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心の部屋

「美容整心クリニック」がオープン。― 「美容整心精神医学」の船出です。

クリニック入口

クリニック入口

クリニック内観

クリニック内観

 

 

 

 

今年の春から場所を探しを始めて、紆余曲折の末に9月にようやく見つかり、11月1日からいよいよ「美容整心クリニック」を開院の運びとなりました。かねてより「美容整心精神医学」という新しい医療の概念を実践したいと思っていましたが、とうとう実現に向かってスタートを切ることが出来ました。

「外観・美容に関する悩みと心身の健康不安」を安心と安らぎのなかで治します。」

美容整心クリニック
院長中嶋英雄
〒102-0094千代田区紀尾井町3番地29、紀尾井ロイヤルハイツ203号
電話03-3263-2113

アプローチ

アプローチ

受付、待合室

受付、待合室

診察室

診察室

ここに至るまでに、丸で我が事のように、一方ならぬ御協力を頂いた畏友ジョージ氏、それに散々迷惑をかけ、これからも支援を願う家人に心より感謝いたします。
私は、世間的には、もう十分に引退する年ですから、今回の試みは半ば道楽のようなものですが、私、本人は新しい医療を始めるという気概は十分です。

美容整心クリニックでは、永年、形成外科の最先端医療に携わり、後に精神医学、心理学、分子生物学物、量子論、科学哲学などを学ぶ中で得た、「美容整心精神医学」という新しい概念の医療を行う場です。「外観・美容の問題で悩む人」、「生きることに躓いて生き辛く、生活に支障を来たしている人」、「リストカットを繰り返し悩んでいるような人」達を、新しいアプローチで、クライアントと悩みを共有しながら、脱出口を探して行きます。当クリニックでは、他では感じられない安心と安らぎの場を提供いたします。

美容整心クリニックの診療は、1回に1時間をかける自費診療が基本ですが、うつ病、不眠症など精神症の診断がつけば、保険診療による通常の精神科診療も行っていきます。

整心精神医学、美容整心精神医学については、この『こころの部屋』でこれまでの経緯については書いてきましたので、詳しくはブログの記事をお読みくださると嬉しいのですが、クリニックの理念として、簡単に再度書かせていただきます。

 

クリニックの理念
 私自身が、子供の頃から軽い外観障害に悩み、狐独で孤立した生活を送り、人生に何度となく挫折し躓き、絶望を繰り返しながら到達したのが自律統合性機能Autonomous Integrity Function:AIFの概念です。

そこでは「絶望すること」の無意味さを教えてくれます。
それは、人の存在(精神と身体)は、「心」「神経系」「内分泌系」「免疫系」の四つが非線形の複雑系のシステムで関連し合いながらバランスをとり、「物質波」と「精神波」で、「霊性」、「AIF」を通して、生命、物質、社会、自然、宇宙など森羅万象と共振し合うことで一体化して統合性を維持し、機能的に存在するという理念です。(図1)

図ー1AIF概念図

図ー1AIF概念図

この考えを基本として、人の心身の健康を捉え、アプローチすることで身体のホメオスターシス(恒常性)、精神のレジリアンス(抗病性)を高め、「単に病気ではないという以上に積極的に心身の健康について考え、前向きで洗練された生き方を考えるスーパーヘルス」の獲得を目指します。

自律統合性機能とは?
 現代の最先端科学は生命、精神、物質の森羅万象が偶然の結果でしかないことを教えていますが、しかし、原子核と電子の構造決定の巧みさや、フィナボッチ数列、黄金比、フラクタル現象などの神の技としか思えない自然のデザイン性や、バイオミミクリー(生物模倣)が教える超越的な自然現象の合理経済性などを見ると、「摂理」とでも言うべき何か超越的な力の存在、による差配を感じざるを得ないものです。

一方で、私は、真・善・美や自尊心、良心、憐みの気持ちなど、精神には自我のシステムを超越したメタシステムとしての領域(霊性spirituality)があると考えるようになり、また、前記したように有機物から無機物まで、あらゆる存在、万物、万象の世界(精神、生命、身体、社会、自然、宇宙)にはその営みの規範となり、調整を図る規律、根元的原理(摂理)があると考えるようになりました。
その霊性と根源的原理は連続して、個の内的世界から宇宙全体の中心軸をなしており、私はそれを自律統合性Autonomous Integrity:AIと名付け,その機能的役割を自律統合性機能Auotnomous  Integrity  Function:AIFとしました。

タイで買ったブッダ像

タイで買ったブッダ像

ローソクはLED

ローソクはLED

*精神波とは?
 私は、量子論、脳科学、分子生物学、心理学、科学哲学等を勉強する中で精神にも波動性があるとの見解に至り、量子論でド・ブロイの言う「物質波」(電子に限らず、すべての物質の正体は波である。)に対比して「精神波」の概念を創発し、物質も精神も、すべてのものは波動である(波動性を持つ)という考えを持つようになりました。また、物質波の中で身体の波動を身体波と名付けました。

*整心精神医学とは?
 整心精神医学は、精神的な病気には至っていないが、生きることや、自分自身に悩んで、心のバランスを失ったり、躓いたりして、生活に支障をきたしている人に対して、「心の安定性と向上性をはかる精神医学」です。

これは精神波の波動が乱れ、AIFを通して身体波との共振が失われバランスを失った状態と考えます。

*美容精神医学とは?
 美容精神医学は、「美しさ」を求める悩みに対して、身体面からアプローチするものが形成外科、美容外科、美容皮膚科であるのに対して、美いさを求める悩みに対して、心からアプローチする精神医学のことを言います。

また、病気ではないという以上に積極的に心身の健康について考え、前向きな、洗練された生き方を考えるスーパーヘルスの概念の実現を目指し、心の美容を行います。

*美容整心精神医学とは?
 外観、美容に関して悩み、つまづいて日常生活に支障をきたしている人達に対して、整心精神医学の考えをベースにおいて、外観・美容の悩みを解決して、生きる意義、価値を見つけ、心の安定性と向上性の回復をはかるものです。

美容整心クリニックは「美容精神科」を標榜する、おそらく日本で唯一のクリニックです。この新しい医療の試みをクライアントの皆さんと共に一歩一歩前進し、徐々に形を成して行きたいと考えています。皆様のご支援を心よりお願い申し上げます。

ホームページ*はhttp://biyouseishin.com/
*11月 6日オープン予定

場所は、別紙案内のとおりですが、建物の一階には、畏友ジョージ氏の「美容室Yes,GEORGE」があります。

エントランス

エントランス

クリニック地図

クリニック地図

 

 

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美容整心精神医学Cosmetic Orthopsychiatry:COPの臨床-美容整心(コスメチックオルソー)メンタルクリニックの概念とシミュレーション

前記した美容整心精神医学の概念を実践するために、美容整心(コスメチックオルソー)メンタルクリニックを仮想し、何をどう行うかを私なりに考えると、以下に述べるようなものになります。

対象となる人は
*「外観、美容の悩み」を持つ人
 悩みが、了解可能な正常な悩みであるのか、あるいは身体醜形障害、強迫性障害、不安障害、気分障害、パーソナリティ障害等による通常の理解を越えるものであるかを診断し、その境界領域であれば、美容整心精神医学的なアプローチでサポートを行い、精神障害の範疇に入れば精神医学的な治療を行います。

また、「外観の障害及び悩み」の実際的、具体的な対応としては、形成外科的、あるいは美容外科、美容皮膚科的な治療の適応について相談にのり、精神医学と形成美容外科の両者の立場から的確な治療方針を提案します。
<形成外科患者の術前術後のメンタルケア>
程度にかかわらず、形成外科患者は外観の障害と身体的自己喪失という精神的なストレスを必ず持ちますから、患者の社会生活を精神的に支えることは、形成外科的治療を円滑にし、かつ、手術治療の効果も高め、患者の社会復帰をスムースにします。

