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グルマンライフ

La Maison Confortable「不矜不伐,赤坂洋介シェフの謙虚さこそ偉大さの証」

 世の中にはレジェンドと呼ばれる有名シェフは山ほどいるが,中にはSNSで醜態を晒している巨匠もいるが、ラメゾンコンフォータブルの赤坂洋介シェフは華麗なる経歴があるのに誠に謙虚である。残念ながらピエールガニェールには20年前に青山のプラダの前にできた時から気にかけていたが,ANAホテルに移転して今年初めに閉じてしまい,縁がないままであった。アランシャペルと兄弟弟子であったピエールガニェールは,パリの三つ星の常連で,その彼のもとで長年修行し,やがて右腕となり東京店を任され15年連続二つ星という輝かしい実績を持って今年の5月にオーナーシェフとして麻布十番に降臨した.本日初訪問であったがエレベーターを降りると,ソムリエとシェフ自らが出迎えてくれた。店は窓の無い真っ白い空間で壁面には苔玉のミニ盆栽がいくつも置かれ,テーブルクロスは無くパレットのようなランチョンマットが置かれていた.このスマートなインテリアも彼の主張んだろうな。
 料理はガニェールを知らないから,偉そうなことは言えないが,巷間伝わる「一つのテーマを異素材の組み合わせで異なる食感,温度,風味のコントラストを多皿構成で提供する」料理そのものであった.40年近く前にヌーヴェルキジィーンヌの登場で受けた衝撃の再来のようなものではないかと思った.前菜は6種で冷菜から温菜へ,スプーンに乗せられたものから,グラスに入った,あるいは串に刺したものへと食べ方にも変化をつける.食材の組み合わせも絶妙である.甘みたっぷりの牡丹海老に紅芯大根にミミガーを添えて海老パウダーを振る、牡蠣を牛肉で巻いてビーツのソースで,鹿のローストに生のマイカを乗せてチョコレートを混ぜたソースてと,変幻自在である。私の好きなフォアグラのソテーもありきたりではなく数種類のフンギにワインソースに佐久の粒胡椒がはいっている,チコリにはエスカルゴが忍んでいる,という具合である。ソースは全般に軽めである。
新しい体験をした。
 不思議なことにまだ予約は取れる.1週間後のクリスマスイヴにキャンセルが出たとのことだったので裏を返すことに即決して帰って来た。
 妻は行かないと意地悪を言うので、まだお相手は決まっていない。

南青山エッセンス「評価の確定ー素晴らしい独自の路線で顧客は大満足」

 何事においてもそうであるが,最初は意外性に驚き感動しても,2度目は期待が高いが故に少しがっかりする。3度には妙なところのアラが目につくようになる。4度目に改めて気分がデフォルト状態になり正しい評価になるのではないかと思うが,いかがなものであろうか.例えをご婦人にしてみれば,紳士諸兄にはご賛同いただけるのではないかと思う。
 エッセンスも,4度目になって改めて良い店だと思う.富麗華など中国飯店系や桃仙閣系のようなモダンながらもクラッシックな王道がベースに置かれたものでもなく、かと言って桃の木ほどにヌーベルシノア風でもなく,どちらかといえば、和と洋のエッセンスをミックスした中華のmixologyとも言えるものではなかろうか。
 今回は勉強仲間の男性3人で忘年会ということで個室を使ったが,前回ほど窮屈感は感じず、前回との感じ方の差はどこから来るのだろう?前回は妻と二人であった。笑
 料理は13500円のお得なコースにした。定番の牛スジの煮込み,前菜はサーモンやクラゲ,豆腐ヨウなど6種が廻るお皿で,フカヒレ、魚料理が2品,薬膳スープ、牛のローストに締めのご飯は土鍋白米に麻婆豆腐で、デザートはフルーツに絶妙な杏仁豆腐であった。魚料理のキンメとヤガラは焼津のサスエ前田魚店のもので,気のせいか一際美味かった。アルコールは例の無濾過のビール白穂の香にした.これは確かに美味い。全9皿で質量とも大満足で,これなら高いコースでなくても南青山エッセンスのエッセンスは十分味わえると断言出来る。 
 と言うことで、今回が私の落ち着いた評価である。結論,オススメである。

