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畏友イエス・ジョージという男

イエス・ジョージという美容室が紀尾井町にある。

店構えが、粋で素敵である。美容室というか、趣味の良い、高尚な人達のクラブ、サロンの雰囲気である。

何の縁で行くようになったかは忘れたが、自分には不釣り合いと思いながらも、もう10年以上は通っている。

無論、散髪に行くのだが、主たる目的は情報収集に行くのである。
グルメ、お洒落の最近の動向から、色々と分からないことの教えを乞うのである。

森羅万象、何を聞いても、必ず答えが返ってくる。例え、ファイナルアンサーではないにしろ、何かのとっかかりは必ずくれる。ほんとうに僕の打ち出のコズチであり、スーパーマンである。

もう一つの目的は、アフターファイヴの飲み会である。お店が終わると、そぞろ、アルコールが出てきて、宴会がはじまるのである。
 美酒美食つき美容室は、おいそれとあるはずもなく、貴重で代え難いのである。この上、美女がつけば、住み込んでしまいそうである。

エントランス

エントランス

ウエイティングコーナー

ウエイティングコーナー

客席を臨む

客席を臨む

 しかし、実は、彼のプロフィールは、正確には多くは知らない。今までの会話の端々からうかがえるエピソードを繋ぎ合わせると、大体こんな人物らしい。

年は僕の2個位下で、60代半ばか。(一度彼の自宅に行ったことがあり、ご両親の写真を拝見したことがあったが、)どちらかがアメリカ人であり、いわゆるハーフである。
若くして美容業界のカリスマになり、大いに一世を風靡したらしい。表参道、ロスアンジェルスとかハワイにも美容室を構え、当時はロールスロイスコーニッシュ、メルセデスSL、ミニクーパーなどを並べて乗り回し、表参道のビルの最上階をペントハウスのゲストハウスにしていて、華やかな交友関係を築き、随分派手に遊んだらしい。
 特に女性関係は僕には想像もできないような華麗な遍歴であったようだ。要するに持てに持てたのだ。
あの気配り、頭の回転の良さ、センスの良さ、ショーンコネリーばりの容貌、それに金回りがいいと来て持てない筈はないのである。今は往年のパワーは無いと言っているが、華やかな女性関係は衰える気配はない様だ。

以上のようなことは、自慢げに話すことは決してなく、ちょっと思い出したかのようにさりげなく話す中から漏れ伝わってくるのである。

 要するに、男の本懐をとげたというか、男が嫉妬心を抱いてしまうほどに男の敵のような奴なのだが、何処か人が良く、常に人が傷つかないように気配りができるので、一緒にいても居心地がよく、誰もが愛してしまう性格なのである。

ベントレーでヤンジ―二人

ベントレーでヤンジ―二人

 友人の少ない僕にとっては、なおさら貴重な、友人の一人なのである。

7,8年前に美容室のスタッフ全員共々お招きして我が家でホームパーティをしたことがある。
ボスは来宅時には、既に一杯ひっかけており半酩酊状態であったのだが、到着するや、自分で朝、築地で仕入れてきた大きな鮑をさばいて、バターソテーを作ってくれたのである。それもバターはエシレを持参するという気遣いなのである。

鮑をさばく

鮑をさばく

鮑のバター焼き

鮑のバター焼き

前菜バーニャカウダ

前菜バーニャカウダ

主催鯛の塩釜

主催鯛の塩釜

ボスはダウン。年波には勝てぬ。

ボスはダウン。年波には勝てぬ。

 熱海の伊豆山に「伊豆花」というローストビーフのお店を持っていて(現在は息子氏夫婦が経営しているが)、私も時々行くのだが、ここのセンスも抜群に良い。紀尾井町の美容室のセンスの良さにも、いつも感心するのだが、伊豆花はロケーションもインテリアも、無論、味も3つ星である。

伊豆花のテラス席

伊豆花のテラス席

テラスからの眺望

テラスからの眺望

しかし、こんな男にも弱点はあるのである。
周りに一人でも女性がいると、決して女性にまつわる話は出来ないのである。
どんな見知らぬ女性でも、何処で誰とつながっているかもしれず、まずい話に発展しかねないからである。僕のような凡庸な交友関係の人間には想像の域を超えた話であるが、それくらい気を遣って生きていないといけないように仕向けた過去があるということなのであろう。

最後にビジネスの話をしよう。

ヘアカット、シャンプーの料金であるが、僕のように、有効耕作面積の少ない者も、家人のように、前頭葉の所在場所が不明なほど髪が密生している者も、同一料金というのはチト納得がいかない。
僕は1時間もかからないで終わるのに対し、家人は3時間は優にかかるのである。

ま、我が家の場合は、トータルでバランスがとれているからいいが。不満に思う親父もいるのではないか。(男性客も意外に多い。)

まあ、そんな御仁はイエス・ジョージにはお出ましにはならないとは思いますが。

そういえば、前の勤務先精神病院では、美容師の患者がいて、イエスジョージの名前は知っていて、僕に言ったものだ。『先生の頭ならそこらの床屋に行っても同じだよ。バリカンで坊主にしてもらえばいいんだよ。ジョージさんの所ではもったいないよ。』と。

そんな根性だから、一方は往年のカリリスの余波で、いまだに美女に囲まれ、立派に現役で羽ばたいているのに反して、片方は精神病院の僕のようなヤンジー医者相手に御卓並べているんだよねえ。(患者には決してそうは言ってませんが。)

ジョージ氏は常に後方に。?頭が大きいせい?

ジョージ氏は常に後方に。?頭が大きいせい?

 

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