また、形成外科医としての立場から、形成外科的治療のセカンドオピニオンの相談にも乗ります。
美容外科手術(美容皮膚科的施術)に行く前、術後の悩みの相談
①  手術(施術)希望の判断が、冷静正常な精神状態でおこなわれているか、背後に隠れた精神のアンバランスや偏りによるもの(精神波の失調状態))ではないか、あるいは、病的な思考による判断ではないかの診断をします。
 当事者のみならず、家族、周辺の人達の相談にも応じます。
②  希望する手術(施術)が医学的に適応があるかを、(当事者間ではない)中立的な立場で形成外科、美容外科、精神科の専門的な意見をセコンドオピニオンとして提示します。
③大学病院、基幹病院、個人クリニックにかかわらず、希望に沿った最適な形成外科医、美容外科医、美容皮膚科医を紹介します。
④  術後の悩みの相談にも乗り、解決の方策を提案します。
*「リストカットなど自傷行為」を繰り返す人
 自傷行為のキッカケとなる心理的要因を判断し、背景に精神医学的治療の必要な精神障害の有無を診断します。

 境界領域なら、援助者としての姿勢を揺るがせずに、整心精神医学的なサポート、治療を行います。
 入院治療などの必要に応じて、精神科専門病院、大学病院精神科などを紹介します。
 また形成外科医の立場から、自傷の瘢痕の形成外科的治療の相談にも応じます。

*「生きがい、やる気の喪失」など実存的な悩みで生活に支障のある人
 心理的要因が、霊性領域の悩みにあるのか、うつなど気分障害、パーソナリティ障害あるいは適応障害などの精神症によるものかを診断し、境界領域なら整心精神医学的なサポート、治療を行います。精神症であるならば、精神科的治療を行います。

整心精神医学の治療法
 整心美容精神医学は新しい概念の医学分野ですから、前述したような理論を踏まえ、これからクライアントと手を携えて、より有効な方法を探究し、樹立してゆくのが基本的なスタンスとなります。

 整心精神医学は、原則として精神障害ではない、境界領域の人を対象とするので、精神医学的な治療は基本的には適応されません。
 自律統合性機能の機能不全による精神波、身体波のリズム、共振の失調を原因と捉える観点から、自律統合性機能AIFの強化を図り、物質波、精神波のリズム振動の回復を図るのが治療の根本理念になります。
 AIFの失調に最も直接的に大きくかかわる免疫力の回復強化が治療の基本で中心となり、それによってレジリアンス(精神の打たれ強さ)の強化を図って行きます。
 人の健康は、心身一体的holisticな心身相関であるという認識からも免疫力は、心の免疫力、身体の免疫力の双方を強める必要があると考えています。
 免疫力は、神経系、内分泌系、免疫系が非線型的に相互に影響しあって維持されますが、心の動き(感情の変化)も免疫(特ににナチュラルキラー細胞)に大きな影響を与えるとされます。
 臨床心理学的な手法で、心が安定した向上性のある状態(整心)、ポジティブ思考になるように持って行き心の免疫力を高め、生物学的な手法で身体的免疫力を高めて相乗的にAIF強化をはかるようにします。
まずは以下のような治療法を行います。
1)   生活療法
 なるべくストレスを感じない生き方、楽しく生きる、ポジティブな考え方をするという生活の在り方を目指すのが生活療法の原則となります。

 *生活リズムの回復
  日内リズムの乱れは体内時計を狂わし、精神波を乱し、AIFの機能を弱めます。事実、日内リズムの変調が免疫力を低下させるとしたエビデンスを言う論文(ナチュラルキラー細胞にも日内リズムがあり不規則な生活はナチュラルキラー細胞活性が低下する。)もある。従って、昼夜逆転のような生活を正し、免疫力を高めることを基本として捉えます。

 *「ルティーンの習慣」を身に着けることで生活リズムの習得を獲得するようにします。何をすべきか迷い、悩むことから解放され、継続できればある種の達成感から自信が生まれてくると期待します。
 (プロ野球選手のイチローの厳格にルティーン化された日常生活が、彼の業績の基礎となっていることは有名です。)
*脳のリセット
 持続するストレスは脳から視床下部へ伝わり、自律神経系,視床下部・副腎皮質系を介して免疫力を下げる(言い換えればAIFを機能不全にする)ので、神経系、内分泌系、免疫系の調和の乱れ(すなわちAIF機能不全による精神波、身体波のリズムの失調)をリセットします。ストレスの刺激をいったん遮断して、AIFを回復させ、免疫力を高め、狂った生活リズム、精神波のリズム失調をリセットするようにします。3者の統合機能が前頭葉にあるとされるので、ストレス刺激を遮断する、脳をリセットする有効な方法を見つけていきます。

 脳をリセットする方法としては、「笑う」、泣くなど感情の放出、運動や趣味の没頭などが言われていますが、クライアントと一緒に、本人に合った方法を根気よく見つけスイッチが入るようにしていきます。
 種々の芸術療法も考慮します。
*サイモントン療法
 ネガティブ思考の精神的ストレスは免疫を著しく弱めるので、「良いイメージを想起するサイモントン療法」を取り入れ、楽観的なポジティブ思考のライフスタイルを目指すようにします。

免疫学的精神療法、カウンセリング
 精神神経免疫学を念頭において、ツゥーパーソンサイコロジーの理念に則って森田療法、認知療法を基礎に置いた精神療法、カウンセリングを行っていきます。

 外から個の心理を見るというフロイト以来の臨床心理学ではなく、個と治療者が一体となった、相互が関係性の中で存在するという、コフート、ストロロウの量子論的(重ね合わせ、多世界的解釈)な考えに同調するからです。

食事療法
 免疫力を強化することを基本的な考えとして、分子整合栄養医学(モレキュラーオルソー栄養学)に基づいた食事療法を指導していきます。

 分子整合栄養医学とは、ノーベル化学賞のライナス・ポーリングが提唱した、身体(脳)を分子のレベルで考えて栄養状態を調べ、不足している栄養素を見極め、それを補うことで精神障害を治療しようとするものです。

 また、腸内細菌叢の減少が、免疫力を弱め、アレルギー、自己免疫疾患やうつ病、心の不調を増加させたとするという臨床報告に基づいて、腸内細菌叢善玉菌を増やすような食事指導も行います。

サプリメント
 免疫を強化する有効なサプリメントがあれば、クライアント本人の有効性を確認の上使用して行きます。

)芸術療法として「化粧療法」、「生け花療法」
 現在の芸術療法として代表的なものでは河合隼雄の「箱庭療法」や、音楽療法などがありますが、私は形成外科医としての経歴から「化粧療法」を行いたいと考えています。現在、化粧美容業界でも化粧療法と称し、化粧で障害者や高齢者の意欲を高め、生活の質向上が図れるとする運動があるが、ここで言う化粧療法とは、化粧の状態でクライアントの心理背景を読み取り、それを本人の気づきに導き、(あるいはただ化粧をする行為によって、)正常化への道筋をつけようとするものです。あるいは化粧行為の中で、脳のりセットをはかることで、免疫力を高め、心の整心に導こうとするものです。

 また、花を生けることで、自然の美や安らぎに触れ、作る創造性の刺  激が脳のリセットのスイッチとなるよう指導する生け花療法も考慮しています。

薬物療法
 原則として薬物は使わないこととし、応急的に必要な場合は、精神薬理学を基礎に、効果が十分期待できる場合に限って、必要最小限の薬物療法も併せて行う事があります。

 現時点では、以上のような考えに基づいて、美容整心精神医学の実践をはかって行こうと考えています。ご批判、ご助言などご意見を頂戴出来れば有難く思います。

 

 

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美容整心精神医学Cosmetic Orthopsychiatry:COPの概念

 先に「整心精神医学Orthopsychiatry」の概念を示したが、そのなかで、対象領域を外観の障害、美容の悩みに特化して「精神科学」と「形成・美容外科学」の両者が連携してアプローチする医学を「美容整心精神医学Cosmetic Orthopsychiatry」として提案した。
その中で、外観の障害、あるいは外観の美の拘りのために社会機能が低下、障害されている人を対象とするものとしたが、学問的には、もう少し広義にとらえて、文字通り、外観、美容が整心(心の安定性、向上性)に及ぼす影響、あるいは整心が外観、美容に及ぼす影響を研究する新しい学問分野とする。

