ホームへ戻る

グルマンライフ

同伴でも行ける美味しい、まともなイタリアンーAWキッチン丸の内店

お盆休みに、家庭の事情で、一人飯の日が続いたので、珍しく同伴出勤というものをしてみた。
小生が通うお店だから、銀座とは言え、高級店ではなく庶民派の代表的なお店なので、同伴出勤時間は7時20分までにと早い。7時に食べ終わることが出来る、まともなレストランがあるとは思えないので、「吉牛」にしようかと言ったら、お相手の淑女が、まさかと言って、探してくれ予約までしてくれたので、間抜け面下げて新丸ビル5階にある「AWキッチン丸の内店」に5時に出かけた。

 結論を先に言うと、これがまた、とても良いイタリアンレストランでありました。

バーニャカウダ

バーニャカウダ

 オーガニック野菜を自慢にしているだけあって、バーニャカウダはパリパリの味の濃い野菜ばかりで、季節柄、色の濃い夏野菜が中心でしたが、なかには知らない黄色のズッキーニ風の珍しいものや、近頃人気の紅芯大根などもありました。
 ソースはニンニクもアンチョビも控えめであり、これからお仕事のある淑女や、未だこの先予測不能のカップル向けになっていました。
 ではあのポタージュ状の液体は一体何なのでしょうか?

ビルの谷間が黄昏て

ビルの谷間が黄昏て

 時間は夕暮れ時で、窓の外に目をやれば、丸の内の高層ビルの窓が黄昏色に反射し、
今は都会のど真ん中で少し不謹慎な愉悦に遊ぶ我が身を反省しつつも、野菜のスティックは那須の二期クラブの朝食で出た自家菜園の野菜サラダを思い出していたのであります。
 かようにここの野菜は、美味しかったのであります。

 メニューは多くが野菜中心の料理ばかりだったので、メートルドテル風の紳士に、動物性タンパク質はおありかと尋ねると、厨房に行き、フレッシュフォアグラが一枚あるからソテーはどうかと問うので、お願いすると、とろけるように焼いた丸ナスの上にフォアグラを乗せたお皿が運ばれてきた。

フォアグラソテー

フォアグラソテー

 ナスは、米ナスを揚げた田楽風のものとも違い、皮も実も形がしっかり原形を残しているのに、皮が自然に剥がれ、身はとろけるように火が入っている。どのように調理したのか分からないが、並々ならぬ技術であろうと、素人目には思えたのであります。
 それにフォアグラの火加減も良かった。
 付き添えのトウモロコシも、昨今長野で採れる、生で食べるスイーツコーンのようであった。

トロフィエアラビアータ

トロフィエアラビアータ

 最後はお店の自慢料理でもある、ショートパスタ、トロフィエのアラビアータにした。
アラビアータはトマトソースに唐辛子を効かせたソースが命のような料理であるが、トマトソースが、極めて丁寧に作られており、自慢するだけあって絶品と言うにふさわしい一皿であった。
 実は自分でも、かつてペンネアラビアータに凝ったことがあり、唐辛子とニンニクを焦がさず、香りと辛みを絶妙に引き出すのがいかに難しいかは知っているつもりであるから、なおさらそう感じたと思うのである。
 トマトソースも玉ねぎ、人参やセロリなど香味野菜を焼いてからホールトマトと煮込んで、シノワで濾して作ったのではと思わせ、料理の丁寧さがしのばれるものであった。
 ただトロフィエと言うパスタはニョッキのような弾力は良いのであるが、形状は寄生虫学を思い出させて、その点だけは、小生には、いけていなかったのである。

