どこで知ったのか定かでは無いがOMAKASEで予約日が来たので,あいにくの秋雨模様の中を出かけた。麻布通りに面した古川橋近くの、新しいビルの3階にあった.有名な食べ物屋が入っている建物だが,利行の名前は無く,戸惑いつつも住所にあっ3階に向かった。マンション風のドアは施錠されており,インターフォンも無い.よく見ると,時間になったら開けるから,しばらくまたれよ、と小さな張り紙がしてあった.えっ、また、これかよ!と幸先が悪いと安じて相棒の到着を待つ間もなく,ドアが開けられ中に入ることが出来た.ほんのりとトーンを落とした空間は和の設えであるが,日本料理店とも鮨屋とも違う.うまく言えないが,奥が深いセンスの良さがある.昨今ありがちなおしゃれな和空間とも違う.焼き鳥屋であることを土壁が表しているのかもしれないが,単純な聚楽壁ではなく,も少し粗野だがヤボでは無い.なんという名のついた壁土だろうか、今度来た時には聞いてみよう.東京の和の空間デザイナーはおそらく限られているから,最近の和食屋はいくつかの似たようなパターンに分かれてしまうが,利行はとても個性的である.一つ記憶にあるのは,青山の宮坂の黒壁の設えの系統か。
利行は薪を使うというから竈門があれば壁がマッチするな。大将とソムリエ兼料理人の二人で切り盛りしているが,救いは二人とも平凡な白衣を着ていて,変にかしこまっていないことであり、これで袴襷掛けでは,こちらがめげてしまうだろう。所作は無駄がなく爽やかであるが,お二人とも体型は爽やかとは行けていないようで,フレンチの三国シェフを思わせる風貌である。
さてさて,前置きが長すぎるのが私の欠点であるが,食事はただ食べるだけの経験では無いと思うからで,平に免じていただきたい。
焼き鳥の,鶏の種類やその部位、他の食材の細かいスペックを取材したかのように語るー趣味は私には無いので,詳しいことは他の方の口コミを参考にされて欲しい。焼き鳥を始め全ての料理は,とても洗練られていて見事である。最後の締めの蕎麦も,島田の薮宮本に劣らずの出来で驚いたことを言い忘れてはならないだろう。
寿司が屋台のファストフードから,現在の形態まで進歩して来たように、焼き鳥という食べ物を究極に昇華したのが現在の利行の焼き鳥の形では無いかと思う。
食材の選び方,下ごしらえから調理の仕方,サービスの仕方まで,その心意気に手抜きは無い.したがって器もよく洗練されている.持って帰りたくなるようなものばかりであった.古唐津,古伊万里、古九谷がふんだんに使われ,デザートはアンティークバカラのシャンパングラスであった.一つ色彩鮮やかなシノア風の皿が気になったが,オタクぽくなるのも嫌で聞くのを諦めた。
食べることに関わるいろんなことが好きな方にはこれ以上の焼鳥屋さんを見つけることは不可能だろうと思う。もちろん焼鳥単体だけでも極上品であるから,お訪ねになって満足されることは保証できる。私のギァランティーなど何の意味も無いけどね。



















