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キャリアより自分の心情で行こうと決めたロマンあふれる超一級のフレンチー駒形の「ナベノイズム」


グルメガイド―東京最高のレストラン2017

グルメガイド
東京最高のレストラン2017

ロケーション

ロケーション


かのタイユバンロビションで総料理長を務めた渡辺雄一郎氏が昨年の7月に浅草駒形の隅田川沿いにレストランを開いた。「ナベノイズムNabeno-Ism]という。
プロに近いグルメの間では既に最も高い評価を得ていたから、一度は行ってみたいと思っていたが、春先に機会がありランチに行ってみた。

彼は大坂あべの辻調理師専門学校から同行のフランス校に進学、フランスで研修後ポール・ボキューズ・トーキョーに勤務、1994年シャトーレストラン「タイユバンヴァン・ロブション」のオープンに関わり1996年にスーシェフ、2004年にエグゼクティブシェフに就任。2007年から20015年まで9年連続でミシュラン東京で三ツ星を獲得した。2015年ロブション退職し、2016年にナベノイズムを開業というキャリアである。
以上の輝かしいキャリアからは銀座、青山、麻布辺りでの開業が相応しいように思えるが、なぜか下町駒形の隅田川ベリを選んだ。
彼に直接聞いたところでは、それは幼少期の思い出がこの近辺に凝縮しているためだという。子供の頃に当時住んでいた川向うから母親と遊びに来たのが吾妻橋を渡ったこの辺りであったので、ここで店を構えたいと願ったというのである。
それは彼の郷愁というロマンティシズムでもあろうが。同時にフレンチにうるさい客を都心から外れたこの地まで引っ張ってみせるぞ、という自信というか、気概が見えるのである。

当日のメニュ

当日のメニュ

アンダープレートは渡辺家の家紋の石皿

アンダープレートは渡辺家の家紋の石皿

アミューズはトマトのガスパッチョなど

アミューズはトマトのガスパッチョなど

蕎麦がきと塩雲丹、昆布のジュレ

蕎麦がきと塩雲丹、昆布のジュレ

江戸伝統野菜とフランス伝統食材の融合の皿

江戸伝統野菜と
フランス伝統食材の融合の皿

ラングスティーヌのココット仕立て

ラングスティーヌのココット仕立て

牛フィレ肉のグリエ、トリュフのコンソメかけ

牛フィレ肉のグリエ、
トリュフのコンソメかけ

デザート、冷凍ミカンとホワイトチョコレートムース、ラム酒のソース

デザート、冷凍ミカンとホワイトチョコレートムース、ラム酒のソース

クリームブリュレとソルベ

クリームブリュレとソルベ

駒形イメージのプチガトー

駒形イメージのプチガトー


それにしても郷土愛に溢れた地産地消のメニューである。
「両国江戸蕎麦ほそ川」のそば粉、[奥井海生堂]の昆布を始め、江戸伝統野菜をことさらのように使うかと思えば、全国の一級の食材を渉猟して随所に使いこなしている。
しかし、器も盛り付けも最近のフレンチのようにアートのような完成度を狙うのではなく、どちらかといえば江戸料理のように武骨で野暮ったい風を装っている新しい形のフレンチである。

テラスからの眺望

テラスからの眺望

スカイツリーとアサヒビール本社ビル

スカイツリーとアサヒビール本社ビル


場所はまさしく隅田川ベリでテラスの目の前がアサヒビールの本社ビルと、スカイツリーが望める好立地である。夏にテラスで食べれば、京都の鴨川べりの川床料理を彷彿とさせるであろうが、違うのは仕出し弁当のような新鮮味のない京料理ではなく、野心的な一流のフランス料理なのである。
隅田川の花火の日は、テラスのテーブル予約はさぞや激しい獲得競争が展開されるのは想像に難くはないが、今年は一体予約開始から何分で完売であったか聞いてみたいものである。

そこでは常連の上客が忖度されるのだろうか。

個人的には忖度されてしかるべきものと思う。初めて来る客と、何度も来ている客が平等であるはずはない。政治とは違うのである。
選挙権だって、しばらく住んで与えられるのだから同じことだ。
そう思うから、小生はしばらく通って、来年の花火の日にはエントリーしてみようと思う。
今年は梅雨の合間の晴れた日を狙いたいところだが、どのような手筈にすれば、それがうまく成功するのか、迷うところではある。

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