CITABRIA ANNEX「別荘に三つ星シェフのケータリングの気分で贅沢を味わう」

 ちょっと早いクリスマスということで友人夫妻と4人で来訪した。レフェルヴェソンスの母体会社のサイタブリアの経営ということなのでスキのないアプローチかと思いきや,ナビ通りの住所でタクシーを降りてもファサードらしきものは見当たらず,マネージャーに電話して案内を受けながら夜道を数分歩いて辿り着いた。しかも入り口は飛び石で夜道では足元が悪く,目も足もおぼつかない老体の身としては来るんじゃなかったと,すぐさま内心後悔した。
 お店は案外そっけない作りで,ドアを開けると前室は無くダイニングテーブルがあった。部屋の1/3がキッチンで,1/3がダイニングスペースで1/3がソファが置かれたリビングのイメージか。窓の外は運河に面して広めのテラスがあり、豊洲大橋、臨海地区のタワマンの灯りが臨めとてもロマンチックな眺めが気分を上げてくれた。東京タワーもスカイツリーもビルの合間から見えた。夏場ならサウナに入ってプールでスッキリするのも良いだろうと思ったが,冬は温水プールにしてくれるのでサウナを楽しむ客もいるとの話であった。
ソファでお茶を頂いてから,さていよいよテーブルに着いた。ワインの値付けが案外リーズナブルなのでドンペリを奢ってクリスマス気分を上げることにした。アミューズは人参サプレ、足赤海老のムースリース,レンコン餅の3点で,ついで松茸の茶碗蒸し風.鯨のコロに海水のエスプーマ,レフェルヴェソンス風の野菜サラダ、クエの蒸し物にトリュフと雲丹を添えたもの、鹿のロティと鹿の血のブータンノアール.締めのご飯はツキアカリ米を出汁で炊いた伊勢牛のステーキ丼の櫃まぶし仕立て.どれも個性的で無駄のない,野菜の一片,ご飯の一粒も残させない力のあるものであった.個人的には出汁へのこだわり、サラダへの思い入れ、鹿肉の抜群の旨さが心に残った.これだけ美味い鹿肉を食べたことは無い。デザートのモンブランにかかった国産トリュフのブランド中野トリュフも初めての貴重な体験であった。
 レフェルヴェソンスの意味する通りの料理であった。フランス料理と言うが,ラセゾンやトゥールダルジャンや,イノやコートドールとはまるで違う世界で,これはこれで三ツ星は正鵠であろうと感じて、帰途についた.
 帰りは比較的近くまでタクシーが来てくれて一安心したが、サイタブリアなりの事情があるのだろうが,アネックスに食事だけにくる客の為にはアプローチの工夫はやはりいるのではないかと思う。ともあれ特別の記念日や思い出作りには是非お薦めしたいお店に間違いはない。

