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グルマンライフ

南青山エッセンス「年月を経て3種の珍味にありついたぞ」

 またしてもサントリーホールのコンサートの後のディナーで訪問した。ラストオーダーが22:00というのも嬉しい。 
 個室を初めて利用したので,何かと気が楽ではあったが,まるで隠し部屋に4人が潜むというのが相応しい大きさで少し落胆した。中華の個室というものは,広くて真ん中に大きな丸いテーブルが鎮座しているものと、昭和の人間は刷り込まれているが,思えば最近はテーブルにナイフフォークで銘々に取り分けられて提供されるフレンチスタイルは珍しいことではなくなっている。丸い真ん中が廻るテーブルなど今や中華街にでも行かないとお目にかかれないかもしれない。私の経験ではフレンチスタイルの最初は青山のダイニーズテーブルであったように思う。隠れ家的な地下の暗めの照明でインテリア,カトラリーがオシャレで新しもの好きな洒落者達に人気であった。おそらく伝説のイタリアン、飯倉のキャンティの中華版であったと思われるが、特段味が優れていたわけでもないので,フレンチスタイルが当たり前になった今はどうなったんだろうな。あの根津美術館前の通りもすっかり様変わりしてしまい、昔からあるのはブルーノートくらいではなかろうか。イタリアンモダン家具のB&Bやジルサンダーの旗艦店があったことを懐かしむのは歳をとった証かもしれないな。
 さて料理であるが,フカヒレ姿煮、あわび、ツバメの巣の文言の誘惑に負けて高い方のコースを奢ってみた。飲み物は,アルコール制限のある身ではビールを飲むことが増えたが、良い店には最近は一般には手に入らない特別なビールが置いてあることが多い。麦芽に拘った無濾過の生ビール、所謂ホワイトビールが流行ってきた.和食にも洋食にもどんな料理でも食中酒として合うビールが作られるようになったというわけで、これはビール好きには嬉しいことでありますね。先には鮨屋、和食屋でインディーズ系のロココビールを経験し、柑橘系の香りがして喉越しもスッキリととても気に入ったものだ。エッセンスにはサッポロの白穂の香があり、これもとても良かった。すかさず2杯空けて,次は迷った末にグラスの紹興酒にした.アルコールは種類を問わず3杯までと主治医に内緒で勝手に決めているからである。
 アミューズは牛筋の煮込みであったが,これにはバゲットがよく合うもので、森下の居酒屋山利喜では昔から置いてあったが,さすがにエッセンスには置いてなかった。前菜はいつものようにクラゲ,シャコ、タコ,サーモンなど凝ったものが六種で、これらは廻るテーブルのミニサイズのお皿に乗せられていた。フカヒレは金華ハムの上湯スープでとても上品なコクのある味わいは流石で,魚料理は甘鯛のポアレで麹町のビストロ、オープロバンソーのによく似ているが,焼津サスエ前田の魚だから特別にうまく感じた。ツバメの巣のスープの燕の巣は衣笠ダケとズワイガニに埋もれて確認出来ないほどであったが、同伴者の皿に運良く個体を確認出来たので半分っこした.実に台湾でタピオカと一緒のデザートで食べて以来,10年ぶり以上の僥倖であった。薬膳スープは朝鮮人参の恩恵か,飲む先から身体が熱ってきた。鮑は蒸し鮑の万願寺のピリ辛味で、これは正直アワビが惜しいと思った.肉料理はブランド牛の足利マール牛との説明を受けたが、ワインの葡萄の香りまではわからなかったが,もも肉にしては柔らかいのは焼き方が上手いのだろうが,このまんまステーキを中華というのは,僅かにソースの違いだけだろうな。食事は舞茸ご飯に麻婆豆腐で,これがベストマッチ。デザートは3種で,ココナッツ饅頭が変わらず美味い。
 料理のジャンルが,どんどんボーダーレスになって来ているが,カテゴリーにこだわる方が寧ろおかしいというものだだろう。森羅万象何事も不確定でスペクトラム状であることは量子論が教えるところでもあるし、われわれは何も考えずに、コンサートの余韻に任せて,ただ美味い美味いと食べるのが正解のようだった。

