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岡田美術館-箱根の新名所になった日本美術館で琳派展

琳派展パンフ

琳派展パンフ

尾形光琳、雪松群禽図屏風

尾形光琳、雪松群禽図屏風

岡田美術館は、2013年に箱根の小湧園の隣に創業したが、今年の春に、長年行方知らずであった喜多川歌麿の「深川の雪」を所蔵していることで一気に有名になった。国立の美術館が所有するべき国宝級のものを新設の個人美術館が所有していたことで、ちょっと不自然な感じを持った人も多いと思う。そこまで競り勝つ岡田美術館の創設者はいったい何者かと。

 一般に美術館は東京や京都にある国立系か、県立や市立の自治体系なものが当然ながら圧倒的に多いのだが、民間系では、昔の殿様の末裔が運営する徳川美術館や熊本細川家の永青文庫などがあり、旧財閥系では三井美術館や、いくつかの三菱美術館などがある。企業の名前を冠したものでは出光美術館、サントリー美術館、メルシャン美術館、セゾン現代美術館、山種美術館、ベネッセアートサイト直島、ポーラ美術館、などがある。また企業と言うより、事業家個人の色合いがより濃いものでは、民芸のクラボウの大原美術館、古代美術の東武鉄道の根津美術館、東急の五島美術館、日本美術と庭園で有名な足立美術館、ガラスのガレを集めた諏訪の北澤美術館、浮世絵の原宿の太田美術館、現代美術の御殿山の原美術館、人間画に限定した伊豆高原の池田20世紀美術館、などがある。熱海のMOA美術館も、この岡田美術館もこのカテゴリーに入るのだろう。

 岡田美術館の開設者は岡田和生氏といい、ユニバーサルエンターテイメントと言うパチンコ製造会社を主体とする企業のオーナーで、巷間パチンコ王と言われ、日本の高額所得者1位になったりフォーブスの世界の富豪50名にランキングされたりした日本を代表する資産家ということである。
 多くの億単位の名画名品をコレクションするくらいだから、その財力も桁違いなのだろうが、明治から戦前にはそれでも個人コレクターが全国に割拠していたのだが、近年ではそのような人物は少なく、数年前に箱根の開花亭跡に中国、日本美術の巨大美術館ができるというニュースは驚きをもって伝えられ、寂れつつあった箱根小涌谷の新しい観光資源としても大いに期待もされたものであった。
 開設後わずか半年で、まずは歌麿の「深川の雪」で注目を集め全国区になったが、元々、収集品のレベルの高さでも注目されていた。又建物の真正面の外側にドデカイ風神雷神図があることでも耳目を集めていた。

風神雷神図

風神雷神図

風神雷神図

風神雷神図

 風神雷神図はある意味では琳派の象徴的存在でもある。琳派は狩野派のような流派一門の派閥ではなく、同じ画風を良しとする者達が、先人たちの残した画風を模倣しては継承して来たもので、そこには世襲制も師弟関係もない。俵屋宗達の風神雷神図を尾形光琳が100年後に模倣しながらも独自の世界で描き、それをまた100年後に酒井抱一が、さらに数百年を経て現代の福井紅太郎が描いて見せたのがこの風神雷神図である。

 岡田美術館の風神雷神図は、大きすぎて館内で見ると仰ぐばかりで、一幅の絵画として鑑賞することは出来ず、館外からではガラスが反射してはっきりとは見えない。これらのことは設置前から十分予測できた事であろうから、すると、これはただのモニュメントとして、こけおどしの為の看板として描かれ置かれたものに過ぎないのだろうか?
この辺りに岡田美術館の思惑が透けて見えるようでもある。純粋に福井紅太郎の絵画の美術性を愛でるという目的よりも、その大きさで圧倒させようという実業家、岡田氏の商業的野心が見えるのである。

足湯

足湯

足湯

足湯

 それは他にもある。
 館内への入り口では、空港並みの荷物、ボディチェックを受けるが、その目的が、館内の監視員を省くためであろうと察する時、あるいは、名物の足湯では、入湯料500円(入館料には含まれる)にも拘らず、貸しタオル一つなく、一本330円で販売されていることなど体験すると、例えば根津美術館などでは決して感じることのない、そぐわなさ、違和感を感じとるのである。

風化亭

風化亭

庭園入口

庭園入口

 スマホ、デジカメの類は1階の入り口でロッカーに保管させられるので、5階から庭に出てしまうと、屋外での一切の写真も撮れないのである。ここらに至ると美術館のご都合主義が露骨に垣間見えて、少々不愉快になるのは私だけではあるまい。

 館内は非常に暗く、足元が不安になるほどであるが、これが何を目的にしているかは分からないし、館内の案内が不十分で、美術館の全体像が把握しずらく、終日出入り自由といえども、しばらくは戸惑うのである。
ただ、展示の解説ボードはビジュアル的で親切であり、また学芸員の説明も丁寧で好感が持てた。
当日は尾形乾山の焼き物の解説であったが、兄光琳との話にはリアリティがあり勉強にもなった。乾山の需要文化財になった、二つの「透かし彫り反鉢」も、解説の後ではさらに見ごたえが増したのである。

展示場の常設作品も古代の東洋陶器から、中・近世の日本陶磁器、浮世絵、書、琳派の大屏風など圧倒する品揃えである。これだけのものを僅か数十年で収集した岡田氏の美術に関する見識造詣も凄いし、審美眼も凄いと思う。
 大原美術館のように、オーナーの意を受けたアドバイザーやバイヤーが実際には買い集めたのではなく、本人の目利きですべて集めたとすれば、岡田氏は若い頃から財力だけではなく、美術にも相当な研鑽をつまれ見聞、見識、造詣を深めて来たに違いない。その努力は、他の有名個人美術館の誰にも決して負けないものであったに違いないと思うのである。

 広大な敷地に、美しい庭と足湯と言う箱根ならではのサービスがあり、何よりも見ごたえのある美術品が多数揃っており、わが国の一級の美術館であることに何の異論はないが、官公立並みにとは言わないが、入館料(2800円)がいかんせん高すぎると思う。
 食事処のサービスの改善と入館料の改正を是非お願いしたいところである。

お土産のチョコレート

お土産のチョコレート

チョコレートも光琳

チョコレートも光琳

モチーフとなった菊図屏風

モチーフとなった菊図屏風

 

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