ホームへ戻る

男の食卓

 前回、この欄で‘女性との夢の食卓’を書いたら、「あいつは女としか飯は食わないのか」と言われたりして内外での評判が、はなはだ良ろしくなかったので、今回は‘男の食卓’について書こうと思う。
 一般にレストランでの食事は同性どうしで、とりわけ男同士でするものではなく、特にフレンチやイタリアンでは、それはお店に対してマナー違反というものである。
 お店の雰囲気を損なうからである。
 たとえ男が、小奇麗なセンスの良い出で立ちで振る舞おうと、男だけでテーブルを囲む姿は、良からぬ企みか取引き、贔屓目に見てもビジネスがらみであろうと思わせ、所詮はむさくるしいのである。特にダークスーツ(ビジネススーツ)で揃っていては最悪である。少なくともカップルで食事を楽しみながら、恋を語らっていたり、思い出作りに浸っている人達には迷惑であろう。

 ヨーロッパでは男が二人で食事をしていれば、通常はホモと解釈されるそうである。
しかし我が国には、古来、接待と言う文化があり、男同志でも恥ずかしくない場所、むしろその方が良いというところもあるようである。小生には縁がないが。そういうところには、(料亭とかお茶屋であろうか)なぜか都合よく女性がはべっているのである。

 一方、気の置けない男同士が似合う場所もある。小料理屋やおでん屋、焼き鳥屋、板前割烹、すし屋、天ぷら屋の類であるが、昨今はそこにも女類を引き入れたりするものだから、自然に女類だけでも出没するようになり男の聖域が侵されて来ているのである。
 カウンター席の他人と隣り合うような処で、女子と話せる話とは何なのだろうか?
 諸兄は女子と人生を語り合いますか?政治や哲学で盛り上がりたいと思われますか?

 人間は成人期に至れば、老若男女を問わず。常に自分をアッピールして生殖期であることの勤めを果たそうと愛を語るものであるとは、発達心理学の教えるところである。
 すし屋の早い時間だと、それらしい淑女を同伴して来ている紳士をよく見かけるが、小生には、やっかみ半分ではあるが、バカとしか思えないのである。
 普通の日本男児が、歯の浮くような口説き文句を、それも他人に聞こえるような所で言っても、相手にされると思いますか?言われた方が引くでしょう。それに、すべてが筒抜けのような所で、淑女が色っぽい振る舞いをするわけもないし、色よい返事をするわけにもいかんだろう。
 また、そのような淑女は大抵香水が強くて隣の客に迷惑をかけるものだが、くだんの紳士はその気遣いが出来ず、決まって得意そうにワインを飲んでいるから、その手の人種は直ぐに分かるのである。
 基本、すし屋は、何でも言えるような(香水は控えめにするように、とか)気の置けない仲になってから(女房とか)行くところなのだよ。
天ぷら屋も同様だ。
 すし屋、天ぷら屋はブラタモリならぬ、力の入らないブラメシが良いのだ。深謀遠慮や、よからぬ目的を持って行ったり、変に構えて緊張して行っても、つまらんだろう。
 食べることに専念して、間髪を入れず、手渡しの感覚で食べてこそ、親方に喜ばれる良い客になれるし、結果として人より旨いものにありつけるというものだよ。

今最も嘱望されている若手すし職人の一人―すし家の親方

今最も嘱望されている若手すし職人の一人―すし家の親方

雲丹も握る

雲丹も握る

麹町天真ーサイマキ海老

麹町天真ーサイマキ海老

琵琶湖の鮎

琵琶湖の鮎

 洋服に沁みつくような煙や匂いが湧き立つところこそ‘本当の男’の天国である。と思っていたが、最近はそこも女類に浸食されて来ているようだ。居酒屋、焼き鳥屋、焼き肉屋、ホルモン屋の類である。(今やホルモン好き女子をホルモンヌと言うらしい。)
 小生は肉よりホルモンの方が好きである。焼肉屋に行っても基本ホルモンしか食べない。だから男どうしなら焼肉屋には行かない、ホルモン屋に行く。
 やはり、ご同類が多いらしくて、旨いホルモン屋は年中混んでいるし、予約も取り難い。
 百獣の王、ライオンを見よ、彼等は飢饉でもない限り内臓しか食べない。女類の好む刺しの入ったロース、バラ(カルビ)、イチボなんぞ見向きもしないのである。

ホルモン俵屋

ホルモン俵屋

メニュー

メニュー

団扇使いが焼きのコツです

団扇使いが焼きのコツです

 豚カツは「孤独のグルメ」にふさわしい男のご飯である。個人的には、どこかに貧乏学生の御馳走風なイメージが残り、気張った男の一人飯の侘しさが漂ってしまい、女を口説く武器にはならないだろうと勝手に思い込んでいるが、それは単なる刷り込みだろうか。
 それでも時々は無性に食べたくなるのが豚カツである。
 神田小川町の「ポンチ軒」は、赤坂見附のプレデンシャルビル近くにあった「フレッツ」の名前替えした店である。最も料理の内容は、豚カツがメインとなり、町場にある普通のとんかつや風にはなっていたが、往年の旨さはそれなりに引き継いでいる。(ミシュランのビブグルマンでフォークをとっているよ)
 言うまでも無く赤坂にあった「旬香亭」の斎藤元志郎氏がオーナーの店だが、従業員は、オーナーの職人にありがちな非社会的な非常識さを引き継いでいてか、傍若無人な振る舞いが気になるし、おまけに、オーナーの目が無いことにかこつけてか、手抜きが目につく。油は悪くなっているし、揚げのキレも悪い。このまま放置すれば、かつてのフリッツとは全く別物になってしまうだろう。
 斎藤氏は、最近目白に旬香亭を再オープンしたらしいが、こちらはどうだろうか?そちらの旬香亭は、赤坂時代と同じ古賀シェフが仕切っていると聞くので、おそらく大丈夫であろうが、斎藤氏も東京進出で大成功したからと言って、静岡に引っ込んで、お大尽暮らしでは、いつしかしっぺ返しを食らうのではないかと気にかかる。
東京の客をなめたら、あかんぜよ。

ポンチ軒のマット

ポンチ軒のマット

エビフライ

エビフライ

 男同士でも無論、フレンチでもイタリアンでも行きますよ。その場合は、個室か、ほぼ貸切状態にして使う。理由は先に述べた通りである。
 形成外科医の頃の後輩達との同窓会もその一つで、最近は、神楽坂の「かみくら」の様にちょっと気取ったところに行ったりもする。まあ、古民家でフレンチと言う、良くあるパターンであったが、今やよほど頑張らないとリピートはむつかしいだろうね。

形成外科同窓会

形成外科同窓会

かみくらの前菜

かみくらの前菜

かみくら主菜

かみくら主菜

さて、ジャズバーは男店、女店のどちらであろうか?最近は、「ウナカンツォーネ」や「カエルたち」などシャンソニエにも出入りするが、ジャズバーはなぜか男同士が良いような気がする。多分くすんでばかりで色気のなかった学生時代を懐かしく思い出すからだろうか。小生は、DIG,DUG、PIT INが青春でしたからねえ。

麹町ジャズポット

麹町ジャズスポット

銀座かえるたち

銀座かえるたち

 

 

ログイン