 外観の障害の心理は、精神分析的に考察すると、いわゆる「対象喪失」の概念で考えると理解しやすく、また、「外観や美へのこだわり」はリビドー(性的な欲望、性本能)あるいは自己愛に端を発すると理解すると、形成外科、美容医療における患者心理を理解しやすいと思う。

本来普通にあるべき外観の状態が生来的に得られていないという場合(先天性変形)や、
外傷や病気により外観に障害を残した場合(後天性変形)、
あるいは加齢によって若い時にあった美しい容貌を失っていくというような場合(老人性変形)の喪失体験は、「対象喪失」の中の「身体的自己の喪失」に相当するだろう。

 対象喪失体験は、失った対象に対する思慕の情、悔やみ、恨み、自責、仇討の心理を始め、愛憎のアンビバレンツを再体験する悲哀の心理過程(フロイトの言う「悲哀の仕事」)を経て初めて自我は新しい自由を見つけ、心の平安を獲得して行く。

 外観障害は上記のそれぞれの場合で成立過程も異なるから、悲哀の心理過程も異なるが、いずれにしろ美容整心精神医学は、良き伴侶となって悲哀の仕事にかかわり、そのプロセスが滞りなく完結し、心の平安を得て社会復帰が出来るよう手助けをするのを目的とする。

先天的な外観障害では、思春期、青年期になって、自我意識が目覚めるにつれてハンディキャップのある自分に気付き、それらを克服して社会に適応しなければならない人生が始まる。劣等感コンプレックスとその補償の自我心理機制が生じ、また、喪失の悲しみ、恨み,他者を責める気持ちなど対象喪失の悲哀の仕事とのかかわり合いの中で、その人の人間的成長が決まってくる。
この場合は、対象喪失を成長の過程で徐々に認識しているので、急性的な情緒危機はもたらさないが、喪失していない,健常な外観の体験を持たないので、理想化した喪失対象を描きやすく、形成外科手術に満足しにくい心理傾向がある。
また「恨みと報復」の心理を背景に、相手不詳の報復の原理に支配されており、悲哀の仕事の中で、大きな援助者として期待された形成外科医は、手術の結果で満足させられないと、失望から報復の対象にさせられる場合が少なくない。

外傷や病気による後天的な外観の喪失は、多くは自我意識の成長後に突然生じることが多いので、絶望的な急性情緒危機として「悲嘆grief」を経験する。
時間を経て悲哀の仕事に入るが、悲哀の心理過程は乳児のように「抗議と不安」「絶望と悲嘆」「離脱」の原初的な経過を取り、その苦痛は大きい。
しかし、苦痛に対する躁的防衛で、勉学や仕事に集中して社会的に成功し、自我の昇華を果たすこともある。(これは先天性の場合も同様である。)
対象喪失以前の状態を知っている為、喪失の理想化は少なく、形成外科手術の結果を受け入れやすい傾向がある。

 加齢による対象(若さ、美貌)喪失では、まず、失うのではないかという喪失予期の時期があり、やがて失っても、対象への執着が続き、物的現実性と心的現実性が乖離し、心の中では喪失を受け入れないプロセスが続く。次いで現実を受け入れる「対象を失った部分given up-part」と、即には現実を受け入れられない「対象を失っていく部分giving up-part」の二つの心理が交錯する状態になるが、やがて「断念と受容」の心境に達し、悲哀の仕事は完結される
 しかしこの悲哀の仕事は、対象となる「美への執着」が自己愛レベルではなくリビドー(性的な欲望,性本能)の要素を持つ人もいて、そのような場合は、関心の方向転換が難しく、中断しやすい。
 従って悲哀の仕事が頓挫して、神経症的、抑うつ的な精神状態として問題を残してしまうことが少なくない。このプロセスでは美容医療は有効な手段となりうるが、両刃の剣であることの認識は重要であり、美容整心精神医学との連携が望ましい。

 形成、美容医療を希望する患者の心理は、フロイトの「対象喪失と悲哀の仕事」の中で理解しやすいし、患者の治療法の決定に当たっては、患者が「リビド-型」か「自己愛型」かを見極めていけば、大きく誤ることはないだろう。
 従って、形成、美容医療にとって精神医学との連携は有益であり、そこに美容整心精神医学の成り立つ基盤があるものと考えている。

 心身の健康さは美しさの基盤であることに誰も異論のないところであろう。
恋をしている女性は輝いて美しいし、ストレスを抱えて抑うつ的な人は美しさを損なう。
美しさを単に生物学的な視点から見るのではなく、心理的な側面から見るのも意味があると考える。それはよく言われる観念論ではなく、美しさの認識(自覚)は、心理的要素が強く、逆に言えば心理的サポートは外観にかかわる形成、美容医療の治療効果を上げる意味でも有用と考えるからである。

美容整心精神医学は、形成、美容医療の持つポジティブな要素を、どのように生かし精神的、社会的な生活に役立てるかを、精神分析的、精神免疫学的、心理社会学的に研究するものでもある。

 さらに美容整心精神医学の「美容」の意味するところは、外観美容の他に、現在のこころの健康状態をさらに高め、向上的で洗練された、幸福感の強いライフスタイルの獲得を目指す意味合いも含んでいる。(super healthy and beautiful life )

従って美容整心精神医学の定義としては、
『外観、美容が整心(心の安定、向上性)に及ぼす影響、整心が外観、美容に及ぼす影響を精神分析学的、精神神経免疫学的、心理社会学的に研究することで、美容医療の医学的に正しい運用を促進し、心理面から美容医療の有効性を高め、かつ現在のこころの健康状態をさらに高め、向上的で洗練された、幸福感の強いライフスタイルの獲得を目指す。
 臨床的には、「外観、特にその美へのこだわり」で社会機能を損ねている(うまく社会生活が送れない)人や霊性領域(生きる意味、価値などの生の根源に関わる、精神の上部構造)の不調和によって『生活に躓いている』人に対して、精神医学と形成美容医学が連携して、精神的、霊的に健康な社会生活への復帰を目指す医学。』となろう。

 外観、つまり顔、ボディイメージに悩む精神障害は身体醜形障害、強迫性障害、不安障害、抑うつ性障害、双極性障害、統合失調症スぺクトラム、パーソナリティ障害等多岐にわたるが、COPでは明白に精神障害に分類されるものは基本的には含まず、かといって精神、心が全くの正常、健康とは言えない境界領域(生活に何らかの障害が生じている)を扱う。
 精神波のリズム振動が、正調ではないが、不可逆的なほど、大きくは失調していない状態を想定する。

 

 

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「整心精神医学Orthopsychiatry」の概念

 量子論は、物質的世界は決定論的な因果律は成立しないことを示したが、分子生物学、脳科学によっても人間の生物学的な根源的なところでは、常に偶然性に依って決定されるということが明らかになってきた。
  つまり、現代の科学は生命、精神、物質からなる全宇宙が偶然の結果でしかないことを教えるが、ミクロからマクロまでの自然現象、生命現象、精神現象には、何か超越的な存在の差配としか思えない現象が多い。

 我々は、科学が教える曖昧性、不確かな偶然性の中にも、個の内的世界から宇宙全体の中心軸となり、生命、精神、社会、自然、宇宙の調和を図る超越的な、規範となる存在を想定し、自律統合性Autonomous Integrityの概念を創案した。そして、それは自律統合性機能Autonomous Integrity Function:AIF によって作用するとした。

 また、量子論や脳科学、科学哲学から精神医学、心理学,生物心理学、精神生物学にわたる考察から、あらゆる物質が「物質波material wave]を持つように、精神にも波動性があり「精神波psychic wave」の存在を想定するのが妥当であると考えるに至った。

 この二つの新しい概念から、人の健康を次のように説明する。

 心身の健康状態とは、身体波(物質波)と精神波のリズム振動が正調であり、共振していることを意味し、そのリズム振動を指揮、統合するのが、(ヒトの内的世界から、身体をはじめ宇宙万物の調和をはかる)自律統合性機能AIFであり、AIFが機能不全になると、身体波、精神波のリズム振動が失調し、健康を損ない、やがては病的状態になると理解する.