蕎麦 たじま「コスパ優勝ー地元住民にはご利益だな」

たじまは麻布高校の近隣に位置するが、タクシーに告げるナビの住所表示が西麻布3丁目とは意外に思ったが,考えてみれば昔,霞町と呼ばれていた交差点が西麻布に変わったのだから,この辺りも西麻布でなんの不思議もないのかもしれないが,旧町名を懐かしむ人には残念であろうと思う.1960年代を通して住所表示法が施行され,東京の歴史的な町名は大きく統合されて0丁目0番地0号と表示されるようになった.しかし一部の地域は日本橋蛎殻町張、神楽坂町、神田鍛冶町,紀尾井町、番町などのように旧住所が温存され,それ等の多くは今でも丁目は無い。その差は,歴史的価値の違いとも言われるが,実際には,その地域に住む有力者の政治力の差であったようだ。住民の反対する強い意思表示と,それを支援する有力者がいれば行政はいくらでも例外を認めたようであり、JRの駅や橋をかける場所を決めるのと同じようなものであろう。麻布地区では政府の要人であった木内信胤,ブリヂストンの石橋正二郎,脚本家の松山善三(高嶺秀子の夫)等が住んでいて、反対を主導して麻布狸穴町、麻布永坂町を東麻布から独立させた。永坂町はともあれ,私の住む狸穴町は急な坂に狸がいたとされる極めて庶民臭い町であり、なぜ温存されたか,その理由が今だによくわからない.当たり前だが、住所というのは境界があり、その辺りは生活文化圏は同じでも行政の区割りが別で意外に思うことがある。 
 たじまの最寄り駅の広尾駅は南麻布5丁目であり、地の利は決して良くないが,連日満席で予約は取りにくい。その人気は行ってみてよく理解できた。蕎麦好きならわかると思うが,料理は関西風の薄味で白金から広尾に移った三合庵に似て,蕎麦は細打ちで喉越しの良い薮系(亭主は京金,利庵で修行しているらしい)で島田の薮宮本に近く,料金は麻布十番の川上庵に似てハイコスパである。つまり文句のつけようがないのてある。ツユは濃い辛口系で,蕎麦によく合っている。そばがきの柔らかさは絶妙で,蕎麦湯の濃さも丁度良い。酒揃いも高級路線ではなく三千盛,大信州と私好みであった。個人的には蕎麦にもう少し腰があれば言うことは無く、さすれば遠く島田まで足を運ぶ必要がなくなると言うものだ。それに料理のスピード感、間が実に素晴らしい。スタッフの動きが良いのも主人の力量の内であろう。敢えて難点を探せは,店の設えかな。も少しテーブルに余裕が有り、出入り口との間にスペースがあれば,もっとリラックスして楽しめるだろう.しかし路面店で一階に位置するだけでも,年寄りにはそれ等を補って余りあるので,文句を言わず通い続けたいと思う。