 ここまでで1時間であり、デザートとお茶を飲む時間は十分にあった。と言うか、結局余裕があり過ぎ、時間調整をしてタクシーを拾った。

 さて、無事時間は守って、入店したのであるが、席についてしばらくしてもお相手の淑女は顔を見せないのである。
 なんと、あろうことか、他の席についていたのである。
 後で事情通に聞くと、淑女は、店に入った客の指名順で席に着くそうで、同伴した小生は一番目の客ではなかったので、後回しにされただけとの説明であった。
 このような夜の社交界?のルールに疎い小生は、何か腑に落ちなかったのであるが、
夕方5時からやっていて、1時間そこいらで十分満足のいく食事をさせるところがあることを教えてもらった満足感が、それを上回ったのである。
もちろん、付き合って頂いた淑女が、外で会っても、益々魅力的であったことが、(実はこの事実こそが超稀少な現象なのですが、)大きなポイントになったことも言うまでもないことであります。

AWキッチンは表参道や、麻布、中目、二子玉にもあり、多店舗展開しているA.W.と言う日本人がオーナーのお店らしいが、野菜へのこだわりが徹底していて、時間が許せば、食べてみたいと思うような、ブルスケッタ、スフレオムレツ、フルールトマトの冷製スパゲッティーニ、等のメニューが満載であった。

 したがって、AWキッチン丸の内店が、「私の又訪ねてみたいお店」のリストに入ったのは極自然の流れであったのである。

 ところで、肝腎の銀座のお店の方であるが、「私の又訪ねてみたい店」に残ったかどうかは,内外にデリケートな質問であり、ここでは答えを明かせないことは、賢明なる紳士諸兄にはご理解頂けることと思います、ご同輩。

 

暇にかこつけた最近のランチ風景

 小生にとって、ランチはもともと手術中の合間に食べることが多かったので、簡便にカロリーさえ取れればいいというのが習い性になっており、まったく拘らないのである。
 従って普段はコンビニのおにぎりやサンドイッチで済ますことが多いが、それでも時々は外出する。それも多くは徒歩数分圏内であるが、たまにはワザワザというお出かけもする。そんな最近の小生のランチ風景をお見せします。
 仕事場のある紀尾井町からは実は10分も車で走れば銀座、四谷新宿、青山原宿澁谷に行けるので、東京の美味しい、あるいはお洒落なレストランの大半は射程距離に入ってしまうから、後は財布との相談だけである。

*ソラノイロのラーメン

ソラノイロ

ソラノイロ

中華そば

中華そば

 ミシュランのビブグルマンで星をとったラーメン屋が職場から徒歩3分の所にある。ラーメンは日頃食べる習慣がないのでミシュランに載る前は食べたことはなかった。ミシュランに載って、そんな店があったのかと探して行ったのが最初であったが、いつも前を通り過していたラーメン屋であった。
 店構えは、特段綺麗でも汚くもない普通のありふれたラーメン屋である。自動販売機でチケットを買うが、店員の応対は概して丁寧で、紙のエプロンをくれるところからして、店の気遣いは出来ていると思う。
 ラーメンは太目のストレート麺でパスタのタリオリーニに近い感じのものである。スープはかなり個性的で、魚介系の強い香りに鶏ガラが加わったコクとでもいうのだろうか、しっかりした味わいの深いスープである。最初に行った時は、麺に味が馴染まず、元々昔の中華そばの細い縮れ麺が好みであったこともあってか、左程感動も無く、2回目はしばらく置いてからであったが、段々とそのスープの味にはまり出し、そうなると麺の性状も気にならなくなり、今や小生のランチ外食トップ3には入り、そろそろ依存症の域に入って来ている。
 期間限定、数量限定でスープ・ドゥ・ポアソンのラーメンもあったから、店主は魚介系のスープに拘りがあるのかもしれないが、それがラーメンにマッチしていたかは微妙なところではあった。
 昼時は行列ができるが、ハケが良いので、それほど待たされることはないし、外に椅子も置かれていて、イラつくことはない。
 最近はもっぱら、まずはグラスの生ビールで餃子4個(200円)を食べ、その後、普通の並の中華そば(800円)を食べている。
 カウンターには多くの酒瓶が並んでいるので、夜は居酒屋風になるのであろうか、メニュウにも酒の当てがいくつも載っていて、いずれも旨そうであるが、まだ夕方に飲みに来たことはない。つまらない居酒屋に行くよりは、きっと当たりであろうと思う。