 

AIFは、「神経系」、「内分泌系」、「免疫系」に「精神(こころ)」の4つの系が相互に非線形的に影響しあい、自律統合性Autonomous Integrityのバランスをとり、生体の「自己調整能と自然治癒能」を発揮させる機序ともいうことが出来る。
 

 それらは、生体においては、ベルナール、キャノンの「恒常性ホメオスターシス」の概念からヒポクラテス、ガレヌスに始まる「自然治癒能」と言われているものに相当し、精神においては昨今、「レジリアンス」と言われているものの概念が近いものと考える。
 

 そして、AIFの作用機序としては、主として内分泌系、自律神経系を経由して、「免疫系」を介して作用し、自律統合性の調和を図るものと考えている。

 自律統合性機能AIFの機能不全で、物質波、精神波のリズム振動、共振が失調すると健康状態を逸失するが、その状態を自然回復可能な領域reversible territoryと医学的支援なしでは回復不能な領域irreversible territoryに便宜的に分けると、前者の段階は病気未満の様態と言え、前者が後者に移行した様態が病的状態といえる。

前者の、つまり正常から病気未満の領域で、主として身体的な健康を扱うのが、美容医学、抗加齢医学であるとすれば、同領域の、主として精神的な健康を扱う医学があっても良いのではないか、と考えるに至った。
 

 そこで、精神波の波動のリズムが先行的に失調し、精神障害の範疇までには至らないが、精神的、霊的に健康的な生活に支障が生ずる「こころの領域」を扱う医学として「整心精神医学Orthopsychiatryの概念を提案したいと思う。

 「整心」の意味するところは、心のバランスを失った精神状態を整え復調することであり、語源は整容、整体に倣った。

 美容医学が異常とはいえない外観に、より美しい外観を追求するように、

 整心精神医学は、医学的には正常域の精神状態を、より健康的で、前向きな生き方を目指す精神状態(beautiful mindと仮称)の獲得を目指す、いわゆる60年代に米国で起きたスーパーヘルスの概念(単に病気にかかっていないということ以上に、積極的に健康について考え、洗練された生き方、暮らし方を求める運動)に近いものであり、そのような臨床領域を拓くものでもある。

 「整心精神医学」のもう一つの目的は、生きづらい精神環境を生き易い精神環境にする、いわゆる霊的な健康に通じる精神状態を回復することである

 そのような臨床モデルは、具体的には、外観、美容に関する強いこだわりの身体醜形障害や自傷、摂食障害に関連する形で現れやすい。

 また、整心精神医学は、「健康」を全体論的(holistic)な心身相関として捉える精神神経免疫学的なアプローチで研究することでもある。

 整心精神医学の対象となるものは、DSM-5が「苦痛や能力低下をもたらす認知機能、感情鈍麻、行動の異常による症候群」と定義した精神障害ではなく、かといって、健康な生活を送るには支障のあるような病気未満の精神状態を基本的に扱う。それは精神障害のスぺクトラムで正常との境界領域から精神の霊性領域の不調和が対象になる。
 具体的には気分変調症、気分循環症、失調型人格障害、境界型人格障害、身体醜形障害、自傷、摂食障害に類し、その周辺にあるものなどが、これにあたる。

 なかでも、「外観、特にその美へのこだわり」が強く、社会機能を損ねている(社会生活がスムースに送れない)が、精神障害(症)に該当しない人に、どのように対処して外観のこだわりと社会機能の両立を図るかを扱う医学として、精神医学と形成美容外科学の両者が連携してアプローチする医学を「美容整心精神医学Cosmetic Orthopsychiatry」として提案したいと思う。これは整心精神医学の一分野として位置付ける。

 その実際については次回以降に具体的に述べる予定である。

 

 

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自律統合性Autonomous Integrityについてーその2

心の各領域における自律統合性機能AIFの働き
フロイトの構造論に沿って、心の各領域におけるAIFの働きを見てみよう。

霊性領域におけるAIFの働き
「霊性」の概念はフロイトには無く、キリスト教やグノーシス主義ではガイスト、スピリットと呼ばれ、ゼーレ(魂)の上位に置かれ、神そのものを意味したようだ。オスラ―が、その概念を治療に導入し、WHOが健康の定義を「健康とは、完全な肉体的、精神的、霊的及び社会的福祉の活力ある状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」としようとしたことで注目された。(WHAで否決されたが。)

 斎藤は、心の機能の内で「世界観、自己認識、生の意味付け」などが霊性と呼ばれるとし(斎藤学、「アダルトチルドレンと家族」,学陽書房、1996)、浜田は、自説の人間学的三元論で霊性を、生きる目的、価値、尊厳等の人間的条件の根源にかかわる行動原理として、魂の上部構造に位置付けている。(浜田秀伯、「精神医学エッセンス第2版」、弘文堂、2011)

 私は、霊性を浜田とほぼ同様に捉えるが、人の内的世界から宇宙に連なる超越的な規範としての自律統合性の中で位置づけた。霊性領域におけるAIFの役割は次のようなものとする。

 「生きること」を自明なこととして受けとめられる自己肯定感や生きる意味、生きる価値、尊厳など生の根源的意義を見出すのが霊性の働きであり、AIFがうまく働かないと、思春期以前から、「生きること」を素直に受け止められず、「生きること」に苦しむことになる。(例えば、アダルトチルドレンや境界性パーソナリティ障害のように。)

 これは誰しもが思春期から青年期に思い悩む、自然発生的な哲学的な課題の範疇とは別のものであり、生存の基底を襲い、精神の不安定さを強く根づかせるものとなる。

 AIFがうまく機能すれば、「生きること」というアプリオリな問いから来る深刻な悩みは軽減され、自らの尊厳を保ち、社会生活の中で安定した精神状態を保持できるように働くシステムになる。

自我領域におけるAIFの働き

 自我領域では、AIFは、自我の発達過程に関与し正常な発達を促す(コントロールする)機能でもある。

 具体的には1)フロイト、自我心理学の発達論、2)マーラの分離―個体化の発達、3)スターンの自己感、4)対象関係の発達、5)カーンバーグの人格構造形成,等で説明される自我発達の正常な発達を促すのがAIFの役割と考える。

 完成された自我においては次のような働きをする。

①  自我機能,機制は単発ではなく、同時多発的に働くので、それらの相互関係を調整して総合的にバランス良く働くようにAIFは作用する。例えば,防衛機機能と適応機能の連動作用を調整し、エスとエゴ領域の調整を図り、昇華を実現させる。
AIFの機能が十分に働かないと、神経症やPTSDになりやすくなる。

②  AIFは自我のエネルギー配分を調整し(葛藤エネルギーの逆備給を減らし自律エネルギーの備給を増やす)、自我を強固にし、柔軟性を与え、同時に自我の「自律機能」を高め、エスが昇華されやすいように導く。つまりAIFは人が社会に向かって向上的に生産的に成長しようとするように仕向ける。

③  AIFは、タテマエの自分(偽りの自己)false selfとホンネの自分(真の自己)true selfをうまく使い分け、それにより自我は防衛機制を上手く使うことが出来るようになる。

④  AIFは、自我を二次的心理過程(reality principle)と一次的心理過程(pleasure principle)の間で、退行、進展、振動の様式で移動させ、自我の機能を調節する。病的な退行もあるが、健康的に退行(自我のための退行)すると、創造的自我を形成する。その過程にAIFは関与する。
AIFがうまく機能すると創造的発想、行為が豊かになる。

⑤  統合機能は、自分を自分という一まとめにしておく自我の機能とされるが、それは他の自我機能を束ねるメタ機能であり、それを他の自我機能と並列的に置くより、上位機能としてのAIFが直接的に関与している機能とした方が理解しやすい。

超自我におけるAIFの働き
 超自我⇒自己規制⇒自我理想への進展を促すようにAIFは機能する。理想に自分を照らし合わせて行動させる機能である。

AIFがうまく機能しないと超自我が弱く、反社会性パーソナリティ障害になりやすい。

エス領域におけるAIFの働き
 エスとは、リビドー(エロス)、アグレッション(タナトス)のカオスだけではなく、それにまつわる記憶、感情、願望など意識化してはいけないモノ、意識化出来ないモノ、意識化したくないモノ,しないでいるモノが抑圧されて無意識下に置かれているものを言うが(ユングの個人的無意識)、AIFは、エスを中和化(自我化)し、エスからの防衛を昇華に導くための手助けをする。