みつい「鮨に子供連れは,やはり無理かな」

前回個室を使って,子供(孫、小3)連れでも十分楽しめたので,2ヶ月のインターバルで再訪したが,今回は少し様子が変わり,やはり鮨屋の個室は具合が悪いなと実感したので報告しようと思う。
 久しぶりのジジ、ババ,嫁,孫の4人だから,話は退屈しないはずなのに、鮨の間隔の間が抜けて,最後は子供が寝てしまうのは,流石に後悔した.前回は,開店早々で時間も早かったせいもあり,先客がおらず,親方は個室の板場に付きっきりで世話をしてくれたので,孫も電光雪花のスピードで鮪のお代わりをして16貫も食べたが,今回は遊び疲れもあったのか、鮨屋で初めてお代わりもせずににご馳走様になった。やはり料理というものは,お皿の間隔のタイミングがとても大事であり,変に間延びしても,早過ぎでも,うまく味わうことが出来ないものである。もちろん食べ手の事情もあるだろうが、まずは料理には料理の間があり、それを上手く図るのも料理人の能力の一つであろうな。フレンチにはフレンチの,中華には中華の,天ぷらには天ぷらの料理を食べ続けるタイミングというものがあろう。昔,勢いのある二つ星のフレンチで,シェフが鋭い眼差しで全てのテーブルを目を光らせて,料理を出すタイミングを指示しているのを目の当たりにして,料理人の真髄を見た思いになったことがある.同じような風景をやはり天才シェフと言われた店でも経験した。先を読む力,気遣い出来ることは、料理に限らずとても大切な人間力ではないかと思う。
みついは,三度目であり,最初はホームランと評価し、2回目は個室の良さを褒めたが,それはカウンター席が空いていての話であった。どんなに目のきく親方でも,一人ではカウンター9席が限界であろう。鮨で間が持てるのはライブ感があるからであり,閉ざされた空間では間が持てないのである。個室はやはりスーが育ってからの方が楽ではないかと思う.あるいは利用時間を限定するとか工夫が欲しいところである。
 それはさておき、つまみ,にぎりは文句のない美味さであった。秋刀魚を開いて酢で締めて焼いたものと肝のソースの塩梅の良さ、ホッキ貝と舞茸の海と山の秋の組み合わせの出汁の美味さ,ノドグロにパプリカの取り合わせの斬新さ,スナックエンドウの甘味の取り出し方など,野菜にも拘りがみえる.野菜は飛騨高山のものだそう。にぎりは,いつものように手抜きのない丁寧な仕事がしてあり,ハズレはない。今回は春日鯛と大トロが印象に残った。子供が寝むそうであったが,穴子まで行けて良かった。カンピョウまでは行けなくてこころが少し残ったが,それはまた次回ということにして,やはり大人だけでカウンターに座ろうと思う。

桃仙閣 東京「フカヒレは身は厚いが期待以上でも以下でもなく」

家族4人で3回目の訪問。満を持して今回は看板料理のフカヒレ姿煮を食べた。250gはあり身もひときわ厚く,見応えも食べごたえも十分である.白湯スープはトロトロでコラーゲンたっぷりの滋味深い味わいではあるが,いささか淡白であるのは醤油やオイスターソースの味付けを控えているせいであり、それが当店の自慢であろうが、もう少し濃い味に慣れてしまっている私には少し物足りなく感じたのは、自分のの味覚が未熟なせいなんだろうなと理解した。北京ダックも点心も相変わらず美味いしサービスも良い。今回は初めから個室を予約したが,隣室の子供の泣き声が響きわたる建て付けは完全個室をうたうには少し失望せざるを得ないだろう。
 フカヒレの物足りなさの理由は、昔高樹町の「虎万元」にいた最年少で中国の特級厨師の資格を取って来日した孫成順氏のフカヒレの味が私のスタンダードになっていたせいと思われるが、それを未熟レベルと言ったら,孫さんには大変失礼になってしまうであろう。ま、田舎者が初めてホンモノのフカヒレを食べた時のカルチャーショックが大き過ぎたんだろうね。
 孫さんは,料理人の目利きで有名な際グループの中島武氏に見出されて世に出たが,現在の目利きの筆頭は間違い無く桃仙閣の林亮治氏であろうと思う。あとで知ったことだか、三つ星の高級中華茶禅華,今年3星に昇格した和食の明寂もフレンチの白寧も彼のプロデュースという.それに最近Facebookでよく見かけるリゾート施設のat a hotelもそうらしい。その守備範囲の広さには驚愕する。
 地方の老舗事業の跡取りで才能豊かな人物が,大きく羽ばたく様は,星のリゾートに似ていなくもないが、数が増えるとどうしても反復する形になってしまい,どこに行っても同じ空気感の相似形,金太郎飴になりがちなので,コンシューマーとしては、それは避けて欲しいと切に願う。
 ひらまつ亭から始まったひらまつグループはこの道の大先輩であろうが、3者は3様で持続して欲しいと思う.我々が楽しめる食,旅という人生の快楽の空間をこれからも一途に提供し続けて欲しいと願うのは私だけではあるまい、と思うからである。