*オー・プロバンソーのランチコース

仔牛とフォアグラのパテ

仔牛とフォアグラのパテ

仔羊のロースト

仔羊のロースト

 ここも徒歩3分の最寄りのビストロです。この店は僕のブログのグルマンライフにもしばしば登場する、今最も慣れ親しんだフレンチの一軒である。普段はディナーで行くことが多いが、たまに来客があり昼ごはん時になるとお邪魔する。
ランチは2種類で、前菜と主菜の数で違うのだが、いつもは前菜一種、主菜一種にデザートが付くコースで、ペリエ大瓶に、食後にコーヒーかお茶を飲んで大体一人3500円見当である。
前菜も主菜もディナーと遜色のないもので、満足度で裏切られたことはない。
ランチでも、オーナーシェフが自ら厨房に入り、テーブルの段取りも仕切っているのが、何よりも良い。

*天真の天丼ランチ

 天真は、文春のグルメ本『こんないい店うまい店」で見つけた麹町界隈の店の一つであるが、ランチで天丼を食べて気に入り、夜に天ぷらを食べに行き、さらに気に入ったお店である。
 揚げ油は、麺実油とごま油のミックスであるが、昼は天丼用にゴマ油の比率を増やしているという。ドンツユはヤヤ辛目か。
天ぷらの出自は天政の系統ということであり、楽亭、近藤などの現在主流の丘の上ホテル系とは少し違う。ここでは最後のご飯にバラ天飯と言う、かき揚げをばらしてご飯に混ぜる、鰻のひつまぶしのようなものがある。
 亭主は、ワイン、日本酒、焼酎類にも相当詳しく、また食一般に対する造詣も深い教養を積んだ職人である。
 ここの主人の話によれば、楽亭の御主人はこの春に他界されたそうである。最期まで寡黙を通して逝かれたのだろうか。合掌。
 さて、天真の料理であるが、食べ物好きで、勉強家である主人が作る料理が上手くない筈はないのである。

*永田町黒澤の豚カツ

黒澤

黒澤

ランチのとんかつ

ランチのとんかつ

 映画監督の巨匠黒沢明がお店の内装からメニューまでプロデュースしたことで有名な、蕎麦と豚シャブのお店である。議員会館や国会図書館など国会関係の建物が建ち並一画にあるので、とりわけ閑静なところに警察官の警備姿がやたら目立つ奇妙な雰囲気のところにあるが、お店は、落ち着いた風情の日本家屋の一軒家である。壁に漆喰のコテ絵が付いているのが印象的である。
 お店の構成は、蕎麦は一階、肉料理は二階が基本となっている。
 蕎麦は伝説となった「翁」の達人、高橋邦弘氏の薫陶を受けた蕎麦職人が石臼自家製粉で打っており不味かろうはずはないし、肉料理は鹿児島産の選りすぐりを使っているので、牛しゃぶより豚シャブの方が人気が高いのもうなずける。
 ランチメニューは、蕎麦と豚カツであり、いずれも街中の普通の蕎麦屋、豚カツやと同じ料金体系でありながら、味は一級であるから、お店の雰囲気や従業員のマナーの良さを思えばコスパはかなり良いと言える。
 おまけに今どき珍しく、駐車場を完備しているので、ランチには都合が良いのである。

*ブレッツ・カフェのランチコース

ブレッツのテラス

ブレッツのテラス

クレープクラシック

クレープクラシック

新宿高島屋に入っている、ブルターニュ地方のそば粉を使うクレープのお店。パリの本店はパリ一番のクレ-プリーとの評価(フィガロ誌)をとっているそうである。
サラダとクレープクラッシック、デザートクレープでランチセットになっていて2000円位。クレープクラシックの生ハムと目玉焼きを挟んだものは、私的なパリへの思いに繋がり懐かしい心にしみる一品でした。

