ホームへ戻る

話題の黒船ステーキハウス店に行ってみたよ-ウルフギャングとルース・クリス・ステーキハウス

 この2月に六本木にオープンしたウルフギャングステーキハウスに、ある日曜日に行ってみた。
 甲府の遊び人と、家人を交えての真面目な会食である。

 六本木の日曜日だというのに早い時間は取れず8時スタ―トになった。
 この店の情報源は週刊文春の「食味探検隊」、雑誌『ENGINE』と雑誌『GOETHE』のレストラン紹介コーナーであり、今までの経験からは、かなり精度は高いはずであった。
それらの点数は一様に高く、「行ってみるべし」、との評価であった。

 さて、料理は最もお勧めの定番料理を頼んだ。前菜はシーフードプラッターで、大きなクルマエビとロブスターがボイルされて乗っていた。メインはTボーンステーキ3人用(骨付きで2キロあり、肉だけでも900gはあったのではないか)と付け合せのマッシュドポテトとクリームスピナッチとライスハーフ(どんぶり大盛り一杯分はあった。)であった。

 シーフードプラッターは銀盆がアーチ状の台に乗っている、フランスでfruit de mer(牡蠣やアサリや小海老などが乗ったお盆)が供されるスタイルで出てきて大いに期待させたが、海老は茹で過ぎで固く、日頃柔らかい海老に慣れている日本人には大味過ぎた。ロブスターも同様である。ソースが市販のケチャップの様な味で、アメリカンフードの限界を感じさせた。

 さて、肝心の肉の方であるが、プライムビーフ(日本のA5ランク相当とのこと))の4週間熟成された赤身肉が、T字型に切断された骨と一緒にフィレ肉とサーロインがカッとされた状態で、900℃のオーブンで熱せられたお皿に乗って出てきた。
 確かに迫力は十分である。
 最初に、お店の御嬢さんがフィレから取り分けてくれ、まずは、こちらから食べろと言う意味なのだろうと理解した。
 焼き加減は、お奨めのミディアムレアで頼んだが、肉の周りのウエルダウンの部分が多く、全体ではミディアムの焼き加減であったので、熱いお皿で焼きが進行し、食べる中頃にはウエルダウンになっていた。

 肉はかみごたえはあったが、肉の旨味はあまり感じられなかった。

 お奨めの溶かしバターソースがしっつこくて、マスタードや塩コショウで食べるのだが、それでも物足りず、オリジナルのBBQソースも試してみるが、アメリカンな雑な味であった。 結局、醤油があるか、と尋ねると、山葵も付けるかと聞く。
 しかしもうその頃はお腹がいっぱいになってきていたし、肉が固くなり過ぎていた。
 「あるなら初めから言えばいいのに」、と温厚な?家人は密かに申しました。

 肉そのものは、アメリカのニューオリンズやアラバマで食べた、アンガス牛の赤身肉に塩コショウだけの味付けのステーキの旨さに感激した、あの感慨からは程遠いものであった。

 それにお店の雰囲気が、どうかと思う。
 厨房に近いテーブルにいたこともあろうが、肉の鉄板が運ばれるたびに「シズリング!(熱いのが通るという意味らしい)」と怒鳴るような大声が響く。そのたびに客はびっくりするのである。

 当日が日曜日であったせいもあろうが、誕生日の食事会が多かった。多分サービスと思われるバースデーケーキを運び、ギャルソンが集まって、ハッピーバースデーを合唱するのだが、これも声が大きすぎて興を欠く。

 一時間ほどの滞在であったが、4回もあっては端迷惑である。

 僕は別に人の誕生日を嫌うほどへそ曲がりではないが、お祝いを強要されるのも好きではない。
 2,30年前ならいざ知らず、今でもこのようなサービスがあるのに驚いた。それが証拠に、当人達以外の客で拍手する人は殆どいなかった。
 誕生会で歌が唄いたいなら、個室を使わせるくらいの配慮があってもいいのではないか。

 まあ、全体の印象としては、サービスはマニュアル通りで、それ以上のものは無く、カトラリーも貧弱で高級感はどこにもなく、基本的にファミレス程度の店であった。
 ただ、値段はいっぱしで(ワイン抜きで3人で4万強)であるから、リピートはどうだろうかと、他人事ながらちょっと心配になった。

 それと、アメリカ人はこの程度でセレブ御用達のお店になるのなら、アメリカ人の味覚音痴はDNAによるもので救いようがない(だからいつまでたっても洗練しない)と心底思ったものだ。

 但し、肉をガッツリ食べたいというオネーチャンを連れて行けば、肉の迫力に喜んでくれるかもと、電話帳から削除はしなかったことは白状しておきます。

一方霞関にあるルース・クルス・ステーキハウスであるが、こちらは2007年にオープンで、私達は、一年ほど前の訪問であった。

 店構えはシックで静けさが漂い、照明が暗いこともあって、「さあ肉を食らうぞ」という雰囲気ではない。
 サービスも洗練され大人のレストランである。

 肉は、やはりプライム牛の熟成肉で、お勧めはフィレかリブアイである。大きさは最低でも12オンス(370g)からとアメリカ的である。
 フィレをミディアムレアで、リブアイをレアで注文したが、リブアイはどう見ても焼けすぎであった。

 食べ始めると給仕長のような人が、焼き加減を聞きに来る。「ちょっと焼けすぎではないか」というと、恐縮して、すぐに焼き直してくるが、時間はあるかと尋ねるので、そこは日本人らしい惻隠の情?で「今日はこれでいい」と答えて、完食した。

 肉は、アメリカ牛の旨さが十分に出た、ほぼ満足できた味であり、穏やかな気持ちで勘定を頼むと、焼き過ぎた方の肉の御代は取らないという。
これはちょっとした感動(タダより安いものは無い?とさもしい根性で)であった。日本の店でも、中云そうはいかないものだ。

 チップを少し多めにはずみ、「また来てもいいな」と思いながら帰宅の途についたのであった。

 

 

ログイン