Atrevío「ハーモンとパエリアをースペインを肌で感じる設えで。」

ハーモンベジョータを売りにしているスペイン料理が麻布十番の六本木よりに開店したので行ってみた。うどんのく0さわがあったあたりである。    

 スペインの私の連想ゲームではドンキホーテ、ダリ,バスク、ピカソ,ゲルニカ,フランコ反乱軍,ヘミングウェイというところであり、共通するのは理想主義,情熱、勇気,反骨というフレーズであろうか。しかし本音を言えば最も思い浮かぶのは檀一雄の檀流クッキングのハーモンセラーノの一節である.学生の頃にあれを読んで以来ハーモンセラーノを食べてみたいと思い続けて来た.そして、いつの間にか生ハムメロンが結婚式の定番メニューになり,イタリア産のプロシュートをおしゃれなスーパーで見かけるようになった.時は経って、今では地方でもどこでも買えるようになった。しかしスペイン産のハーモンセラーノ,特にドングリ生ハムベジョータは遠い存在であったが,伊勢丹の地下食で買えるようになり,ベジョータのイベリコ豚も通販で買えるようになって来た.今や希少性は薄くなって来たとはいえ,日常的にいつでもそれが提供されるレストランはありがたいに決まっている。
 Atrevio,は勇敢,積極性の意味がありスペイン人の国民性を表しているし,お店もスペインタイルで飾られ良い雰囲気を作っている.何よりも料理人の二人のイケメンもタツゥー満載のおしゃべり野郎である.生ハムの原木に語り続けるのでコロナ時代のマスクが恋しく思えたほどである。
 6000円のお決まりコースにしたが,まずは生ハム3種の食べ比べ、ハーモンセラーノ、ハーモンイベリコ、ハーモンベジョータである.セラーノは山岳地帯の白豚,イベリコはイベリコ半島の草原の黒豚,イベリコの中でもドングリを餌にしているのをベジョータと分けているそうで,それはAI検索でもそうなっていた。サラダはやはり地中海沿いはドレッシングが美味い。コロッケはホワイトソースのクリームコロッケで洋食屋より優しく淑やかである。
 パエーリアは,聞いたふうのことをいえば、英語のfor her.つまり彼女のために男が作る料理らしい。外食での経験は少ないがキャンプ料理で作った経験は多少あるが,教科書にした西川治の「悦楽のキャンプ料理」の男の料理とは幾分違い、芯の残った山男たちが言うところのガンタ飯であり、日本人が好きなお焦げにはしない。パスタで言えば,アルデンテの過ぎたものであるが,これがなかなかいける.しかも直箸ならぬスプーンで鍋から直接食べるのが流儀らしい.絆を重んじるラテン系らしいシキタリだな。 
 残念ながらサフランの香りはあまりしなかった。行ったことはないが、スペインのビストロ、タベルナとはここをもう少し居酒屋風にした感じなんだろうな。20代の頃,その名もtabernaという東京で初めてのスペイン料理屋が南青山3丁目に出来、イカの黒墨のパエーリアが名物だった.みんなお歯黒で帰った。懐かしい,秋ですね。