*ニルヴァーナ・ニューヨークのランチブッフェ

檜山公園を望む

檜山公園を望む

カレー4種

カレー4種

ナン

ナン

ココナッツミルクのぜんざい

ココナッツミルクのぜんざい

 2002年までニューヨークのマンハッタンにあった伝説のインド料理店が赤坂ミッドタウンのガレリア1階に復活したお店。
 テラスは檜町公園に面していて広い芝の広場が眼下に見え、その先には公園の大きな木々が森のように見える都会ならではの絶景である。多くの外国人(欧米人ですよ)が日常的に広場を散策しているなど、日本離れした光景もなかなか良いものである。
 ランチはブッフェスタイルで、前菜はサラダを始め7種、主菜はタンドリーチキンなどにカレーが5種類、デザートを含めると30種類以上が所狭しと並んでいる。それに嬉しいのは焼きたてのナンがテーブルに運ばれてくる。ナンはバターが効いていてクロワサッサンのような味わいである。
カレーは小さな金属のボールに一種類ずつ入れ、数種類とるのがお約束のようであり、サフランライスも付けると良い。
 随分と洗練されたインド料理である。カレーはどれも美味しいし、デザートではとりわけ、ココナッツミルクにタピオカ、小豆餡が入ったぜんざいのようなものは、甘党にはたまらない味である。
 ブッフェ料金は2100円で、それに65歳以上はシニア割り引きで1500円、12歳まではジュニア割引で1200円であり、爺と孫で行けば二人で2700円になるというお得さである。ちなみに小生はシニア割引の対象ではあったが、とてもその年には見えないだろうから、一悶着起きても面倒なので、普通の支払にした。
 精神分析家のユングによれば、ギリシャ神話の時代から人間の老年期のあるべき理想の姿は、老賢人と美少女のペアであるとされていることでもあり、小生もこれからは、その組み合わせで2700円のコースを目指すことにします。

*アクアヴィットのランチコース

アクアヴィット

アクアヴィット

インテリア

インテリア

39度調理のグラブラックス

39度調理のグラブラックス

スカジナヴィアンブイヤベース

スカジナヴィアンブイヤベース

 北青山2丁目、伊藤忠の隣のレクサスのショールームの裏手に瀟洒な外観のレストランがある。北欧料理とフレンチの融合したスカンジナビア料理とうたっているスタイリッシュなレストランである。
 こんなところにこんなお店がと言う意外性は、南青山1丁目のホンダの裏にあるナリサワに似ている。
 天井の高い室内は北欧デザインのインテリアで統一されており、モダーンな印象が強い。
 ランチは2500円のプリフィクスであり、前菜と主菜を1皿づつ選ぶ。どれも洗練されていて美味しい。食事中はアルコールを飲まなければ、アイスティが水のように注ぎ足しでサービスされるが、これが甘すぎず、苦すぎず滅法おいしい。口の中を爽やかにしてくれ、スモークサーモンとかホタテなどの生に近い魚料理には本当によく合う。
 ランチタイムでは例によって中高年の御婦人達のテーブルが多いのだが、ディナーに来れば、又一段と客層も雰囲気も変わり、デートにこれ程ふさわしい店も多くは無いと思われる程である。
 個人的には、最近はそんな利用の機会もメッポウ減りましたが、今ではそれも慣れっこになり、ランチに来ても、夜使いの心配をする必要も無くなりました。
今は、色香より英知を磨き老賢人の道を目指す心境です、100パーセント偽りもなく。

 