自己領域におけるAIFの働き
 ユング心理学の自己領域におけるAIFの作用は、ユングの言うところの、心の一般的態度の、「内向ー外向」や4つの心理機能、「思考―感情、直観―感覚」などの心の「相補性」の働きを強化させ、心のバランスを図るように働く。

 またユングの言う「個性化、自己実現」に向けて全体的に働く。

AIFは「霊性」「自律機能」に特に関係が強い。
心の力動的な動きに対しては調整的に働くが、それ以前の生の根源、生きる営みの根源に関わるような精神作用においては、生き易さ、生きずらさを演出する。 

AIFの生物学的メカニズムについて
 セロトニンは攻撃性(自殺、暴力、自傷)、うつ状態、不安、強迫、衝動性に関係すると言われ、それらのいずれにも選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRIが著効する例があるという。

 つまり精神医学的には別個に分類される症状が、同じモノアミン系の神経伝達物質によって呈されることになる。
 これはそれらの諸症状を統括する上部構造の存在を示唆する。同じ上部構造がセロトニンの影響を受けるが、関連する部分構造の違いで多様な症状を示すのではないかと推察できる。
 その上部構造がAIFと想定すれば、AIFが統合する精神波の波動の波形や振動数の違いで、いろいろな症状が示されると説明することができる。AIFはセロトニンを介して、うつや衝動性の症状を示したり、改善したりするのである。 

 心身健康であるということは、物質波、精神波の波動、リズム振動が正調であり、かつ両者が共振しているということであり、病的であるということは、共振せず、リズム振動も失調しているものと考える。それは自律統合性機能AIFの弱体化、機能不全によってもたらされる。
つまり、AIFは物質波、精神波のリズム振動の調律と共振を図ることで心身の健康的な発達を推進し、健康を維持する役割を果たすということができる。 

また恒常性機能homeostasisとは、主として物質波(身体波)に注目し、その振動のリズムバランスを保つことで身体の生物学的健康を維持するとし、自律統合性機能AIFの一つの機能と考えることが出来る。
また精神医学でいうレジリアンスResilienceとは、主として精神波に注目し、そのリズム振動のバランスを保つことで精神的健康を維持する、AIFの一つの機能と言うことが出来よう。

但し、これらの機能は独立して単独で作用するものではなく、相互に影響しあい一体化して生ずるものである。つまり物質波と精神波が共振してこそ、各々のリズム振動も維持できるものであることを強調しておきたい。

以上が、「自律統合性」「自律統合性機能」と「物質波(身体波)」「精神波」の概念(精神波①②③自律統合性①②)を導入して、心身の健康を説明し、論ずる私の仮説である。

 

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再び自律統合性(機能)Autonomous Integrity(Function:AIF)について-その1

量子論は、古典物理学が示した、ラプラスの悪魔に象徴される因果論、決定論が物質的世界では成立しないことを示した。
? 分子生物学(免疫学)は、生物の自己を決定づける免疫の仕組みは、造血幹細胞から未熟リンパ球を経て、B細胞、T細胞が生成される過程が全くの偶然性に依ることを示し、またB細胞T細胞の抗体、受容体タンパクがDNAの切り貼りという、これも偶然性による遺伝子の再編成によって作られることを明らかにした。(利根川進1983)。
? また脳科学は、脳ができる時に、1つ1つの脳細胞がお互いどのように結合するか、どの脳細胞がどの脳細胞と結合できるのか、どの脳細胞が結合出来ずに死んでしまうのかは全くの偶然によって決まることを明らかにした。

つまり、身体的「自己」を決めるT細胞と、精神的「自己」を決める脳細胞が、同じような偶然性に依拠するアポトーシスの仕組みで出来ているのである

 現代の科学は生命、精神、物質の森羅万象が偶然の結果でしかないことを教えるが、しかし、原子核と電子の構造決定の巧みさから、フィナボッチ数列、黄金比、フラクタル現象などの神の技としか思えない自然のデザイン性や、バイオミミクリーが教える超越的な自然現象の合理経済性などを見ると、何か超越的な存在による差配を信じざるを得ない。
 私は、精神には自我のシステムを超越したメタシステムとしての領域(霊性spirituality)があるとし、
 また、有機物から無機物まで、すべての物質の世界(生命、身体、社会、自然、宇宙)にはその営みの規範となり、調整を図る規律、根元的原理があるとした。
 その霊性と根源的原理は連続して、個の内的世界から宇宙全体の中心軸をなしており、私はそれを自律統合性Autonomous Integrityとし,その機能的役割を自律統合性機能Auotnomous? Integrity? Function:AIFとした。(「人の存在と心の構造モデル」2013.03.11)

AIFの位置づけ

AIFの位置づけ

AIFは人においては、「神経系」、「内分泌系」、「免疫系」に「心(精神活動)」を加えた4者が相互に関連しあいながら、心身一体のバランスをとり、健康を維持する働きである。これは生体(生物学的)においては、既に恒常性ホメオスターシスとして言われているものが相当する。
 AIFの作用は、「全体が部分の総和としては理解できない」非線形的現象であり、つまり、各要素が働いて全体としての作用が生ずるというより、全体の目的性を持った働きが先行的にあり、それに合わせて各要素が働くというような、ユングの言う非因果的連結原理、パウリの言う排他原理に伴う、すなわちシンクロニシティ(非因果的同時生起)で作用、機能するものと想像している。各要素は相互に影響しあい、それが結果に変化を与え、その結果が再び要素に影響を与え返し、変化した要素は相互に影響しあって、再び結果に影響を及ぼすという連鎖を繰り返していく複雑系のシステムとなっていると思われる。

 表現を変えれば、各種の神経伝達物質、ホルモン、サイトカインを各構成員とした平均場モデルを考えると、各構成員の総和が平均場モデルを作りあげ、その平均場モデルの振る舞いが各構成員の振る舞いを決定するという「個と場のフィードバック」の関係と見ることも出来る。

 これはリズム(ミクロリズム)が多数寄り集まれば、大きなリズム(マクロリズム)にまとめ上げようとする自然の力による集団のリズム現象,同期現象でもあり、これは、心身が身体波(物質波)と精神波の波動性を持つとする私の仮説(「精神波」心は波動である??2014.04.08.)を裏づけるものとなっている。

 心身の健康状態は、身体波、精神波のリズム振動が共振し正調に作動していることを意味し、そのリズム振動を指揮するのがAIFであり、AIFが機能不全状態になると、リズム振動が乱れ失調し、健康を失い、やがて病的状態に至る。

 AIFは生物学的には恒常性homeostasisとして働くが、精神的には、個別の状況での機能的な役割を総合してみると、最近の精神医学でいう「レジリアンスresilience」に相当する働きを持っていると考えられる。

 レジリアンスとは、ストレスに抗する強さ、並びにストレスの障害からの立ち直り易さをいい、「ストレスや病気に対するしなやかさ」を意味するが、精神科学では「坑病性」とも言われている。

 ストレスに対する生体反応や恒常性については、身体医学に既に詳しいので、ここでは「心の状態」とAIFの関係について述べる。

 最も、「身体」と「心」を切り離して考えることは出来ず、「こころ」は、身体と相互に影響しあいながらAIFの作用を受けるというのが前提ではあるが。

フロイトのこころの局所論、(‐意識、前意識、無意識 )心の構造論?(エス、自我、超自我)、では自我は意識に、エスは無意識にと存在場所が固定されているわけではなく、自我は意識から無意識まで動き回るし、エスも無意識から意識までを動き回るとされる。したがって、それらの動きをコントロールする何らかの機能が必要となる。例えば、エスは超自我の牽制を受け、自我の防衛機制の一つに出会い影響を受け、また別の機制で調整される。そのように心の全体機能を総合的に働かせ、自我をコントロールする機能が自律統合性機能AIFにあると考える。

自律統合性機能と心の各領域のかかわりについては次回説明する予定である。

「精神、心」も神経系、内分泌系、免疫系の影響を受けるが、免疫系が最も関連性が深い。「うつ」をはじめ、心に障害があると免疫力が落ちるとする、多くの動物実験報告、臨床報告があるし、免疫力が落ちるとこころの障害を招きやすいとする動物実験、臨床報告もある。

