OMAKASEで予約して行ったが10席のカウンターに客は我々二人きり。なのに、到着時にお店の女性の「どなた様ですか?」に違和感があった.
親方は愛想が良く偉ぶったところは全く無い。店の若い料理人にも女性にもさん付けで呼んでいた。また、私の補聴器のマイクを自分の白衣の中にしまってくれた.おかげで今回は会話に苦労することもなかった。聞くところでは,以前はニューオータニのナダマンに15年ばかしいて,六本木ヒルズクラブを経て今年の4月からここのリニューアルオープンで料理長になってきたばかりと言う.ここは早くから「やま幸」の社長の名前「幸隆」を店名にして,今日のやま幸のブランディングに貢献しできた麻布十番の老舗である.オーナーは同じく十番のケヤキ坂近くにあったピザ屋SAVOYと同じらしい。ピザ屋は現在はこのビルの中で上にある。因みに「尾崎」は宮崎牛のファーマーの名前と言う。
料理はいずれも食材にこだわり丁寧な仕事がしてあるものばかりであった。
先付けは,マグロにキャビアを乗せた手巻き寿司.マグロにキャビアはやま幸直系の定番である.そばのミタテではこれが蕎麦粉のガレットになっており、イタリアンのフラグメントでは,そのまんまアミューズで出てきた.鮪とキャビアの相性は誠に良い.最近の十番のお決まり、なんにでも黒トリュフはもう卒業した方が良いだろう.あと願わくは,キャビアの質をもう少し高くしてはくれないだろうか.ミタテもそう願いたい。
蒸し物はハタと蛤の蕪蒸し.関西ぽい料理人の腕の見せ所である、うまい。
刺身はメイチ鯛の昆布〆、水蛸,バイ貝,延縄塩釜のマグロの中トロであったが,意外に平凡。
焼き物はエビス鯛幽庵焼きとうなぎの白焼に大根おろしが乗せられたもの。三河一色の鰻が身も厚くて良かった。
揚げ物は,当店の伝統にして名物の鮪トロカツ,いくらと銀杏と共に。私はトロカツは初めてだが,アイディアは良いがパン粉は細かくしても少しカリッとあげた方が良いように感じた.とにかくこれは逸品だろう。
肉料理は尾崎牛のリブロース漬け焼き。尾崎さんのものだと分からせたくば,肉は厚くして炭火焼きのステーキが良いと思う。
ご飯は夷芋と飛騨牛の炊き込みご飯.夷芋のほっこりネットリ感に質の良い薄切り牛肉の牛丼感がたまらない美味さ.土鍋が大きめなので、残りはおにぎりでお土産に。
デザートは旬のフルーツにマスカットのゼリーを砕いて一緒に。これは千疋屋より美味い。ゼリーにワインが入っているのであろうか高級フレンチで出されるようなレベルであった。
アルコールは,ドラフトビールをグラス1と勧められたヨーグルト風味の日本酒をグラス1、白ワインングラス1,〆て3杯の鉄則通り.ヨーグルト酒は単に飲み物であり,料理の友にはなりにくいだろうと感じた。
我々の食べ方が早いので1時間半あまりで終了してしまったが、その間は客は二人で、静かである事に全く文句はないが、さすがにこれではまずかろうな。
しばしば気になることだが,料理長とは別にオーナーがいる場合の両者の関係性が店の雰囲気を作ると言うことである。つまりオーナーのタイプによってお店の緊張感の種類が変わる。
オーナーが食べることが好きで,気に入った料理人に半ば道楽で店をやらせる場合と、単に一つのビジネスで料理人を雇って経営する場合に大別されよう。
前者は基本的に拘りには口や金は出しても売り上げには口は出さないが,後者はカネは渋いが売り上げには口を出すことが多い。前者で始まっても料理人と疎くなってしまい,別の料理人を雇っている場合もある.またオーナーがパトロンに成りきれず,採算を重要視する様になって齟齬が生じる場合もある。料理人は本来我儘なものであるから,オーナーによってはよほど割り切らないと続かないことが多い。
雇用関係というのは,何事でも難しいもので,立場が変われば,言い分も変わってしまう。従ってオーナーが別にいる料理長は,余分な苦労をすることになる。尾崎幸隆はどれに当てはまるかは知らないが、微妙な空気感が漂っていることには,ご両人とも注意された方が良いだろうな。料理は美味いのだから,客としては、このまま継続していくのを期待したい。