「飲み人」の街、荒木町界隈の最近の変貌

四谷三丁目、荒木町と言えば、ちょっと大人のディープな飲み屋街として「飲み人」には知られた町である。
私が30年以上勤務していた大学病院からは徒歩圏内であることもあり、入り浸るほどではないが、時々は焼き鳥屋とかホルモン屋とか居酒屋、割烹、ジャズバーなどには通ってはいた。
 平成に入る前は、戦前の匂いがする町と言われ、平成に入ってからは昭和の匂いが残っている町として、一部の「飲み人」には強い人気がある。

 しかし、ここも新宿3丁目と同じように、店の新陳代謝が激しく、最近では、小奇麗なワインバーや和食屋も増え、客層も若年化してきたようである。同時に店側の経営ポリシーもかつてとは随分変わってきたように見える。

 以下は最近の荒木町体験です。
 荒木町で遊ばれんとする方はご参考下さればと思います。

*ワインバー「ツ○ヤ」

 合コン仲間5人で行き、ワイワイ飲んで食べていた時に、私の指輪が外れ、床に落ちた。木かタイルの床だったのか、大きな音がして跳ねたような感じであった。全員が音を聞き、オヤオヤということで、足元を探したが見つからず、店のギャルソンにも手を借りて、ライトを使って、テーブルをずらしたりして探しても、洋として出てこない。100パーセントこの席で落としたことに何の疑念もなかったので、閉店後に探してもらい、見つかったら電話してもらうことにして、その場は引き上げた。
 指輪はクロムハーツのものであったので、少々値が張るので、その夜閉店後を見計らって電話してみても、翌日電話しても、「ありませんよ。」と言うだけで、その後はあったとも見つからなかったとも言ってこない。とても誠意をもって探したとは思えない対応なのである。
 確かに、落としたことに関しては店に何の落ち度もないが、落とした当人も同席した仲間も100パーセント出てくると信じていたから、出てこないことが納得いかないし、その不可解さを店側が全く共有しないのも不愉快であった。その後店からは一度だって連絡は無いままである。

 たとえこちらから又電話しても、木で鼻をくくったように「ありませんでしたよ。」というのは目に見えているので、その後は電話する気も起きないでいる。

さて指輪はどこに消えたのというのか?

*蕎麦割烹「松○」

松○、ホタテとトウモロコシのすり流し

松○、ホタテとトウモロコシのすり流し

鱧と旬彩のお椀

鱧と旬彩のお椀

鮑の焼き物

鮑の焼き物

ここへはかつての職場の後輩でもある友人の紹介で行ったので、正面切って悪口はいえないが、これから行こうとする人のための参考になればと一言。

 食べログでは予算3000~3999円になっており、友人からは7000~10000円くらいと聞いていたので、そのつもりで友人と、その友人の3人で行った。料理は群を抜いたものではないが、食材も良いものを使っており、主人の仕事も悪くはない。
 美女二人に囲まれて、いい機嫌で冷酒4合に最後にブルゴーニュを一本あけた。
 勘定は6万を超えた。

 確かに酒によっては、勘定はいくらになってもおかしくはないが、一人の料理が7、8000円見当の店で2,3万のワインを値も告げずに抜いたとすれば、やはりボッタクリの気分があったといわれても仕方あるまい。
 友人のような常連には決してこのような商売はしないであろう。
 要は客を見て取れそうと思った時は取ってしまおうという類の店なのか。

 最後に店の名誉のために言っておくが、料理は始めから一人2万と言われれば、それはそれで納得の行く範囲のものではあった。

 それにしても経営方針は利口ではないと思う。せいぜい4~5万オーバーくらいに押さえておけば、また行くこともあっただろうに、一人のリピーターを失ったのだから。
 さて、「松○」に初てお行きになる時は、値段が明示された料理やコースとお酒を頼むのが賢明だと思います。