心は、とりわけ免疫と強い関連がある。

 ところで、自律統合性機能AIF は、すべてを、常に、より良い方向、最善の方向を目指してコントロールし導くように働くのであろうか?そうだとすれば、AIFは再び、万物を古典物理学の決定論、因果律に戻す存在となるのか?との疑念が生じるかも知れないが、自律統合性の概念は、元々、量子論で精神を見ようとする所から始まったものであり、量子論の、その範囲内で整合性が得られなくてはならないと考えている。

 「真、善、美」や正義、道徳などの意味、価値の判断は「霊性」の領域であり、AIFはそれらを判断できる精神身体的状況の調整はするが、判断内容自体までは立ち入らない。
霊性領域での判断決定は、あくまで個人の内的体験により、非線形的に決められるべきものであると考えている。

 

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精神波-心は波動である(その2)

4.単細胞の振動の意味すること
粘菌はアメーバ様運動をする巨大な単細胞であるが、高等動物の脳の働きに類似する高度な情報活動を行っている。この秘密は、リズム性と形状変化にある。原形質は振動する代謝反応に起因するリズムを示し、したがって細胞は多数の振動子が結合したネットワークを形成する。形状変化は振動子間の結合状態を変える。このように粘菌は、脳でのシナプス結合の変化に相当することを時々刻々都行い、細胞全体にわたる動的パターン形成をもとにして情報判断や行動制御を行っている。(上田哲男、中垣俊之:細胞に心はあるか。脳と心のバイオフィジックス、共立出版社、1997年)
⇒これは細胞心理学の可能性を展望する論文の要約であるが、原生生物においても、意識が振動に関連する可能性を示し、また、細胞の振動子が結合し全体系の集団ダイナミクスが情報処理や計算の基礎になっていることの示唆は、現在、脳の活動が神経回路網のダイナミクス(ニューロンシナプスの可塑性の問題)として理解されつつあることと関連していて興味深い。

5.中村雄二郎の汎リズム論
哲学者中村雄二郎は、自然、宇宙のあらゆる物理現象から生命現象はリズム振動が基礎であり、音楽の感動も、リズム体である音楽が、同じくリズム体である生命体に共振作用によって身体に働きかけるためであり、単に知的、精神的なものではないとし、広く絵画などの芸術も根源はリズム振動の共振であるという「汎リズム論」を言っている。[中村雄二郎:表現する生命、青土社、1993、中村雄二郎:共振する世界、青土社、1993)
⇒ここでは、身体、精神が振動体であることを前提においている。

6. 精神症状と量子論の親和性
幾つかの精神症状は量子論の現象に類似性がある。意識を量子論と結びつける発想を支えるかもしれない。
? 自我漏洩とトンネル効果
電磁波は障害物を透過する性質がある。可視光はガラスを透過するし、携帯の電波も壁を透過する。電子も波の性質があるため壁をすり抜けることがある。原子核は通常、「強い核力」により陽子、中性子が強固に繋がり、また周辺をエネルギーの障壁で守られているので崩壊することはないが、原子核のアルファ崩壊はアルファ粒子がトンネル効果でエネルギーの壁をすり抜けることで起きるとされる。
エネルギーと時間の不確定性関係では、ごく短時間であれば、障壁を越えるだけの大きなエネルギーを得ることが出来るため、障壁をすり抜けたように見えるわけです。
 自我は原子核に例えることが出来る。自我は自我境界で守られ統一性が保たれている。しかし、自我も境界が脆弱化すると、自我が漏洩し、作為体験、構想吹入、考想奪取などの症状を呈する。(幻覚、妄想も関係する?)
電磁波、量子の波動性がトンネル効果をもたらすように、自我漏洩もトンネル効果の一種と見れば、心に波動的な性質があると捉えることは出来るのではないか。
? ? 多重人格と多重世界解釈
ICD-10では多重人格障害、DSM?では解離性同一性障害と呼ばれる、「2つ以上の別個の人格が同一個体に存在し、ある時点ではその一つだけが明らかになる病態」がありますが、これは量子論の、コペンハーゲン解釈の「多様性が一つに収縮し、他は瞬時に消滅する」という矛盾を、「多様性の数だけ多世界が存在するが、そのうちの一つだけを認識する」と解釈することで、矛盾を解消する多世界解釈に通じるものである。多世界各々に自我は存在し得るが、複数の世界に行くことは出来ず、一つの世界を認識すれば他の世界を認識することは出来ないとされ、多重人格は、例外的に複数の世界を行き来する状態といえる。
?  「力動」、「相補性」と「量子的なからみあい」
フロイトは無意識と言う概念を作り、それは常に意識と相互に密接に関係性を持っているとし、ユングも内向、外交的態度や主機能、劣等機能の関係において、意識の態度が一面的になると、それを相補う働きが無意識内に存在することを強調している。
量子論においては、量子はある関係性においてはペアになることがあるとされ、その関係は空間的に距離が離れても無関係にはなれないとされる。例えば「シングレット」という特殊なペアの場合、量子1と量子2のどちらかが「上向き」の回転軸を持っていると、もう片方が「下向き」の回転軸を持っているが、観測以前は、量子1も量子2も具体的な回転軸の状態は決まっているのではなく、決まっているのは「互いの回転軸の方向が反対だ」ということだけである、というような関係を、量子1と2は「量子的なからみあい」の状態にあるという。
このからみあいの関係は、意識無意識の力動関係、相補性に通じるところがある。

7.DSM5の見解から
DSM5では、DSM?,?の診断可能な症状の項目を集めたカテゴリ―診断学的な考えを改め、統合失調症、気分障害、広汎性発達障害カテゴリーにおいて、類似周辺疾患とされた独立した障害名が外され、一つのスぺクトラム(連続体)として扱うようになった。スぺクトラムとはいくつかの波長の電磁波が集合(干渉)していた光ををプリズムで屈折させ分散させると、明確な境界が無い連続性のある波長帯を描くという光が波動であることを示す現象をいうことから、スぺクトラムと解釈できる精神症状も波動的性質を持つとの意味合いを含んでいることになる。
これは心が波動であるという主張の傍証になるものと考える

精神障害をスぺクトラムで捉える考えは、私が精神医学を学び始めた当初より考えていたものであるが、勤務先病院のカンファレンスでは新参者のたわごととして無視、あるいは蔭で罵倒されたものであるが、日本の精神医学はこのDSMの変更をどのように受け入れ修正していくのであろうか?無批判的に、文字通り米国精神医学会に盲従するとしたら、日本の精神医学の独立性(科学性)はどこにあるのかという問題にならないのであろうか。(しかし、多分問題としないところに、杞憂ながら問題の深刻さがあるように周辺新参者には思えるのであります。)

以上羅列した各事項は、各々が、心、意識、精神に波動的な性質があることを含んでいたり、示唆するものであり、それらが集まって全体性として全く別の新しい意味あいとしての波動性を生じた、ものとは言い難い面がある。従って、「心が波動である」という考えは創発には当たらず、自然な帰結といえるのかもしれないが、「精神波」というような包括的な言葉が無かったことから、そのような表現にしたものである。

 

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「精神波」-心は波動である(その1)

