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テレビ三昧の寝正月

明けましておめでとうございます。

穏やかな日和のお正月でしたが、皆様は新しい年をいかがお迎えでしたでしょうか。

私は、今年の年末年始の休みは、敢えて何も考えず、頭を空っぽにして過ごしました。

読む本も車系、グルメ系、ファッション系、インテリア系の雑誌を買い込んだだけでした。

これから始まる長い隠居生活の正月から、何か課題を持ち込んでも仕方ないと思ったからです。

道路の渋滞に決断を迷った末、愛知の母親だけには会いに行ったが、それ以外は何もせず、テレビを沢山見た。

毎年、全く見ないわけではないが、大抵は、気が乗らず、つけては消してと、チャンネルをいじり回すだけのことである。

今年は、じっくりみた。長い連続番組をいくつも見たのである。

一つは、「暦の上ではディセンバー、これで見納め“じぇじぇじぇ!あまちゃん祭り”」。

朝連ドラマ『あまちゃん』の総集編、ダイジェスト版で、12月30日午前から始まり10時間の長丁場であった。

昨年の放送開始から人気沸騰で、終った時には、あまちゃんロス症候群が話題になったほどであったが、私は、仕事の時間上、今まで見たことはなかった。

この機会に噂のほどを確かめようと見始めたのだが、面白くてやめられず、とうとう全部みてしまった。

どこが面白いのかと言われても、うまくは言えないが、とにかく展開のテンポがよく、見る者の気持ちを離さず、飽きさせないのである。天野アキ役の能年玲奈がとにかく可愛い、彼女でなければ番組自体が成り立たなかったのではないかと思わせるほどに存在感があった。

僕の高校時代の親友にテレビ番組の批評を専門にしていて、民放連から東京女子大の教授になった変わり者がいたが、彼だったら、何と批評したか聞きたいところであるが、あいにく10年前に急逝してしまった。

あまちゃんの番組スタッフが紅白歌合戦にも出て、“潮騒のメロディ”を歌ったと聞いたので、You―Tubeで探してそれも見た。

カッケーガった。

“地元に帰ろう”も歌って泣ガゼた。

ユイちゃんが初めて東京に出て来れて、紅白でアキちゃんとデュエット(潮騒のメモリーズ)を再結成して歌うという演出は心憎いが、“ユイちゃん東京に来れて良かったね、”という全国のファンからのコメントが一番多かったということは、多くのファンは、もはや『あまちゃん』に、精神分析でいう転移状態にあったと言えるのだろう。

方言が、これ程美しく、愛しく聞えたことはなかったのではないか。

主人公が前へ前へと進むことで、東北の人々にエールを送り続けた。

久しぶりにテレビはその存在感を示した。

『あまちゃん』の功績はアベノミクス三本の矢以上であったと思う。

大友良英の音楽との貢献度も高いと思うが、なんといっても脚本家のクドカンこと宮藤官九郎の才能が光り、嫌が上にも再認識させられたわけだが、その日の深夜、NHKBSでやっていた「木更津キャッツアイーワールドシリーズ」もクドカンの脚本であったので、それも見ることにした。

20年位前の米映画で、ケビンコスナー主演のフィールドオブドリームのパロディ版?のようなものだったが、岡田准一ほかジャニーズ系が芸達者ぶりを見せ、とても面白かった。

『それを作れば、彼が来る』という天啓を聞いてグランドを作り、亡くなったリーダーを呼び戻すのだが、いざ来てみると、?今?に合わず、結局追い返されてしまうという悲しいストーリーなのだが、スカッと明るく見せるのがクドカン流なのだろう。

さて、その翌日31日には、BSジャパンで昼の12時から6時間ぶっ通しで放送した、『孤独のグルメー一挙放送スペシャル』も全部見た。

途中で、おせちを重箱に詰めるという例年の責務だけは果たしましたが、それ以外は釘づけ状態になったのです。

何でも、もともと週刊誌SPAの人気連載漫画が原作で、テレビの深夜番組で毎週放送していたものを、12話をまとめて放送したものらしい。

これが新鮮で実によかった。毎回ショートショートのようなちょっとしたストーリーがあり、“それにしても、お腹すいたなあ”と決め台詞を言って、決まって昼ごはんを食べるシーンで終わるという展開なのである。

仕事で出先の市井での、昼ご飯の外食であるから、基本的にはB級グルメであるが、巷にあふれるグルメ番組とは一線も二線も画していて、秀逸の出来になっていた。

ともあれ主演の松重豊の食べっぷりが素晴らしいのである。

卑しくも下品でもないし、高尚で品が良すぎるでもない。

世間の一通りの食ベルコトをわきまえた、普通の中年男が、昼食は00円以内と決める世知辛さもなく、自分の鼻を利かせて、町場の食堂を探して入り、店の雰囲気を読んで食べ物を注文して、そして実にうまそうに食べるのである。

見ている方が、美味くてよかったね、と思わず言いたくなるのである。

あれが単なる演技だとしたら、人間国宝級の至芸だろう。

セリフもいい。「なんかいいなあ」、「こうゆうの結構好きなんだよなあ」とつぶやきながら、モリモリと食べ,ご飯のおかわりをする。

グルメ番組のタレントのお決まりボキャの「おいしい?!」、「やわらかい?!」、「甘い?!」、「ジューシー?!」、などとは程遠い。顔の表情、所作でその料理の美味さ、店の満足度が伝わってくるのである。

番組の終わりに、原作者がその店を再訪して薀蓄を語る構成になっているのだが、これが興ざめで、『酒場放浪記』の、最近のタレントずれした吉田類のような演技をして、番組の価値、品格を下げている。

優れた役者には下手な演出も、余分な構成も不要なのである。

“人生を肯定的に生きるのも悪くはないなあ”、という気にさせてくれた好番組であった。

最後にNHKEテレの『100分de名著、幸福論について』も見た

文学、経済、哲学、心理学の4分野の識者が推薦書を挙げ25分づつコメントを語る構成になっていたが、NHKらしからぬ人選で楽しめた。こんな良い番組が何年も前からあったとは露知らず、なんだか損をした気になった。

テレビを何時間も見て、無駄に時間を使ったと、いつもなら自己嫌悪になるところを、“なんか、テレビも悪くないなあ”と思えた今年のお正月でした。

さて、これがどんな一年の始まりを意味するかなんて、、、

どうでもいいではないですか。人生、なるようにしかなりませんって。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

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