縁があってShinoisに行った。初めてだと迷う人もいるかもしれない立地で、タクシーがナビで行ってもグルグル回ってしまった。一つは一階にハッキリとした看板が出ていないこともある。ChinoisでなくShinoiSなのはシェフが篠原裕幸氏であるためらしい。彼は東京の名だたる名店で修行し、RED under35でグランプリを取ると,中国各地で中国料理の真髄を学び,独特の哲学を得て現在のお店を開いて七年目という。メニューはとても詳細に綴られていたが,持ち帰るのを忘れてしまったのでざっくりとした印象紀を書こうと思う。一皿は一つ一つの食材が料理として完成していて、それが集合して一つの料理になっている。ゲシュタルト心理学では、全体は単なる要素の合成ではなく、配置や関係によって総和以上の独自の性質を持つと考えるが,まさにこの思考によって成り立っている料理と言えると思う。八宝菜はその良い例で魚介と各種野菜に異なる調理を施し香りと彩りを多層的に組み立てる構成になっていて,見ては、それぞれが最も美しい状態で存在し,食べては、味いが八方に広がる。各食材の下拵えに何時間,何日もかけるが、代表的な料理が干あわびの煮込みである。干鮑を何日もかけて水で戻し,その戻し汁だけでo時間も煮込むと説明された。今風のものでは,フカヒレの春巻きにキャビアを載せて,すりおろしたチーズをかけた,前菜だろうか。肉料理も豚,鳥,牛は,こだわりの生産地ものを調理法を変えて一皿に合わせてあった。いずれもこの食材は何故ここに存在し,そのためにはどんな調理法が相応しいか,論理的な思考と技術が示されている。小生の如く、うまければいい、という程度の食べ道楽には深淵過ぎて、身に余るかなというのが正直なところであった。お値段も高めであるし,ここに通いつめる境地には小生はまだ道は遠そうだな。最後に,シェフは食事中には原則的に顔を出すことはないそうで、手慣れた二人の女性が無駄の無い所作で切り盛りしていた。出たがりのシェフの多い昨今ではこれも好感が持てた。帰り際に頭だけを下げて見送ってくれた。


