のものであるが、場所柄からか、メニューは居酒屋風で、気取ったところはどこにもなく、わざわざ食材を安っぽくしているのが気になるくらいである。
例えば,コノワタなど、薄めて安くしないで、もっとどっしり出した方がいいように思う。しかし、料理は、いわゆる蕎麦屋のレパートリーをはるかに超えているし、どれも和食の従来の型に嵌まった料理ではなく、創意工夫がそこはかとなく見られるが、料理の基本は守られ、決して外していない。
主人の出自はまだ聞いていないので知らないが、いずれどこかできちんと修行したのではないかと推測している。
判っているのは、ご主人一家は家人の患者さんであることである。
お店のコンセプトは、いわゆる料理屋で、最後のご飯の代わりに蕎麦を出すスタイルのお店なのか、あるいは、蕎麦屋で、酒好きのためのアテの種類が多い、西麻布の利庵のような居酒屋風蕎麦屋のスタイルなのか判然としないが、ま、きちんとした料理も出せる蕎麦屋、白金の三合庵のカジュアル版と思ってもらえればいい。
三合庵は確か蕎麦は藪、料理は重よしの出である。
コース料理が3種類あるが、普段は一番お安いコースに、好きなものを何品か追加する食べ方をしている。
それでも、たまに客人をお連れするときは、松コースを奮発する。
日本酒の選択も良く、つい飲み過ぎてしまう。ぐい飲みはもっと小さくしましょうと、家人が常々言っている。
器は京焼風なシャープな感じというより、釉薬がぼけた厚手の温か味のある九谷風ものが多いのも僕の好みにあってよい。
平〇二郎,米〇加〇年など、有名な俳優を見かけたり、ご主人から、東京の三ツ星フレンチ御用達のパン屋、パンテコのオーナーの土産というバゲットをもらったりすることがあるので、世田谷近隣からいろんな人が来ているようであり、それがちょっと神秘的でもあり、この店の奥行きを深めている。
年末には「おせちの予約」の張り紙があったので、今年は年越しそばと一緒に頼んでみた。
いざ来てみると、かまぼこ、伊達巻のようにただ切るだけで済むようなものは入っておらず、多少なりとも手をかけた魚介が主で20種類位がアルミ箔に入っていた。
定番のものは家で用意し、重箱におさめたら、まあまあの形になった。さすがに京料理の高橋のお重のようにはいかないが、それでもコスパは非常にいいので、また来年も頼むつもりでいる。
Amecoyaという、お店の名前の由来を尋ねたら、店を引き継いだとき、板張りの壁が飴色をしていたので、飴色の小屋だということでアメコヤになったそうである。
何度か行った時に気が向いたものを写真に撮ったので、載せます。一部、食材を忘れてしまい,分からないものもあります。
お店の場所は、小田急線豪寺駅改札を出て、商店街を右に行くと、200m位で右側に郵便局があり、その対面、つまり左側にAmecoyaはあります。機会があればお試しあれ。