エレゾゲート「シャルキュトリーの魅力と横丁の取り合わせはどうかな?」

マッキー牧元氏が監修したというので,かねてより気にはなっていた虎ノ門横丁に行ってみた。お店は北海道のシャルキュトリーとジビエ食材を扱うエレゾゲートである。正確にはエレゾゲートに行こうとしたら,それが虎ノ門横丁にあったというわけである。従って行く前は,虎ノ門ヒルズに似合うおしゃれ空間を予想していたが,縄のれんの居酒屋風カウンターの店でまず驚いた.
 突き出しのアミューズがコーンポークにこんがりと焼かれたパンであったが美味くて,場違いで拍子抜けした.とりあえずビールのビールがサッポロ琥珀恵比寿の生ビールで,注ぎ方が上手いのでこれまた美味い.本場出来立ての味である。もともとハムやソーセージが好きな私の本命はシャルトキュリーであったが,さすがに大量生産品とは違い味わい深い.パテとソーセージが特に美味い.ハムは薄切りであったので正確には比較できないが,お気に入りの日進の特選ハムと同じ匂いである。これを厚切りにしてビールを飲むのが若い頃からの私の贅沢である。
 余談になるが,麻布の日進のスーパーの駐車場の片隅に出来たスタンドのハムカツサンドはオススメです.10mmはあろうかという日進のハムがカツサンドになっています。涼しくなった今頃はハイネケンとやるのが最高ですね。
 話は戻りエンゾーのお皿は概して質が高い.オヤジあるいはシェフは一端のフレンチの料理人なんだろうな.フロマージュテットというと普通はチーズかと思うが,実際は春巻き風のものであり,フロマージュとはformation形作るという意味だという説明を後で受けたが,これはまず勘違いするのが普通であろうから,メニューに書くべきと思う。豚足が入っているそうでコラーゲンたっぷりで味は合格。意外なことにスープドポアソンがあり、自信作というので食べてみたが,少しクセのある単調な荒い味であったので,どこの魚を使っているかと聞くと、十勝半島の近くのトヨコロ港に上がる鮭のみを濾して作っているという.知らない味なわけだ。メインディッシュは本命エソ鹿のステーキにし,付け合わせにフリット、ポテトフライを頼んだが、ポテトはかなり遅れて来た.おそらく忘れていたのだろうが,店を一人で切り盛りしている限界であろうな.作る,サービス,片付け,会計まで一人ではおよそ無理な相談であるから,オーナー会社はキャスティングに配慮がいるだろう。さて,本命の鹿のステーキは,ステーキというよりローストであり,肉が硬いのには少し驚いた.これは私の主観であり,同伴者は堅くはなかったと言っている。一言で評せば,質の良い輸入牛に近い味わいである.肉を噛む旨さはあるが、それにしてはアゴが疲れすぎである。期待が高まっていただけに少し残念な気分.デザートのミルクプリンは牛乳のうまさが全面にあり,未経験の味であり、とても良かった。
 虎ノ門横丁は,空間デザインは昭和の飲み屋横丁をモチーフにしていて,それなりに雰囲気は出ているが,昔の新宿の小便横丁、渋谷の恋文横丁、のんべい横丁を知る世代には,品が良すぎて猥雑さが少しも感じられないのが不自然すぎた。
 もっとも虎ノ門ヒルズに、猥雑さは似合わないし,それは逆にリスキーかも知れない。あくまでも、ステテコ腹巻は出禁の飲み屋横丁であろう。
 またいらぬ世話だが,エレゾゲートは,出店先の選択ミスだと思う.店の空間は、流石に誕生日や決めデートには使えないが,料理の内容は十分に応えている。シェフは十分に仕事を果たしていると思う。

天ぷら あらたみかわ 「松茸の天麩羅がフライを超えた日ー料理はやはり技術が大事」

 あらたみかわ三度目の訪問。茅場町にあったみかわを入れれば,数えきれないくらい通っているが,今回は釣れ始めたハゼを期待して来たが,まだ小ぶりすぎるとかでおいては無かった.しかしながら、今日は改めて天ぷらという調理法に脱帽した。天ぷらの流派は色々あるが、早乙女みかわ一門の力量は頭一つ抜けている。
 結論から言えば,松茸はフライに勝るものはないと何十年も思ってきたが,その考えを改めることになった。松茸は岩手のつぼみでものも良いが,やはりスキルがなくては,こうはいかないだろう.シャキッと噛めば,香りが鼻腔を覆う。あー松茸だーとしみじみ思う.今まで食べてきた松茸の天ぷらはなんだったのだろう.まずは衣が邪魔にならないように絶妙につけるんだろうな。
 みかわの天ぷらの特徴は,松茸が無くとも、タンパク質が多いことだろう。マキエヒが2尾、キス,スミイカ、`メヒカリ,メゴチ、穴子とそれも姿が立派なものばかりである.メヒカリは猫またぎともいい癖のある雑魚だが,天ぷらにすると豹変する。メゴチは身も厚くハゼを補って余りある旨さ。大根おろしも、オツユもお代わりして堪能した.スタートして最初に揚げたのはサツマイモであるが,出されたのはデザートのように最後であった.1時間以上も寝かして火入れをするのは,静岡の成生に先んじた技術だろう。レンコンもナスも文句ない美味さ。
 お客にヨーロッパ人の若い家族連れがいて,隣の客を見よう見真似で食べていたが,外人が天ぷらのスタンダードがミカワになってしまったら,この先の天ぷらはどうなるか心配してしまう。
「あのね,私たちが東京で食べた天ぷらは,これとは全然違うものだよ」と一生言い続けるに違いないだろうな。

