以前の入り口であった関口司法事務所のガラス戸は,新しいシャッタードアに変わっていた。考えてみれば,以前気に入って数回訪ねたのは,もう何年も前になるのだろうか。一月ほど前に久しぶりに深夜来てみたときは,すでにシャッターになっており,新しいBARとだけ書かれた灯りと,ベルらしきものが無造作に作られていたので押してみたが,応答が無いので,ベルが間違いだと大変と思ってソソクサ退散した。今思えば,きっと営業していたのではないかと思う。それほど秘密基地みたいな隠れ家バーである。リニューアルした基地は2階に移動していたが,なんとも客を招くような階段ではない。初めての客は,あの階段を登る勇気は起きないのではないかと思う。それがマスターの狙いなのだろうが,ドアを開けると,様相は一変し,とてもスタイリッシュなバーとなっている。しかし,いかにも空間デザイナーがこれみよがしにデザインしたものとは少し違う。カウターは直線で1列,一番奥にはモニターがあり,サントリーウイスキーの歴代のコマーシャルが流れていた。マスターの心変わりはいかばかりと思うほど雰囲気は変わり,サービスの内容も変わっていた。花をさしたカクテルや,尾崎牛を始め拘りの料理も辞めてしまい,国産に拘ったウイスキー、ジン,日本酒などのアルコールをストレートに味わって欲しいというコンセプトらしい。レストランばりの料理は,残念ながらもう味わうことはできないが,水もお茶もこだわり抜いてた逸品揃いである。勧められたものを興味本位で飲んでみた。日本酒は作で、而今と並ぶ三重の酒、ジンはyumarrest industrial Gin ordindryという京都のクラフトジン,割ったトニックウォーターは札幌のKUMITONICWATER-PLAIN-とこだわりようであった。日頃ジンをあまり飲まないので評価は出来ないが、かすかにレモンの香りがしたが,それがmixologyに通じるのかと思ってみたりした。おつまみは,母上手作りという肉じゃがのお裾分けを頂いた。ウイスキーはサントリーのCRESTや懐かしいオールドがあった。
近くに法務局があるのが,そもそも司法事務所跡の由来らしい。ここで育ったというマスターと,麻布という地名や,狸穴町名が残った由来などローカルな話に花が咲いたが,狸穴坂の麓にありながら、狸も鼠も鼬の鳴き声はもちろん,物音一つしない静寂さは,麻布台ヒルズに程近い都会の奇跡のようであった。