尾崎幸隆「勝負はこれからだな,料理長は一生懸命だが、、」

 OMAKASEで予約して行ったが10席のカウンターに客は我々二人きり。なのに、到着時にお店の女性の「どなた様ですか?」に違和感があった.
親方は愛想が良く偉ぶったところは全く無い。店の若い料理人にも女性にもさん付けで呼んでいた。また、私の補聴器のマイクを自分の白衣の中にしまってくれた.おかげで今回は会話に苦労することもなかった。聞くところでは,以前はニューオータニのナダマンに15年ばかしいて,六本木ヒルズクラブを経て今年の4月からここのリニューアルオープンで料理長になってきたばかりと言う.ここは早くから「やま幸」の社長の名前「幸隆」を店名にして,今日のやま幸のブランディングに貢献しできた麻布十番の老舗である.オーナーは同じく十番のケヤキ坂近くにあったピザ屋SAVOYと同じらしい。ピザ屋は現在はこのビルの中で上にある。因みに「尾崎」は宮崎牛のファーマーの名前と言う。
 料理はいずれも食材にこだわり丁寧な仕事がしてあるものばかりであった。
 先付けは,マグロにキャビアを乗せた手巻き寿司.マグロにキャビアはやま幸直系の定番である.そばのミタテではこれが蕎麦粉のガレットになっており、イタリアンのフラグメントでは,そのまんまアミューズで出てきた.鮪とキャビアの相性は誠に良い.最近の十番のお決まり、なんにでも黒トリュフはもう卒業した方が良いだろう.あと願わくは,キャビアの質をもう少し高くしてはくれないだろうか.ミタテもそう願いたい。
 蒸し物はハタと蛤の蕪蒸し.関西ぽい料理人の腕の見せ所である、うまい。
 刺身はメイチ鯛の昆布〆、水蛸,バイ貝,延縄塩釜のマグロの中トロであったが,意外に平凡。
 焼き物はエビス鯛幽庵焼きとうなぎの白焼に大根おろしが乗せられたもの。三河一色の鰻が身も厚くて良かった。
 揚げ物は,当店の伝統にして名物の鮪トロカツ,いくらと銀杏と共に。私はトロカツは初めてだが,アイディアは良いがパン粉は細かくしても少しカリッとあげた方が良いように感じた.とにかくこれは逸品だろう。
 肉料理は尾崎牛のリブロース漬け焼き。尾崎さんのものだと分からせたくば,肉は厚くして炭火焼きのステーキが良いと思う。
 ご飯は夷芋と飛騨牛の炊き込みご飯.夷芋のほっこりネットリ感に質の良い薄切り牛肉の牛丼感がたまらない美味さ.土鍋が大きめなので、残りはおにぎりでお土産に。
 デザートは旬のフルーツにマスカットのゼリーを砕いて一緒に。これは千疋屋より美味い。ゼリーにワインが入っているのであろうか高級フレンチで出されるようなレベルであった。
アルコールは,ドラフトビールをグラス1と勧められたヨーグルト風味の日本酒をグラス1、白ワインングラス1,〆て3杯の鉄則通り.ヨーグルト酒は単に飲み物であり,料理の友にはなりにくいだろうと感じた。
 我々の食べ方が早いので1時間半あまりで終了してしまったが、その間は客は二人で、静かである事に全く文句はないが、さすがにこれではまずかろうな。
 しばしば気になることだが,料理長とは別にオーナーがいる場合の両者の関係性が店の雰囲気を作ると言うことである。つまりオーナーのタイプによってお店の緊張感の種類が変わる。
オーナーが食べることが好きで,気に入った料理人に半ば道楽で店をやらせる場合と、単に一つのビジネスで料理人を雇って経営する場合に大別されよう。
前者は基本的に拘りには口や金は出しても売り上げには口は出さないが,後者はカネは渋いが売り上げには口を出すことが多い。前者で始まっても料理人と疎くなってしまい,別の料理人を雇っている場合もある.またオーナーがパトロンに成りきれず,採算を重要視する様になって齟齬が生じる場合もある。料理人は本来我儘なものであるから,オーナーによってはよほど割り切らないと続かないことが多い。
 雇用関係というのは,何事でも難しいもので,立場が変われば,言い分も変わってしまう。従ってオーナーが別にいる料理長は,余分な苦労をすることになる。尾崎幸隆はどれに当てはまるかは知らないが、微妙な空気感が漂っていることには,ご両人とも注意された方が良いだろうな。料理は美味いのだから,客としては、このまま継続していくのを期待したい。

寺子屋 すし匠 「寺子屋塾生に復帰した。変わらないが変わりつつある、、」

前回の訪問時に,次回の予約の権利を連れに譲ったので,私はキャンセル待ちになってしまった。キャンセルがなかなか来なくて,ようやく来た時は生憎当方が旅行中であって,2回目のキャンセル待ちになった.それがようやく来て今回の訪問になった.おそらく一年ぶりに近いかと思われる.
18時の予約で10分前には着いたが,いつものようにウェイティングバーで待たされることもなく,そのまま鮨カウンターに案内された。先客は6人ですでに始まっていた。なんか今までと勝手が少し違うなと思ったが、その後はいつものように実にタイミングよく運ばれ,何も変わっていない風であった。変わったと言えば吉田松蔭が彫られた冷蔵庫のケヤキの扉の板が経年変化で色が少し濃くなっていた.やがて赤味がかった朱色から飴茶色になって行くのだろうが、それを自分がいつまで楽しめるかな、とふと考えてしまうのは多分に歳のせいだろうな。周りの若い客達は,そんなことは微塵も思わないに違いない.自分も若い時には,いつ来れなくなるかなんて考えもしなかったからな。この冷蔵庫が飴茶色に変わる頃は,大将はどんな顔になり,若い料理人達もどうなっているかと,話して和めるのもこの店の良さである。変わらないようで、皆変わっていくことを冷蔵庫の欅の木が教えてくれた。料理人達も,一人前になると、まもなく円熟期に入り,やがて衰えが味に現れるようになると引退して行くのを何人も見てきた。食べ手の味覚の衰えも同じことだろうが、こちらは無責任でよいので、元気ならいつまでも楽しめるのは有り難いことである。
そんなことを考えながらの今回の訪問であった。
今日の料理と握りは写真の順に、鰤しゃぶ、かすご、ヒラメ刺身、こはだ,赤身、ホタテの磯部焼き、しまあじ,バチマグロ,すみイカ、毛蟹茶碗蒸し,海葡萄の和物、さわらの昆布締め,イワシの海苔巻き、香箱蟹のちまき、松前漬け、中トロ、メヒカリ味醂干し風、 車エビ.あとはお好みで追加で、赤貝,甘鯛白皮,白エビ,背トロ、サバ棒鮨,大トロ、煮はま、カンピョウ、たまご焼.アルコールは無濾過生ビールをグラス2杯と黒龍しずくを半合で締めて3杯の不文律は守った。
最後のアラカルトはいつも板場は戦場となる。客一人が平均5貫としても40貫の注文が一度に入るが、これでフィニッシュになるからスタッフはチームプレーで一気に走るのが心地よい.寺子屋すし匠ならではである。
今回の推しは鰯と背トロかな。
それにしてもよく食べた。

