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旅館花屋「素晴らしい建築,庭園と料理のギャップに驚く」

別所温泉の風情と秋の松茸を食べたくて来訪した。夏に一度殆ど行き当たりばったりで宿泊したことがあり,大理石のお風呂の大正浪漫のデザインが記憶にあり、今回はかなり前から計画を立てて来た.改めて素晴らしい建築である.庭の多くを占める池を四方に渡る回廊はデザイン的にも美しい。部屋の床の間の書院作りも,当時の和モダンなのか、障子の桟の組手も粋である。評判のお風呂はもともと混浴であったものが今は一つになっているので最初は躊躇うが,中のステンドグラスの配置などのデザイン性はなかなか類を見ない見事なものであるし,個室の露天風呂も、その意匠を組んだ源泉掛け流しであった.シガールームも設けられ,共用部分も私用部分も設えは5つ星であるが,温泉旅館の楽しみのもう一つは酒と食事であることに異論はあるまい。さてこれだけの建物に見合う料理はなかなか難しいところではあろうが、残念ながらあまりにもバランスを欠いていた.当日は松茸尽くしの特別料理を奮発して予約してあったのだが、一言で言えば修学旅行に毛が生えた程度のものであった.まず出汁の取り方から学び直すことをおすすめしたい.松茸は包丁で切るものではなく、割くものであることくらいは都会人でも心得ている。煮る、焼くを携帯コンロで自分自身にさせるスタイルは料理としておかしくはないか.焼き松茸は包丁で切ったものを弱火で炙れば、ただ乾燥するだけで,香りも歯応えもあったものではないし,土瓶蒸しも茶碗蒸しも,松茸の香りを生かしたいためか出汁が遠慮しすぎていて空疎であり,期待した松茸も地元産ではなく香りも弱い.松茸に合わせて出汁をとり味加減もするべきであろう。さしみは仕方ないにしても、特別追加の馬刺しも,居酒屋並のものであった.キリが無いが,板前が変わったのかもしれないが,味のレベルを保つのは主人の責任,力量であろう.建物は良いし,料金設定も安くは無いのだから、修禅寺のあさばをお手本とするのを強くおすすめしたい。最後に清掃の行き届いているところはあさば並であったことを述べておかねば,不公平というものだろう。

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