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正月はテレビ三昧ー私の番組講評

 皆様、新年明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて、今年のCASA=AFも、恒例となった「正月のテレビ番組」の感想から始めたいと思います。
 以下は、チャンネルをカシャカシャ動かして目に留まったものである。

 *NHK;「ブラタモリ」と「鶴瓶の家族に乾杯」のジョイント番組
 NHKの人気番組である「ブラタモリ」と「鶴瓶の家族に乾杯」をジョイントさせて、そこに今年の大河ドラマ「真田丸」の主人公役の堺雅人を出演させて、大河ドラマの宣伝をはかろうという、NHKには何とも欲張りな番組であったが、やはりこの二人にかかっては、その座持ちの良さや、やり取りの巧妙さに気が取られ、面白くて長時間にも拘らず思わず見てしまった。NHKの思惑にまんまとはまったのである。

 タモリも鶴瓶もデビュー当時は、強烈な下品さが売り物で、二人とも今の番組を持つまではNHKには出入り禁止であったと当人が言っていたが、いざ始めてみると、「家族に乾杯」では、鶴瓶の人柄と間の良いトークが受けて今やNHKの看板番組となっている。小生も日頃、機会があれば、ほとんど見るようにしている。
 「ブラタモリ」は、街歩きの新しい手法を教えて視聴者の興味を引きながらも、タモリのセンス、勘の良さとに支えられて成り立っている番組であるが、多分予想外に人気が出て、長寿番組になったものと思われる。
 街には、知らなければ何でもなく通り過ぎてしまうような所に、地質学的な、あるいは歴史上の色々な痕跡があふれていることを教えてくれ、一か所をブラブラ歩く楽しみ方を教えてくれていて、心が和むのである。
 私達は日頃、余りにせわしく、広く多くのものを観ようとして、結局何も知らず、表層しか見ていないことに気付くのである。それにタモリの教養の深さが随所に滲み出ていて驚くのである。
 同じように人気と評価の高い「たけし」と違ってタモリのすごいところは、一人で番組を引っ張っていける能力があることである。たけしは、多くの番組の司会をしているが、進行役は別に必ずいて、たけしは合の手を入れ盛り上げる役回りであるが、タモリは一人で番組を進行させる力がある。出身が漫才か、一人芸人かの違いもあろうが、根本は教養、知性の差であるような気がしてならない。
 鶴瓶もタモリも、デビュー時と現在の落差の大きさは、二人が成長したのか成熟したのかは知らないが、元々の才能能力はさほど変わらないものだろうから、大いなる才能を有しながらも、芸能界で一定水準に売れるまでは、わざと自分の得意とする路線を変えて角を隠していたのだろう。我々は今になって、ようやくそれに気付かされたのである。

*NHKBS;グレイトトラバース,日本100名山一筆書き踏破
 田中陽希というプロアドベンチャーレーサーが、登山家で随筆家の深田久弥の著書「日本100名山」に載った山々を、人力で一筆書きにルートをとって踏破するという旅の行程をドキュメンタリー風に記録して、2014年に漸次放送したものの一挙に再放送したものであった。地域別に5編からなる全旅程を、正月の2日、3日に渡って、断続的に放送した長時間番組であったが面白くてほとんどを見た。

 山に少しでも興味のある人なら、深田久弥の名著は知っていて、日本の100名山は登山選びの指標にもなっている。

 田中陽希は、南は屋久島の宮之浦岳から北は利尻島の利尻岳までを一筆書きのように連続して、移動距離7800キロメートル,累積標高差10万メートルに及ぶところを陸地は歩いて、湖や海はカヤックを漕いで、人力で208日で踏破したのである。

 田中陽希という、全身が筋肉というバネで出来たような30歳くらいの青年が、ひたすら歩き、登って見せるのである。それもガイドブックの2,3倍のスピードで行くのである。
 イケメンとは程遠いが、色んな場面で朴訥で誠実な人柄が滲み出て、旅が進むに従ってフアンが増えて人気者になって行き、いたる所でフアンの待ち受けを受けうようになり、本人が戸惑う姿も初々しく、また人に接する時の行儀の良さも好ましいし、番組の中で日記の形で本人の心情が吐露されるのも清々しかった。
 時には感極まって本人も涙を流すことがあるが、それを観ている方も思わず涙ぐむという、小生には感動の大きな一編であった。

