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ほんとうに真夏らしい時期に夏休みを取ろうと、、、

ニッコウキスゲ

車山


夏休みをいつとるかは、毎年悩ましい問題ではある。
今は宮仕えの身ではないから、いつでも休めるのだが、うまくとらないと梅雨明け前の豪雨に当ったり、山ではニッコウキスゲが枯れてしまっていて夏山の勢いを感じられなく寂しい思いをしたりする。
そこで今年は、もう梅雨は開けている確率が高く、最も夏らしい時期として7月24日から31日までを夏休みにと7月始めには決めておいた。

今年は梅雨明け前に猛暑が来て6月下旬から真夏日が始まったが、幸い7月20日頃には梅雨明け宣言があった。東京は連日酷暑が予想され、今年の計画は当りだとほくそ笑んで、蓼科の山荘にいそいそと出かけたまではよかったのだが、25日から低気圧が接近すると梅雨前線が南下し山は連日雨模様になってしまった。

到着した当日は、それでもスーパ―「自由農園」の買い出しと荷物の搬入時は、雨が止んで幸運ではあったが、滞在した1週間で晴れた日は一日も無く、雨時々曇りか、終日雨という天気模様であった。

雨が降る

役に立ったベッド


雨は雨でしっとりとして決して嫌いではないのだが、真夏の、青い空に入道雲が立ち上る様子や、じりじりと肌を焦がすような夏の強い太陽を期待して行ったものだから、それなりに落胆した。
毎日ゴロゴロして寝て過ごし、午後になると近くの日帰り温泉に行くのが日課となるような静かな夏休みになったのである。
お蔭で春に導入したベッドは極めて有難く有益であった。

北沢氏と

職人館の窓辺からの眺め


それでも一日は望月の里に下りて、前回グルマンライフの「料理マスタ―ズ」(2017.8.1グルマンライフ)でお話した北沢正和氏の職人館に行ってみた。
職人館に前回行ったのは一昨年の5月の連休であったからもう2年半ぶりになる。当時はオーナーの北沢氏が料理マスターズ・ブロンズ賞を取っていることなどは知らなかったが、今回は昨年シルバー賞を受賞されたのを知っていたので、そのお祝いを述べた所、本人はもうとっくの昔に過ぎた過去の昔話のように、いつもと変わらず飄々としていたのが印象的であった。
卓越した料理人が、田舎でその地域共同体とうまく交わり暮らしていくことの大変さからか、彼の顔の深い皺には孤独感がさらに増したようにも見受けられた。
聞くところによると、同じような志で地産の食材にこだわるフレンチレストランやカフェ、チーズ工房、旅館の料理人が望月や佐久、小諸におり、彼等と連携して手作りのコミュニティ誌を発行したりして、村興し町興しに尽力しているが、地元住民との息は必ずしも合っているとは言えないようである。
それもあってか、北沢氏は、東京での農産省関係の会合や地方の町、村興しのアドバイザリー、講演活動に力を注いでいるようである。

その多忙さのせいだろうか、料理の切れが今一つになった印象であった。
初めの頃の、「地元野菜のパリパリサラダ」の感動的なサラダの美味さが消えてしまったようであった。野菜の種類は時期により変動するだろうが、問題はドレッシングの使い方である。

小生は、店の料理の質は、そこのサラダの質とパラレルの関係だと常々思っているのだが、要はドレッシングを多過ぎず、少な過ぎず、野菜本来の質感、味覚を損なわないように万遍なくコーティングさせるような「こだわり」が、料理全般にも通ずるものと思うからである。野菜本来の味が消えていたり、パリパリ感が無いような、かといってただの生野菜をサラダとして出すようでは、料理全般への気遣い、こだわりもしれていると思うからであるが、諸兄のご意見はいかがであろうか?

村の野菜のパリパリサラダ

村の豆腐

村のお米のリゾット

地元十割玄蕎麦


今回の職人館のサラダは、残念ながら過剰なドレッシングがお皿の底に溜まっている状態で、野菜も弾力が損なわれていた。おそらく北沢氏本人ではない雇の料理人(バイト?)が作ったものであろうが、それでもそれを出してしまっては、オーナーの責任なのである。
早く気付いて欲しいと願うばかりである。
気のせいか、「村の豆の村豆腐」も、かつてのあの鼻腔の嗅神経や舌の味蕾(味覚神経)を覚醒させる様な「豆の匂い、豆の味わい」が薄れたような気がした。
蕎麦は、10割石臼引き玄蕎麦で、前と変わらずとても美味しかった。この八ヶ岳東西南北の周辺、東信地方では、蕎麦は蓼科プール平下の「しもさか」とこの「職人館」が双璧であろうと思う。

春日荘お風呂

春日温泉

長門牧場

絶品ソフトクリーム


帰りに、すぐ近くにある春日温泉の「国民宿舎春日荘」に寄り、立ち寄りの湯を楽しんだ。100パーセント源泉かけ流しの弱アルカリ性単純泉、「美肌の湯」であった。
ちなみに日帰りの湯の料金は、なぜか佐久地方は500円、茅野地方は700円が相場となっている。
風呂場から、北八ヶ岳北端に当る山麓の長閑な春日温泉の町並みが望めて、こころ安らいだのである。
そして私たちは、白樺湖への峠道にある長門牧場のソフトクリームを忘れることは決してなかったのである。

帰る日は快晴


さて、皮肉なことに、最終日の帰京当日は朝から良く晴れ、待ちに待った夏らしい一日になりそうであったが、時すでに遅く、心を鬼にして荷物を積んで、戸締りをして帰路に着いたのである。

このような不運は、これまでの人生を振り返っても、まま、よくあることなので、最近は、「ついていない、運が悪い」などと嘆くこともなく、滅法気にならなくなったのである。

一方家人は、帰路の車中、その日のタカラヅカ公演に間に合うかが唯一の関心事であった。

年を取るのも悪いことばかりではない、と思いつつ今年の夏休みは静かに終わったのであった。

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