「心とは何か」は、生命、宇宙の謎と並んで、人類が残してきた重要な未解決問題である。宇宙の誕生から、現在、未来の謎を解く課題は、量子論あるいは量子論と重力論(相対性理論)の統合した理論体系で研究が進んでいる。(例えば、超ひも理論、ツイスター理論)。心脳問題も量子論が関係しているとする直観があり、心も量子的な性質で説明できるのではないかという意見も少なくない。
 先に見てきたように,心脳問題における現在の主流である還元的一元論では、こころにはニューロンが関与するとされ、ニューロンが直列的に信号を伝播し作動するのではなく、オーケストラがシンフォニーを奏でるように、ニューロンが並列,重層的に発火し共振するのではないかという推論があり、そこから量子論の共存性の概念が適応されるのは説得力のあるところである。
従って、心が量子的な性質、少なくも「波」としての性質を有すると直観するのは全くの的ハズレではないと思われる。
 ド・ブロイは電子のような物質粒子が波としての性質を持つとして、その波の性質を「物質波」と名付け、量子論の基礎を築いた。私は、心にも波としての性質があるとし、物質波に対比して「精神波」の概念を提唱しようと思う。
これは基本的に、私が精神医学を学ぶ中での、暗黙知による直観的創発であるが、創発となった、いくつかの要因を上げることでその根拠の代わりにしようと思う。
1.量子論とユング心理学の類似性
自然界の2大理論として、「相対性理論」と「量子論」があるが、相対性理論は時間や空間という「自然界の舞台」としての理論、量子論はその舞台に立つ電子などの「自然界の役者」としての理論と言える。
量子論がかかわらない物理学を古典物理学といい、ニュートン物理学、電磁理論、相対性理論が含まれる。古典物理学はラプラスの魔物に代表されるように「決定論」であるが、量子論(実証論の)は、非決定論であり、ニュートンの『モノの世界観』を「ことの世界観」に変えた。量子論は従来の概念からは素直に了解しがたい概念を含むものであるが、つまるところ量子論のキーワードは2つに要約されよう。
? ミクロの世界では光や電子など量子的物質は、「粒子の性質」と
「波の性質」を持っている。(波と粒子の二面性)

? ミクロの世界では一つのものが同時に複数の場所に存在できる。
(状態の共存性)状態とは、位置やスピンのことを言う。

これらの、相反する性質が相補って存在し機能することを、量子論では「相補性」と言う概念で説明している。
ニュートン力学では、物質の振る舞いを決める基本となる方程式はニュートンの運動方程式であり、量子論ではシュレディンガーの方程式である。それは波動関数Ψで示された。この数式が何を意味するかで二派に分かれて論争があった。Ψは量子という実体を現す波であるとし、量子は局所に実在し、その性質も完璧に決まるし、完全な理論があれば位置も動きも計算もできるはずであるという「実在論」を言う立場の、ド・ブロイ、シュレディンガー、アインシュタインのグループ。Ψは量子そのものではなく、量子が存在する確率の波であり(コペンハーゲン解釈)、理論による計算値が実験データとあって実証できれば、その過程はどうでも良いではないかとする「実証論」を言うボーア、ボルン、ハイゼルベルグのグループである。
アインシュタインは「神様はサイコロ遊びを好まない」と言って、量子の位置が確率でしか表せないのは現在の量子理論が不備であるためと言い、EPRパラドックスという思考実験を示し量子論の不備を示し、シュレディンガーは「シュレディンガーの猫」という思考実験で状態の共存性のまやかしを突いた。
しかしジョン・ベルは、アインシュタインの隠れた変数の存在が前提(実在論)で成り立つ、「ベルの不等式」が、実際には量子論のシュレディンガーの方程式(アインシュタインも認めた)の計算値では成り立たない事を示し、さらにアラン・アスぺは実験的にそれを証明した。結局、論理学で言うところの対遇で、つまりベルの不等式が成り立たなければ、アインシュタインの変数理論も成り立たないということになり、アインシュタインらの実在論の主張は退けられた。(これはコペンハーゲン理論が100%正しいということには、必ずしもならないが。)
量子の電子同士が<超>光速信号で繋がっていることを思わせる非局所性(non locality)は避けがたく ,瞬間移動の存在(量子テレポーション)を立証することになった。しかし、かといって、死んだ猫と生きている猫が重なり合って共存しているという考え方や、波動の収縮で無数の電子が瞬時に消え去るというコペンハーゲン理論が完璧な説得力を持ったというわけではなく、「量子的な絡み合い」や「多重世界的な解釈」等の概念が生まれ、またボームの様な異端の量子論もあり、論争は未だ決着を見ていない。
ユング心理学では
 ユング心理学は、意識、無意識の間や、4つの心理機能の間に相補性があり、心のバランスを保っていることを強調しているし、また心の働きに、意味のある偶然の一致meaningful coincidence共時性synchronasity の概念でテレポーション(遠隔作用、瞬間移動、虫の知らせ)の実在性を言っている。
これら相補性と、共時性、共存性の概念における量子論とユング心理学の類似性から、心の作用と量子の振る舞いには共通性があり、したがって量子の持つ性質が心にも共通するものとの推測が成り立つ。
以上が心の波動性を創発させた要因の一つとなっている。(もっともユングの意見に賛同する事が前提ではあるが。)
2.心の量子論;ペンローズの考え
ホーキングと「特異点定理」を証明した世紀の天才数理物理学者とされるロジャーペンローズは心の仕組みを、意識は必ず物質的な基礎を持つという還元的唯物論の立場から、意識を量子論を基礎に、それを越える量子重力理論で解明しようとしている。彼は量子論では実在論のグループに属している。
ペンローズの言う意識は、意味の理解から生ずる非計算的なものであり。ロボットのように計算的なシステムで動くものは、意味の理解ができないから意識が生ずることはないという。また、ゲーテルの不完全性定理により意識の計算不可能性をいい、それがアルゴリズムとされる自然淘汰に介入する意識の機能的な役割を果たす理由と考えている。
意識は部分の寄せ集めではなく、一種の大局的な機能的な能力であり、おかれている全体的な状況を瞬時に考慮し判断できることから、量子力学が関係すると考える。
しかし意識の非計算性は、シュレディンガーの方程式の収縮におけるランダム性(確率論)だけでは説明できず、現在の量子理論では意識を説明するのに不十分であるとする。
また、そもそも現在の量子力学はマクロの説明は全くできないことから根本的な欠陥があるのではないかとの考えから、量子力学を越えた、量子場の理論(>量子理論)と一般相対性理恵論(>重力理論)を統一した「万物の理論」としての量子重力論の必要性を主張し、それをツイスター理論で説明しようとしている。
そして、意識の作用は量子重力的な効果、すなわち波動関数の自己収縮(客観的な波動関数の収縮)で説明できるとしている。
具体的にはニューロンのマイクロチューブルで、量子学的な重ね合わせが形成され、コヒーレント状態が保たれると意識が生まれ、量子重力理論で与えられるエネルギーの閾値に達すると波動関数の自己収縮が連続して起き、意識の流れが生まれるとしている。
⇒マイクロチューブリンのコヒーレントに重ね合わされた量子力学的な状態は、まさしく波動であり、波動関数の自己収縮が自己組織化されオーケストラのように調整され、意識に関連しているという意見は、少なくとも意識に波動的性質があるということ意味しているといえよう。
3.神経活動の同期と意識の結合問題
意識の第二のレベルである気づき(視覚、聴覚、嗅覚などの感覚)は、脳の異なる複数の部位で処理された情報を一つに統合、結合して認識する必要があるが、その機序には神経活動が同期した時に情報が束ねられて意識が生じるという理論があるが、これらは実験的にも視覚系(Singer)や嗅覚系(Freeman)においては確認されている。⇒これは意識が同期によって生じることから、波動であることを前提にしている議論である。
(続く)

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心脳問題と量子論-その3

唯物論で心脳問題がなかなか解けないのは心が数値化、定量化、客観化できず自然科学のやり方がうまく通用しないためである。
心脳問題を解くには、全く新しい技術や方法論を使った科学が生まれなければならないだろうが、今可能性のひとつとして「暗黙知と創発の概念」が言われている。
創発とは「カオス理論」や「複雑系」といった学問領域で使われる概念で「たくさんの『部分』が相好相互作用することで、『全体』としての新しい作用が生まれる現象』のことで、全体の性質は部分の性質だけでは決まらないとも言うことができます。(これがこのブログの形を決めた理由でもあります。)脳を構成する一つ一つの神経細胞の振る舞いの知識を組み合わせるだけでは心は説明できないが、単純な振る舞い(部分)が複雑に組織化され、心(全体)が創発されると考えるわけである。暗黙知とは、知識を得るときに身体の中におきるプロセスや活動、メカニズムのことで、「部分に注目したら、いつの間にか全体が見えてしまう。」というような構造と説明し、「部分から全体へ」創発が起きる時に働く力のことをいう。
この概念を用いてBungeは創発的一元論を提唱している。
これはBungeが意識・心を脳の特殊なプロセスとして考え展開した理論であり、心・意識は一個のニューロンに還元できず、システムとしてのニューロン群が活動しプロセスを進行することによって心・意識が形成される、とするものである。
そこでは異なる脳の部位で分散的に処理された情報がどのように統合されるかという問題が生じ、それは「結合問題」あるいは「統合問題」と呼ばれ、脳科学の重要課題になっている。
現代の脳科学者は、多くはこの創発的一元論の立場に立って研究している。ある心の動きが一個のニューロン、や単一の脳部位で実現される、還元されるとは殆ど誰も考えていない。むしろある心の働きは、多数のニューロン群や脳部位が形成する「階層的並列システム」の働きによって形成されると考えている。
一時期はやった「おばあさんニューロン」などと言う、認識を単独で担うニューロンの存在は今は信じられてはいず、創発的一元論が主要な立場になっている。

