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今年も寝正月―年末年始のテレビ鑑賞

明けましておめでとうございます。
皆さまには、良い新年をお迎えのことと存じます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。

 さて、小生は今年も世のオヤジに倣って、年末年始はテレビの前で寝て過ごしました。
昨年の暮れは妙にテレビが充実していて、釘づけに近い状態になったが、今年は番組が単発で、しかもおざなりなものが多く、見るべきものが少なかったように思う。
印象に残ったのは3,4個であった。

 31日の昼間にBSジャパンで放送した「孤独のグルメ-season3」を見た。
この番組は丁度一年前の暮れに見つけて、感動したことは一年前のブログでも書いたが(CASA-AF:2014.01.06)、その後は通常の放送で見ることもなく一年がたち、また特番で12話を全部見ることになった。
昨年との違いは、あからさまに芝居がかった演出が多くなり、お店の人や客の演技が不自然で目障りで、興ざめになったことか。視聴率が上がり、演出家が視聴者を意識しすぎるようになったのかもしれない。
それと、原作者の久住昌之が相変わらず最後に登場するのは余分であったと思う。

1日BS朝日の「ザ・インタビュー」という番組は中々面白かった。インタビュアーとの組み合わせも良く、人物像が良く引き出されており、興味深く見ることが出来た。
井上陽水には吉永みち子がフランクに突っ込みを入れ、陽水がこれまた受け流すように自分のスタイルを崩さず答えていた。小椋佳には野際陽子で、小椋の作詞の裏話が語られ、彼の計算的で理詰で理性的な姿勢が、陽水とは対照的で面白かった。小椋が生前葬コンサートの後の今後も一所懸命音楽活動をしようものなら、“大変ですね、ご苦労さん”と言いあの薄ら笑いが目に浮かぶようであった。スタイルはどうであれ、二人とも社会的に成功した人の余裕が垣間見え、同世代の僕には味わえない心境であるようにも思えた。

 1日のNHKスペッシャル[戦後70年を迎えて]では、全般にタモリのトークが光り、彼の教養、知性の深さが垣間見えた番組となっていた。
タモリは、今や資本主義は行きづまっているが、それに代わる新しい資本主義は日本から生まれるのではないかと期待を述べていた。
 NHKBSプレミアムの映画『グリーンマイル』は死刑囚をめぐるヒューマンな超能力の話でとても面白かった。トムハンクスはやはり名優であった。

 1日深夜にNHKEテレ「日本のジレンマ元日SP大転換2015・40才以上は入場禁止?」をみた。30代までの政治学者、経済学者、起業家、作家、サラリーマン、OLなどのパネリストを200名のフロアーオーディエンスが囲む大討論会であった。
 年齢的には入場禁止であったが、今時の若者の知性に興味があり、夜更かしをして見た。
 政治経済の話が中心で(科学者がいなかったこともあろうが)、今話題のピケティの「21世紀の資本」と水野和夫の「資本主義の終焉」を話題に、資本主義の在り方について多くの発言があった。新資本主義では行き詰ること、ケインズの修正資本主義に倣い一定の政治介入の必要性や、性善説の資本主義など意外な発言が相次いだが、僕が感じたことは以下のようなことであった。
 皆一様に自分の意見はきちんと伝えるが、ⅰ)議論は決して白熱化しないことである。あの「朝まで生テレビ」で見せる昔の大人たちの興奮ぶりとは対称的なのである。今時のヤングアダルトは、大人といえば大人の振る舞いであるが、これ以上討論して論破しても意味が無い、自分も意見は変えないだろうから、相手も決して考え方を変えないだろう、というような醒めた達観があるかのようにも見えた。相手を傷つけまいとする今時の優しさから来る面もあるのかもしれないが、、。
 ⅱ)現実と思想の乖離に無頓着である、ということ。彼らは新資本主義の言うトリクルダウンを信じていないし、格差が行き過ぎていることも理解している。にも関わらず、選挙にも行かず、バリバリの新資本主義の安倍政権を許して看過している。まずいと感じていながら、何ら行動しようとしないのである。歴史の流れに乗り遅れないようにはするが、流れを自らの手で変えようとする気概は全く感じられないのである。

 最後に、4日の深夜NHKBSプレミアムで「木の上の軍隊」を見た。去年の春にbunkamuraシアターコクーンで上演され評判をとった芝居である。井上ひさしの遺作になった戯曲を蓬莱竜太が脚本にして栗山民也が演出したこまつ座のお芝居である。出演は藤原竜也、山西惇、片平なぎさの3人で、舞台はワンセットという簡素なものであったが、息もつかせないような緊張感で2時間はあっという間に過ぎた。
 太平洋戦争の最後の局地戦となった沖縄のとある島で、米軍に追われてガジュマロの大木の上に逃げ込んだ本土から転戦してきた上等兵と、沖縄出身の志願兵である新兵の2人が、終戦をはさんで2年間もの間、木の上で隠れ住んだという実話に基づいて書かれたものである。
井上流に笑いを取りながら、国家とは、故郷とは、人間とは何かを鋭く問いかけて来る。まさに井上流に、易しく深く、面白く、生真面目に問うのである。

そんなカンやで、正月はうたたかの間にすぎ、また、今年も始まってしまいました。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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