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キノコ閑話―今年もキノコの季節は終わってしまった

家飯にしろ外食にしろ、キノコを食べないと秋は終わらない。
キノコ類は低カロリーで栄養、植物繊維も豊富で、香り、食感も良く、特に女性に人気の高い食物の優等生である。近年は大量栽培法の開発で価格も安くなったが、その分、季節感は無くなってしまった。椎茸、エノキ、シメジ、エリンギ、舞茸は年中スーパーマーケットに並び、今年のように野菜が高騰しても安定価格で主婦(夫)の強い味方になった。が、その分、味の方もそっけなく味気ないものになり、どれを食べても似たような代物になり果てた。

焼き椎茸(あさばの朝食で)

①焼き椎茸(あさばの朝食で)

王様椎茸のロースト(L`AS)

②王様椎茸のロースト(L`AS)



半世紀以上も前、小生が小学生だった頃の教科書には、わが国で初めて椎茸栽培を成功させた人の話が載っていた。確か、クヌギのような原木に鉈で割れ目を入れ、そこに胞子(菌)を付けた楔型の木片を打ち込む方法であったように思う。一人の山村のお百姓の熱心な研究心のお蔭で、大分の山村は豊かになったという、今で言う、地場産業創出の町興しの話であったから、おそらく社会科の教科書だったのかもしれない。
小生が、そんな話を良く覚えているのは、先生に「楔型とはどんな形か?」と質問され、答えられなかったためかもしれない。

現在では、日常食べるキノコはすべて人工栽培によるもので、それもおが屑を使った水耕栽培のようなもので太陽の光を全く浴びないで育つものだから異様に色白でビタミンDが期待できなさそうなものばかりである。
昔から香り松茸、味シメジといい、シメジは味が濃く珍重された。舞茸はもっと香りのある希少なキノコであった。なめこは大きさも不揃いで、ぬめりはもっと野性的で強烈であった。

小生の子どもの頃は、秋も深まって真っ青な秋晴れの日になると、授業を中止にして、裏山にキノコ採りに連れて行ってくれるような粋な教師が田舎にはいたものだ。
秋晴れの天気のいい日に、先生も授業なんかしてるのが嫌だったのだろうが、生徒も「さあ、今日は山に行くぞ」という言葉を固唾をのんで待っていたものだ。
落葉樹の葉が何重にも重なって落ちている林の中は、秋独特の湿気たカビのような菌類の匂いがして、顔を地面に押し付けるようにして斜面を仰いでみると、運がいいと松茸を見つけることが出来たし、切株にはなめこや舞茸が付いていた。木漏れ日の刺す林間はカサカサと足の音だけが響き、皆黙って真剣にキノコ探しをしたものだった。

松茸のフライ

③松茸のフライ

松茸のフライ(我が家風)

④松茸のフライ(我が家風)

松茸のすき焼き(我が家風)

⑤松茸のすき焼き(我が家風)

出汁で食べるすき焼き(我が家風)

⑥出汁で食べるすき焼き(我が家風)



現在でも、松茸だけは人工栽培に成功していなく、従って数桁違いに高価だが、早晩栽培に成功し、廉価になれば、独特の香りの強さがかえって料理の邪魔をして災いとなり、やがて敬遠されるようになるだろう。
エリンギも輸入品しかない頃は高価であり、その分美味いと思っていたが、国産で栽培されるようになってエノキ並みの価格になれば味も半分になってしまう。外国野菜のルッコラやズッキーニやパプリカも皆そうである。日本の農業の進取のアンテナの性能は決して悪くはないと思う。ポルチーニもやがてそうなるのであろうか?