ところで、脳科学者が自らの研究を‘意識や自我’という心理精神医学的な表現に立ち入ることは殆どなかったが、最近は、脳科学の進歩から、哲学、精神医学、心理学の出口の見得ない方向性を正す意味からも、脳科学者の発言が始まったようである。
Damasioは『デカルトの間違い』でデカルト流の二元論を正面から批判し、DNA二重らせん構造でWatsonとともにノーベル賞を受賞したCrickは、その後脳科学に転じてから、意識のサーチライト仮説など多くの独創的仮説を述べ,著書「驚異の仮説」の中で「意識とは多数のニューロンの集まりと、それに関する分子の働き以上の何ものでもない」と表明している。しかし、それは今や脳科学者の間では驚異でもなんでもなく、最大公約数的なセントラルドグマとなっている。
現代の脳科学者の心脳問題におけるコンセンサスは、「意識も自我も他の心の働きもプロセスであり、脳の働きもまたプロセスである」とし、脳内プロセスはニューロンやその集団(セルアセンブリ)のダイナミクス(相互作用やそれによる動的変化)をベースにした様々なプロセスである、と言うところにあるようだ。例えば、ニューロンのポピュレーションコーディングとその動的変化、多数のニューロン間での同期的活動(オシレーション)や相互相関とその時空間的な変化,機能コラム内での局所情報処理とコラム間の水平結合を媒介としたダイナミックな相互作用、並列処理と階層処理の複雑な入れ子構造プロエス、等等の複雑なプロセスが織りなすダイナミックなシステムが脳なのである、とする。
さらに、脳の本質的理解には、ハードウエアとしての神経生理解剖学的な理解に加えて、(目的、理由を問う)計算論的なアプローチが必至であるとも言われている。

とは言うものの、それは、第三者的に見れば、脳科学は、意識にしろ自我にしろ、その脳内プロセス、メカニズム解明の、ゴールの見えないスタート地点に立ったばかりの決意表明に過ぎないようにも見える。

所で、精神医学、心理学は、意識・心における精神分析、病理理論において、心脳問題を語る哲学の様に、各人が結論の出ない解釈を繰り返しているだけで、いつまで自己満足し続けるのであろうか。

脳科学は、一応曲がりなりにもゴールを目指しスタート地点に立っている。
精神医学の臨床からも何らかの形で脳科学に直接リンクする必要があるのではないか。
現在の物理体系を含みながら意識を解明する、ミクロからマクロを網羅する壮大な理論の、その中のいくつかのシステムがどのように意識の経験に結びつくかを、意識の様相と物理の様相の二つの側面から考える「精神物理学」を育てる機運が、精神医学の若手研究者に全く見えないのは、私のような精神医学の傍流から見ると不思議であり、奇妙にさえ思えるのである。

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心脳問題と量子論-その2

還元論的唯物論を支える理論の一つに量子論がある。
量子力学が成立した極初期の頃から、一部の物理学者達は量子力学と意識は関連しているかもしれないと感じていた。
Penroseは心を解明するには、量子力学か、あるいは「量子力学と古典力学の橋渡しをした、そして計算能力を超越した新しい物理理論」によって初めて表現できる、非決定論的な効果を利用しなければならないと考えている。Penroseはニューロンを含むすべての細胞で、細胞骨格の微小管マイクロチューブリンが意識に不可欠な量子効果を生み出している可能性があると主張している。
これに対しては、ホーキンスをはじめ量子物理学の先鋭たちの反論があり、両者間に激しい討論があるが、これらに関しては竹内薫と茂木健一郎が訳と解説をした「ペンローズの量子脳理論」(徳間書店、1977年)が詳しく、面白い。

心に関して量子論的な考察をした人には、神経生理学の立場からは先に述べたEccles、哲学的立場からはRockwood がいる。(「心身問題と量子力学」、産業図書2003年)

また、量子論はその哲学的観念から唯我論的一元論を導いたが([量子論から解き明かす心の世界とあの世」PHP研究所2014年]、これはBurgeの分類では観念論に入ると思われる。量子論の哲学的意味を考えるに面白いので紹介する。
まず、量子論は以下の事実を明らかにした。
 ?光は波動性と粒子性を持っている。
 ?電子も波動性と粒子性を、持っている。
 ?一つの電子は複数の場所に同時に存在できる。
(電子の状態の共存性)

 ?電子の波は観測すると瞬間に一点に縮む。(電子の波束の収縮性)
 ?電子の状態は曖昧である。(電子の不確定性原理)

そして量子論は次の3つのパラドックスを持っている。
?ミクロの世界では、ニュートンの法則には従わない。
なぜなら、マクロの世界では物体の運動は連続するが、
ミクロの世界では電子の運動は連続しないから。

?ミクロの世界では、観測者の意識が観測対象に変化を与え、
観測対象そのものを変化させたり,創造したりするが、
マクロの世界では観測者の意識が観測対象に変化を与えることはない

?ミクロの世界は確率の世界で、すべてが確立的に決まる。
つまりマクロの世界の因果律はミクロの世界では
全く通用しない、事になる。

量子論の骨格となる考えはコペンハーゲン解釈であるが、それは、ミクロの世界はすべてが予測不可能で、不確定であること、一個の電子は私達が見ていないときは「波」になっていて、何処にいるか一か所には決まっていないが(状態の共存性原理)、私達が見た瞬間に、電子は粒子になりどこか一カ所で見つかる(波束の収束性原理)。とは言えその電子の見つかる場所は出鱈目で予想がつかない(不確定性原理)、などとなっている。
以上のようなコペンハーゲン解釈は以下のような解釈も可能にする。

つまり、万物や宇宙で起きる出来事は、すべて潜在的に存在していて、人間が観察しない限り決して実在しない。つまり人間が万物の創造者となるのである。私達が意識を変えることで宇宙を変えることになる。私たちの意識は自身の波動関数を収縮させることで変わる。つまり、宇宙は人間の心によってのみ存在する(ジョン・ホイラー)、宇宙は人間の心の化身(結晶化)である(ヒューストン・スミス)、人間こそは、森羅万象を決定する存在である、ということになる。これから量子論的唯我論ともいうべき一元論が導かれるのである。
量子論こそは従来のを越えて、の真に創造的な学問ということができるのである(岸根卓郎)。
量子論では従来の物理学では説明できないような現象が実証され、それをコペンハーゲン解釈で説明し、その説明に「相補性」という概念が用いられている。それは西洋文化の伝統であった物と心、自然と人間などの二原論を揺すことになり、量子力学者の中には東洋思想的な一元論の観念を支持する気運が生まれるようになった。客観的な事実の存在を否定した量子論は、自然と観測者を分けて考える二元論的な世界観を退け、観測対象である自然と観測者である人間を一つのセットで考える一元論的な自然観を示した。量子論を作ったニールス・ボーアは、中国の、相反するものが補い合って世界を形成するという陰陽思想を象徴す太極図を好んだようで、デンマーク政府から勲章を授与された際、太極図を勲章のデザインにしたと言います。

また「相補性」は前にも書きましたが、ユング心理学の意識、無意識や心理機能でも強調される概念でもあり、ユングと量子論をつなげることにもなります。
(続く)

Platinoron Gel(プラチノロンゲル)細胞・分子レベルから量子レベルへ

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