心米「心米その心意気や良し」

 ご飯を看板にするお店はどんなもんかなと行ってみた。
 勝手がわからないので,まずはコース料理で予約を取った.安い方の13800円のレギュラーコースで,おばんざいとして、野菜のきんぴら,ブロッコリーとトマトの胡麻和え,夷芋の唐揚げの3種、聖護院大根のふろふき大根,刺身はハマチ、キンメ、イシガキタイのお造り3種盛り合わせ,焼き魚はししゃも,揚げ物は対馬産穴子のフライ,締めは宮崎グラスフェッド牛フィレ肉の炭火焼きで,土鍋炊きご飯が来て甘味で終わった.お椀は無かったが,和食のコースの建て付けであるが,味は総じて割烹の一流店には少し及ばすというところが率直な感想.米は無論のこと食材,日本酒にはかなりのこだわりが伺え,手応えのある夕餉となった。穴子は天ぷらではなくフライにしてあり、ウスターソースと山葵がつくところが嬉しい発見であった。
 お店の設えはまだ新しく、そこに美人女将と可愛いオネーサンが初々しく和服を綺麗に着こなしていれば、こちらも自然と新鮮な幸せな気持ちになれ,それだけでもご馳走になった。お客は中高年の男性が目立ったが,酒に酔い潰れる風もなく,程よく飲んで食べて引き揚げる感じが,最近の人気店のように変に若者が占拠していなくて好感が持てた.場所も日赤通りの青山側で,昔通った春秋とBIngoの中間辺りにあり好立地である。
 さて,肝心のご飯であるが,なんと全国から厳選された農家の12種類の米の中から選択出来る。詳しい説明書きがあるものの、日本酒なら少しは見当もつくが、米のニッチな銘柄,無農薬のみならず無肥料と言われても選びようがないので,女将さんに、肉に合うもの,漬物や海苔に合うものを2種選んでもらった。ご飯には糠漬け、葉唐辛子と海苔の佃煮,ちりめん山椒、明太子と鉄板のお供が付く。
一人前0.8合なので老人夫婦では半分以上が残ってしまったが,そこはおにぎりのお土産のサービスがあった.最近は多くの店が,同じようなサービスをするが,とても合理的で嬉しい傾向ですな。うまいご飯は冷めてもうまいから,とても重宝する。
 一つだけ残念なことは,料理の出のタイミングが悪い。間が開くのである.そのせいでいつもより酒が一杯増えてしまった。繁盛してマンパワーが足りないのだろうが,リピートを願うなら,工夫がいるだろうな。
 心米のネーミングの由来は知らないが,農家さんに感謝して心を込めて米を選び,心を込めて炊きあげ、心を込めてありがたくいただくのであれば,誠にその心意気は良く、名前が料理の味わいを深める見事なマーケティング戦略だと思う。