それにしても、この番組を制作した撮影クルーの力も並み大抵なものではあるまい。どのようにして、この超人に伴走して撮影し記録し続けたのであろうか?上空からの映像はドローンなのだろうか?
 今度はその撮影の様子をドキュメンタリーで是非見たいものである。

 数年前からのNHKの夕方の放送であるが、視聴者の手紙のリクエストによって故郷の思い出の場所を自転車で訪れる、火野正平の「心旅」というNHKの人気番組があるが、これはいけていないと思う。
 こちらはノンフィクションドラマだと言ってしまえば、それまでだが、火野正平が自転車で旅をするというのが売りなのに、どう見ても本当に自転車で走破しているとは思えないのである。走っているのは平らか下りの道ばかりで、第一、汗はかかないし、たまの息切れするシーンも演出っぽくて不自然過ぎるのである。それに主役のタレントの性格の推測するからにして、真面目に走るとはハナから思えないのであるが、手紙を読むシーンには長けているから再放送が繰り返される人気番組になっている。
 多くの視聴者は、彼が本当に自力で走っていると思っているのだろうか?

 読者のリクエストに沿って故郷自慢の場所を訪ねるという、「三宅祐司のふるさと探訪~こだわりの田舎自慢」という民放番組もあるが、最近はこの手が流行のようである。
 こちらは、二番煎じとはいえ三宅祐司のキャラクターで好番組になっていて、小生もフアンの一人である。

*テレビ朝日;ラグビー全国大学選手権準決勝
 東海大と明治大、帝京大と大東大の準決勝戦が秩父宮ラグビー場から実況中継された。

ワールドカップでの日本チームの大活躍で一気に人気が回復したラグビーであるが、80年代は、秩父宮ラグビー場のある外苑前は晴れ着姿の御嬢さんたちで溢れるのが恒例の正月風景でもあったように、松尾や平尾などのスター選手がいて結構人気があったものだ。
 それが1995年の第3回ワールドカップで日本チームが屈辱的な歴史に残る記録的な惨敗をきしてから人気も急降下したが、昨年の五郎丸選手を始めとする日本チームの大活躍で人気も再び急上昇したのである。
 スポーツはやはり、勝たねばならないし、女子のフアンを増やすにはイケメンが必要であることはすべからく歴史の教えるところである。

 ラグビーはルールがややこしく、競技性を楽しむには少し難があるが、ただ見る分でも十分に面白い。基本的には足の速いレスラーを集団で闘わせる様なものであり、そこにボールを介在させて、球技スポーツらしく仕立てていると思えばその本質が良くわかろうというものだ。基本が格闘技であるから、見ている方は血湧き肉躍るのである。

 ローマ時代のコロシアムの格闘技を現代風にしたのがラグビーであり、アメリカンフットボールであると小生は勝手に理解している。

*テレビ東京;「孤独のグルメお正月スペッシャル」
 ここ数年は毎年、正月休みに、「孤独のグルメを」を見るのを楽しみにしていたが、年々、徐々に芝居がかるようになり、今年は、それも限界に来たようで興ざめであった。この番組も、主人公の松重豊も人気が出て、有名になり過ぎたのであろうか。初心忘るるべからずである

*BS1スペッシャル「もう一つのショパンコンクール」
 5年に一度、ショパンの生地であるワルシャワで開催されるピアニストのコンクールで活躍するピアノメーカーの調律師たちの話である。

何ごとも華やかな陽なたの陰にはそれを支える裏方がいるのである。
 コンクールではピアニスト達は使用するピアノを、4つのメーカーのピアノを試しに弾いて選択出来るのだが、ピアノメーカーは自社のピアノをピアニストに選択してもらい、更にはそれを弾いて優勝してもらうのが、今後の社運を賭けた大命題となる為、社を代表する調律師を陣頭に夜を徹してピアノを調律し、また物心両面でピアニストを支援するのである。
 アメリカのスタインウェイ、イタリアのファツオリ、日本のヤマハとカワイの4社の調律師たちのつばぜり合いと、心理的葛藤を、コンクールの20日間のドキュメンタリーに描いていて、シナリオはテンポも良く臨場感もあってなかなかよく出来ていた。
 音楽に疎い小生は、調律師という職業もろくに知らなかったが、絶対音感に長けた天性の才に恵まれたごく一部の人達だけが出来る職業であると思う。それでも彼等には彼等の世界で熾烈な戦いがあり、小生などの住む凡俗の世界と、結局は大差ないことだけは理解できた。

 

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