trattoria GALLIANO「ディナーで裏を返したー気分はシチリア」

 先日のランチのパスタが気に入ったので,ディナーをしてみた。ランチ時にはいなかったオネーサンがフロアーに居た.行ったことは無いが,シチリア島の田舎に居そうな、小股の切れ上がったという表現が似合う小粋なお嬢さんの雰囲気である.思わず往年の名女優クラウディアカルディナーレを思い出した。本人に知っているかと聞くも,もちろん世代が違いすぎて知るはずもないので,シェフに知っているか尋ねて、知らなければイタリア通とはとても言えない,と宿題にした。
 料理の話をする。
 プラータナチーズのカプレーゼは,まずチーズがとても良質でトマトも夏の暑い陽射しを思い出す旨さだった。
蛤のクリームソースは、蛤のエキスとクリームソースのマリアージュが最高。蛤はこれにして正解だと思う。
ほうれん草とアサリのソテーは,ニンニクが強めで美味いがオリーブオイルが多めなので,フォカチオかバゲットが欲しいところだが、置いて無かったのが残念。
ヤリイカのトマトソースは,トマトソースは,前に食べたペスカトーレ同様,濃いめで好みである。ソースが美味いので、やはりパンが欲しいところ。
 アヒージョは,季節柄フレッシュポルチーニが欲しいところであったがあいにく松茸だと言うので、鮑にしたが,これもマ高の鮑がゴロリと入っていて,ちょっと感動した。これにはガーリックトーストを付けたが,ガーリックは余分だったかもしれない。
デザートのショコラテリーヌは,立派なガトーショコラだ。
 ディナーでも大満足であった.近くの内科でインフルとコロナの予防接種の帰り道だったのでアルコールは控え目であったのが少し残念、また歳のせいか、パスタまで行けなかったのも残念。個人的には課題はパンであろうな。次は肉系も食べて食後のGallianoまで行きたいと思うが,この店の良さは,夜景よりも、明るい陽射しの中で海鮮を豪快に食べる雰囲気にあるのではないか.お嬢さんもその方が,もっと輝くように思うが、考え過ぎであろうか?
 ところで宿題の答えは忘れずに次回にはお願いします。