オー・プロヴァンソー「麹町の「隠れた名店」と済ますだけでは惜しい存在」

「俺の店」と言える存在は貴重なものだ.ここは小生が勝手そう思っているフレンチレストランだ。中野オーナーシェフはビストロ,食堂と自称して謙遜するが料理は間違い無く三つ星のレストランであると自信を持って保証出来る.ソムリエの鈴木氏もホンマモンだ。
 旨いものを食べようと思ったら,昔から肉屋や魚屋の大将やお店のシェフ,スタッフとの人間関係が重要で,つまりは彼らと相性が合うかが大きなポイントになると考えて来た。肉屋なら希少部位をとっておいてくれるし、魚屋なら良いものが入れば知らせてくれる。プロバンソーの面々とは馬が合うと一方的に思っている。
 さて、本日のメニューは下記の通りであるが,文責は信頼のソムリエ氏によるものだから微に入り細に入り間違いはない。
料理の構成力と写真で出来栄えをご覧頂ければ、シェフの力量は自ずとわかろうかと言うものだろう。
1)アミューズブーシュ
バターナッツカボチャのムースとそのピクルス ローズマリーのエキューム(泡)と削ったヘーゼルナッツ

2)冷前菜
鳥取県境港産 香箱蟹 内子と外子のパスティスジュレ和え 甘味と酸味のラケ(表面に照りを付ける表現で、今回はアガープレートのゼリーで覆っております)と雲丹

3)温前菜
フォアグラのポワレ 牛蒡の赤ワイン煮(フォアグラの下)と牛蒡のフリット(フォアグラの上) ソースペリグール(マデラソースにふトリュッフのアッシェを加えた王道ソース)

4)魚料理
舌平目の貴婦人仕立て<ソール・ボンヌ・ファム>
卵黄にヒュメ・ド・ポワソンを加え湯煎をして掻き立て、バターで繋いで塩で味を調えたさバイヨンソースを、蒸し上げた舌平目の上に流しかけ、天火でゆっくり焼き色を付けた、中野シェフが何十年も作り続けているスペシャリテ。

山口県下関産 カサゴのポワレ カサゴの荒から出汁をとり、ヴェルモット酒とパスティス酒、仕上げにサフランで香り付けしたブイヤベース風ソース。

5)デザート
無花果の赤ワインコンポートと抹茶のムース オレンジ香るヨーグルトのグラス(アイス)

モンブラン2025
ほうじ茶のクランブル(砕いたビスケッにオレンジのコンフィテュール、さらに洋栗の甘露煮、そしてマロンクリーム。サフランを効かせた蜂蜜の周りにヘーゼルナッツのキャラメリゼとヴァニラアイス、その上に和栗のアクセント。 

 このようなメニューの詳細を毎回ソムリエ氏が後日メールで送ってくれる。
 追加として裏メニューの名物ハヤシライス(ブッフブルギニオンあるいは頬肉の赤ワイン煮に近い)の一口サイズとチーズはエポアスとコンテを食べた。因みにシェイノの看板メニュー,子羊のマリアカラス風も予約すれば裏メニューで作ってくれる。
 食材はもちろん料理人、人にも、ハシリがあり,旬が来てやがて名残りになるのは自然の定めであろう。今回の料理から,シェフはまだまだ旬を過ぎていないことが確認出来て安心した。
 連れの麗人に「君はそろそろ名残りに入ったかな」と言わずもがなを言ってしまい,この後首元を引っ張られて銀座に拉致された,
因みに私は名残りremains 、黄昏twijght!という言葉が好きなのだが。

うなぎ亭 友栄「歴史は意外と新しいが、自信が作る納得の味」

 うなぎ好きにはつとに名高い友栄に初訪問した。グルメ本の評価点数以外の予備知識無しで行ったので,場所が箱根の入り口で,付近に早川という清流が流れているので,江戸時代から旅人が箱根の関を越す前に精力をつけるために鰻を提供して来た店なのかと考えていたところに店内にもそれらしき絵画が架けられていたので一人合点していたが、後で調べて見ると1978年に下田で創業して1996年に当地に移転したそうである。鰻の老舗には麻布の野田岩,葛飾川千家、日本橋大江戸,川越小川菊など江戸時代から続く店も少なくない中では、新参者といっても良いのだが,青鰻という希少な鰻を使い,新鮮さを売りに評判を取り,それを自信に変えて弛まぬ努力の末が今日の高い評価になったものと思われる。
 既にご案内のような手順で,席に着くと20分も経たないうちに肝焼きが出された。タレと山葵醬油の両方にしたが,鰻の肝がかくも臭みも苦味もないことを初めて知った.liver特有のねっとり感がとても良い。たまらずノンアルビールを注文した。
 鰻は鰻重にしたが、白焼分も予約しておけば良かったと後悔したが,追加は出来ないので後の祭り。鰻重はまずは,鰻の豊満さに圧倒された.これまでに食べたものの中で一番身が大きく厚い.これが重なる様にお重に収まっていて,ご飯が壁の様に透けて見えてしまう貧相さがないところが心を満たす。タレは甘すぎず、醤油味のトゲもなく丁度良い.ご飯の量は少なめだが、鰻のボリュームで,お腹いっぱいになった。
 これまで贔屓にしていた麻布の野田岩、八重洲のはしもと,三島の桜家に比べて,焼き、蒸しともバランスが良く、唯一経験した柳川の夜明け茶屋の天然鰻にも劣らず鰻重の最高峰であったと思う。
 やはり鰻というものは肝焼き、うざく,骨せんべい、白焼などで一杯やって鰻重が好ましいが,車ではどうしょうもない。旨いものはタクシー圏内で見つけるしかないかもしれないな。