ポルチーニ

⑦ポルチーニ

ポルチーニのインパデッラ(プリズマ)

⑧ポルチーニのインパデッラ(プリズマ)

舌平目のポワレポルチーニ添え(プロバンソー)

⑨舌平目のポワレポルチーニ添え(プロバンソー)

ポルチーニのピッツア(イル・ペンティート)

⑩ポルチーニのピッツア(イル・ペンティート)



食材は旬に先んじるとか、容易に手に入らないとか希少性が大事なのだ。
正月の数の子も、昔は悪質な仲買水産商社が買い占めて独占し、高止まりで価格調整をしたものだから、黄色いダイヤといわれるくらい高価であったが、その会社が政界疑獄絡みで摘発されると、放出され一気に安くなった。安くなると、もう数の子を珍重することもなくなり、現在では、昔は観たこともないような大きな腹のものを平気で買えるようになった。

しかしキャビアだけは相変わらず高い。今や出回っているものの殆どが外国産の養殖物であるが、チョウザメの養殖は難しく、育てるのに年単位の時間がかかるせいかもしれないが相変わらず高価である。一般に水産物の養殖物は天然ものに比べ味が落ちると言われ敬遠される。確かに鰤や鯛や車エビくらいなら、まだ小生でもその違いが分かるが、キャビアやトラ河豚となると、天然ものの記憶が定かではないから、養殖物でも感動するほど美味しく食べてしまう。

所詮味覚とは、記憶と相対するものであるし、記憶はいずれ消えていくものであるから、何であろうと食べた時に美味いと思えれば、それで良いのであって、他人が「味が分かるの、分からないの」と言うのは、とんだお節介というものだろう。そう言う本人も結局同じ穴のムジナに過ぎないのだし。

さて今年味わった貴重なキノコ体験を写真に記録して来ているので、このグルマンライフに記念として残しておこうと思う。また来年食べられるとも限らないし。

1)椎茸
焼くが一番。最近は巨大椎茸がトレンドのよう。
①②

2)松茸
今年はアジア産が不作で残念な年であった。(北朝鮮の核実験のせいか?)外国産の外れでもフライにして香りを閉じ込めて食べれば十分に美味い。
③④⑤⑥

3)ポルチーニ(仏名セップ茸) 
フレッシュポルチーニは独特の香りが強く、どんな料理でも旨いと思うが、素人には手に入らないので結局外で食べるしかないのが残念である。
⑦⑧⑨⑩

4)ジロール茸
日本の野生のシメジのようなモノか、茎が長くちょっと土臭い。

仔牛とフォアグラのパイ包みフレッシュジロール添え(プロバンソー)

仔牛とフォアグラのパイ包みフレッシュジロール添え(プロバンソー)

野生キノコ(ジロール、プルロット、花ビラ茸、カンドンチェッロ)の温前菜(プロバンソー)

野生キノコ(ジロール、プルロット、花ビラ茸、カンドンチェッロ)の温前菜(プロバンソー)

5)花びら茸
フランス産の見た目も味も上品なキノコ。

鮑と花ビラだけとパンチェッタ、鮑の肝ソース(プロバンソー)

鮑と花ビラだけとパンチェッタ、鮑の肝ソース(プロバンソー)

熟成牛肩肉と花びら茸のコンソメ煮(プロバンソー)

熟成牛肩肉と花びら茸のコンソメ煮(プロバンソー)

6)白トリュフ
黒トリュフは栽培出来るらしく、白との格差が広がったが、やはり香りは格段に違う。

アルバ産トリュフ(プリズマ)

アルバ産トリュフ(プリズマ)

巨大トリュフ(プリズマ)

巨大トリュフ(プリズマ)

白トリュフのタリオリーニ(プリズマ)

白トリュフのタリオリーニ(プリズマ)

キャラメル風味のクレスペッレと白トリュフ(プリズマ)

キャラメル風味のクレスペッレと白トリュフ(プリズマ)

7)大黒シメジ
穴場的なキノコ。その昔、「京味」の西氏は松茸より旨いよと言って焼いてくれたが、本当にそうかと思う程旨い。ポルチーニに近い食感。
最近は、デパ地下、時には近所のスーパーでも手に入るようになったので、見つけると家では炊き込みご飯や鍋物、すき焼きに使う。シメジと思うと高いが、松茸と思えば相当値打ち。近云ブレイクしそうな予感がする。

大黒シメジと銀杏の炊き込みご飯

大黒シメジと銀杏の炊き込みご飯

大黒シメジと銀杏の炊き込みご飯(我が家風)

大黒シメジと銀杏の炊き込みご飯(我が家風)

大黒シメジ(伊勢丹地下)

大黒シメジ(伊勢丹地下)

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