利行「焼き鳥を日本文化に昇華した稀有な店」

どこで知ったのか定かでは無いがOMAKASEで予約日が来たので,あいにくの秋雨模様の中を出かけた。麻布通りに面した古川橋近くの、新しいビルの3階にあった.有名な食べ物屋が入っている建物だが,利行の名前は無く,戸惑いつつも住所にあっ3階に向かった。マンション風のドアは施錠されており,インターフォンも無い.よく見ると,時間になったら開けるから,しばらくまたれよ、と小さな張り紙がしてあった.えっ、また、これかよ!と幸先が悪いと安じて相棒の到着を待つ間もなく,ドアが開けられ中に入ることが出来た.ほんのりとトーンを落とした空間は和の設えであるが,日本料理店とも鮨屋とも違う.うまく言えないが,奥が深いセンスの良さがある.昨今ありがちなおしゃれな和空間とも違う.焼き鳥屋であることを土壁が表しているのかもしれないが,単純な聚楽壁ではなく,も少し粗野だがヤボでは無い.なんという名のついた壁土だろうか、今度来た時には聞いてみよう.東京の和の空間デザイナーはおそらく限られているから,最近の和食屋はいくつかの似たようなパターンに分かれてしまうが,利行はとても個性的である.一つ記憶にあるのは,青山の宮坂の黒壁の設えの系統か。
利行は薪を使うというから竈門があれば壁がマッチするな。大将とソムリエ兼料理人の二人で切り盛りしているが,救いは二人とも平凡な白衣を着ていて,変にかしこまっていないことであり、これで袴襷掛けでは,こちらがめげてしまうだろう。所作は無駄がなく爽やかであるが,お二人とも体型は爽やかとは行けていないようで,フレンチの三国シェフを思わせる風貌である。
さてさて,前置きが長すぎるのが私の欠点であるが,食事はただ食べるだけの経験では無いと思うからで,平に免じていただきたい。
焼き鳥の,鶏の種類やその部位、他の食材の細かいスペックを取材したかのように語るー趣味は私には無いので,詳しいことは他の方の口コミを参考にされて欲しい。焼き鳥を始め全ての料理は,とても洗練られていて見事である。最後の締めの蕎麦も,島田の薮宮本に劣らずの出来で驚いたことを言い忘れてはならないだろう。
寿司が屋台のファストフードから,現在の形態まで進歩して来たように、焼き鳥という食べ物を究極に昇華したのが現在の利行の焼き鳥の形では無いかと思う。
食材の選び方,下ごしらえから調理の仕方,サービスの仕方まで,その心意気に手抜きは無い.したがって器もよく洗練されている.持って帰りたくなるようなものばかりであった.古唐津,古伊万里、古九谷がふんだんに使われ,デザートはアンティークバカラのシャンパングラスであった.一つ色彩鮮やかなシノア風の皿が気になったが,オタクぽくなるのも嫌で聞くのを諦めた。
 食べることに関わるいろんなことが好きな方にはこれ以上の焼鳥屋さんを見つけることは不可能だろうと思う。もちろん焼鳥単体だけでも極上品であるから,お訪ねになって満足されることは保証できる。私のギァランティーなど何の意味も無いけどね。

麻布台 粋 稲葉「松茸もやはり東京なのかー麻布台ヒルズ「稲葉」で堪能」

別所温泉♨️のトラウマを晴らすべく稲葉の松茸を求めて来訪した.1週間のインターバルであったが,今回は松本産の松茸が籠一杯に山盛り。頃合いの良いのを2本選んで,フライと土瓶蒸しにしてもらった.我が?板長は、再訪を約束をしていたわけでもないのに,パン粉は細目をちゃんと用意いていてくれた気遣いには,ちょっと感動した。馬刺しも確認したが,やはり全く別物、刺しの入った極上品。マグロは大間産があったが、赤身というので山掛けにしてもらったら,芋も自然薯で赤身によく合う久しぶりのほんまものの山掛けであった。マグロの仲卸は,何かとやま幸がチヤホヤされているが、國虎も捨てたものではないな。土瓶蒸しも洗練されている。意外だったのは松茸が割いていない事だったが,香り,歯応えは抜群で文句無し。肉じゃがは,名ばかりでで豚の角煮にじゃがいもが添えられ、じゃがいものピュレがついていた。ご飯は白米のセットにしたが,イワシの丸干しが根津松本のものに劣らず抜群に美味い。新米ではなかったが魚沼産のコシヒカリはやはり美味くて,おかわりをしてしまったが、残りはおむすびにしてくれた。竹皮に包まれているのも昭和の人間には懐かしくも嬉しい。
 地産地消が叫ばれ,地方の産地に行けばそれだけの意味があるかと思いがちだが、実際には東京で食べるに勝るものは殆どない。食べ物で鮮度が勝負というものはそれほど多くはないということなんだろう。
それにしても,稲葉が徒歩圏内にあるのは天の差配と感謝する他はない。

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