ISSEI YUASA「ラボのようなキッチンで結果に集中するイタリアンな懐石料理」

 一年ぶりの再訪.暗くなった旧竜土町は少し不気味であるが,タクシーの前でお店のスタッフが二人で出迎えをしてくれた。スタッフさんもソムリエ氏も代わっていたが,以前からいる理系の院生のような雰囲気のメガネのスタッフさんは,スーに昇格したのか,振る舞いにも責任と自信が伺えた。記憶違いかもしれないが,ウェイティングスペースのインテリアがモダンスタイルに変わり大きな大理石のカウンターによくマッチしていた。
シェフはトスカーナで学んで彼の料理哲学を得て、ここで自分の店を開業したのだろうから,ここにはトスカーナ料理の何らかのエッセンスがあるはずである.トスカーナをググってみると,日本で言えば信州や那須辺りの気候風土で,食材にもさほど恵まれず,主として地産の植物性の食材を無駄なく丁寧に調理するのがトスカーナ料理の真髄というらしい。日本では,差し詰め京都美山の摘み草料理というところになるのだろうが、実際は凡そ違う。東京の地産は限られるから良い資源があれば日本中から手に入れて手を加えて食材に仕上げる。粒は小さいが味はベルーガのオリジナルキャビアも使うし,四万十川の天然ものの鰻を使うし,カワハギも平貝も使う。リゾットには聞いたこともないルイユのようなものも作る。手作りパスタは縦型の手動のマシーンを使う。
 まるでラボのようなキッチンで,理系の院生に誤差の許されない実験を指導するように,繊細に緻密なイタリアンな懐石料理を作る,というのが私が感じた印象だ。
 食べ慣れたマンマの味とは程遠い、未知の味を求めて来て,幻惑されて圧倒されて帰るだけである.その正体を知る必要などはない。
 アルコールに関しては,ソムリエのサービスには一縷の改善の余地があるように見受けられた。ビールは置いて無かったが、さも当然のような顔をするが,今は一流店では,どこでも無濾過の生ビールが置いてあり、ビールが食中酒として見直されて来ていることに無関心であるのはどうかな.蘊蓄でマウントを取ろうとするよりマシではあるが,客の好みと予算を推測し、スマートに当店ならではのセレクトを具体的に提示するのは必要なサービスではないかと思う.ただ黙って聞くだけでは,慇懃無礼と言うよりソムリエとしてはどうだろうな.それでもトスカーナと言えば、キャンティクラシコのBarone Ricasoli2021年を出して来たのは矜恃を保った感があったな。流石に美味かった。
 トスカーナ料理に限らずビーフステーキは日本料理、最近では中華料理でも出されるが,炭火焼きステーキというのは半世紀前に六本木のchacoで流行ったが、まだそれほどは多くはない.最後に神戸牛のイチボの炭火焼きステーキが出たが,これは3.40年前の青山の大人の居酒屋おかだと全く同じイチボの焼き加減であったが,ソースと付け合わせのクレソン代わりの野菜が全く違う.これこそ,Yuasa Laboの成果だろう.盛り付けにピンセットを使う繊細さもそれらしい。
 今回の訪問は,グルメと旅行仲間の友人と一緒であり,初めは意気込んで白トリュフメインで予約したが,今年のトリュフの予想相場では一人13万になると言うのでさすがに断念した。それでも今回の4.5万のコースでも白トリュフは2皿,黒トリュフが一皿提供された.シェフは我々の意図を理解してくれたようで、トリュフはパスタにかけるくらいで丁度良いのである。
 料理は作り手の多様性も、食べ手の多様性もあって良い。人は常に自由でいたいと願うものだが、自由とは,好きなことをやり,嫌なことはしない事である。

南青山エッセンス「年月を経て3種の珍味にありついたぞ」

 またしてもサントリーホールのコンサートの後のディナーで訪問した。ラストオーダーが22:00というのも嬉しい。 
 個室を初めて利用したので,何かと気が楽ではあったが,まるで隠し部屋に4人が潜むというのが相応しい大きさで少し落胆した。中華の個室というものは,広くて真ん中に大きな丸いテーブルが鎮座しているものと、昭和の人間は刷り込まれているが,思えば最近はテーブルにナイフフォークで銘々に取り分けられて提供されるフレンチスタイルは珍しいことではなくなっている。丸い真ん中が廻るテーブルなど今や中華街にでも行かないとお目にかかれないかもしれない。私の経験ではフレンチスタイルの最初は青山のダイニーズテーブルであったように思う。隠れ家的な地下の暗めの照明でインテリア,カトラリーがオシャレで新しもの好きな洒落者達に人気であった。おそらく伝説のイタリアン、飯倉のキャンティの中華版であったと思われるが、特段味が優れていたわけでもないので,フレンチスタイルが当たり前になった今はどうなったんだろうな。あの根津美術館前の通りもすっかり様変わりしてしまい、昔からあるのはブルーノートくらいではなかろうか。イタリアンモダン家具のB&Bやジルサンダーの旗艦店があったことを懐かしむのは歳をとった証かもしれないな。
 さて料理であるが,フカヒレ姿煮、あわび、ツバメの巣の文言の誘惑に負けて高い方のコースを奢ってみた。飲み物は,アルコール制限のある身ではビールを飲むことが増えたが、良い店には最近は一般には手に入らない特別なビールが置いてあることが多い。麦芽に拘った無濾過の生ビール、所謂ホワイトビールが流行ってきた.和食にも洋食にもどんな料理でも食中酒として合うビールが作られるようになったというわけで、これはビール好きには嬉しいことでありますね。先には鮨屋、和食屋でインディーズ系のロココビールを経験し、柑橘系の香りがして喉越しもスッキリととても気に入ったものだ。エッセンスにはサッポロの白穂の香があり、これもとても良かった。すかさず2杯空けて,次は迷った末にグラスの紹興酒にした.アルコールは種類を問わず3杯までと主治医に内緒で勝手に決めているからである。
 アミューズは牛筋の煮込みであったが,これにはバゲットがよく合うもので、森下の居酒屋山利喜では昔から置いてあったが,さすがにエッセンスには置いてなかった。前菜はいつものようにクラゲ,シャコ、タコ,サーモンなど凝ったものが六種で、これらは廻るテーブルのミニサイズのお皿に乗せられていた。フカヒレは金華ハムの上湯スープでとても上品なコクのある味わいは流石で,魚料理は甘鯛のポアレで麹町のビストロ、オープロバンソーのによく似ているが,焼津サスエ前田の魚だから特別にうまく感じた。ツバメの巣のスープの燕の巣は衣笠ダケとズワイガニに埋もれて確認出来ないほどであったが、同伴者の皿に運良く個体を確認出来たので半分っこした.実に台湾でタピオカと一緒のデザートで食べて以来,10年ぶり以上の僥倖であった。薬膳スープは朝鮮人参の恩恵か,飲む先から身体が熱ってきた。鮑は蒸し鮑の万願寺のピリ辛味で、これは正直アワビが惜しいと思った.肉料理はブランド牛の足利マール牛との説明を受けたが、ワインの葡萄の香りまではわからなかったが,もも肉にしては柔らかいのは焼き方が上手いのだろうが,このまんまステーキを中華というのは,僅かにソースの違いだけだろうな。食事は舞茸ご飯に麻婆豆腐で,これがベストマッチ。デザートは3種で,ココナッツ饅頭が変わらず美味い。
 料理のジャンルが,どんどんボーダーレスになって来ているが,カテゴリーにこだわる方が寧ろおかしいというものだだろう。森羅万象何事も不確定でスペクトラム状であることは量子論が教えるところでもあるし、われわれは何も考えずに、コンサートの余韻に任せて,ただ美味い美味いと食べるのが正解のようだった。

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