*焼き鳥「ど0ま0れ」

ど○ま○れの野菜のスティック

ど○ま○れの野菜のスティック

ここは、僕にとっては超・稀少な若いガールフレンドに連れられて行った店なので、批判するのは大切な女友達を失いかねないリスクがあるのだが、我慢ならないレベルだったので、やはり言っておこうと思う。

 まず料理であるが、今時風の焼き鳥屋としては合格範囲であろうが(肝レア焼きは○)、これが予約の取れない店?と思わず首を傾げる程度のものもあった。パリパリ野菜に、ディップは何ら手も加えていない赤味噌と塩では芸がなさすぎるし、水ナスに蜂蜜はミスマッチであろう。
(水ナスは、やはりEVオリーブオイルにパルミジャーノ・レジャーノでしょう?)

 それより何より、問題は接客マナーである。
 ワインは間断なく、どんどんグラスにたっぷりと継ぎ足しをされるのは、飲む方は落ち着かないし、せかされている思いがする。(事実せかしているのだろう。)一本空く前から次のワインをどうするかと聞き、1本目をつぎ終わると確かめもせず2本目を開けて、注ぎ足してくるという気の効かせようである。
 さらには、私が、グラスの上に手を置き「今はちょっとストップ。」と示せば、なんと断りもせずサッサとグラスを下げてしまったのである。
 焼き鳥も1種類を1本づつ注文すると、時間も手間もかかるから一種類3本頼め(当日は3人だった。)というようなことを無神経に言う始末である。

 客よりも店の都合が優先し、売り上げ第一の効率主義も、ここまであからさまになると呆れるというより引いてしまうのだよ。(と言うのは僕だけのようだけど。何故なら、予約が取り難いというし、当日も満席だったから。)

*ウナ・カンツォーネ

ウナカンツォーネのステージ

ウナカンツォーネのステージ

 カンツォーネやシャンソンを聞かせるバーである。
 僕はこの手のライブハウスには疎いので、よそとの比較は出来ないが、ここは居心地の良いところである。

 7時開店で7時半から1時間、9時から1時間の2回のショーがあるが、入れ替え制ではないので、予約さえ取れば、何時に行っても席は確保されている。
 また、毎日歌手は変わるので、連チャンで行っても同じプログラムに重なることはない。
 小さなハコで、目と鼻の先でプロの歌を聞くことが出来るのは、無理やり聞かされるカラオケに辟易している向きには非常に清々しい満足感がある。

お気に入りのシャンソン歌手と。

お気に入りのシャンソン歌手と。

お気に入りのカンツォーネ歌手と。

お気に入りのカンツォーネ歌手と。

 それにショウが終われば、お気に入りの歌い手と一緒に飲む事も出来る。

 極めて明朗会計で、ショータイムだけでなく、店と客が混然一体となって時間が流れる様は、昔の荒木町がそのまま残っているような感じがする。(ここは実際には舟町だけど。)

 ただ、毎日のように通ってくる、オタクっぽいおやじ達が奇妙な連帯感と存在感を見せているのが、初心者には少々気後れするところではあるのだけれど。

 以上が最近経験した荒木町のレポートですが、かといって荒木町から足を洗うつもりはなく、最近のマスコミグルメで断トツに評価の高い割烹も、フレンチも荒木町にあり、それらは小生は、まだ未体験なので、いずれ近々には食べに行き、又ご報告する予定であります。

 

「紀尾井町、山ぐち」ー江戸前京料理の、隠しておきたい良質な名店

アクトシアター

アクトシアター

トップハットプログラム

トップハットプログラム

 4月某日、タカラズカ宙組公演「トップハット」を赤坂アクトシアターで観劇の後、紀尾井町の和食屋「山ぐち」で夕飯を食べた。

 「東京いい店、うまい店」という本は、かのミシュランガイドより歴史の古い、元祖グルメ案内本であるが、発行元の文芸春秋本社が紀尾井町にあることもあり、紀尾井町、麹町、半蔵門、永田町、番町近辺の情報も多く、今の僕には大変重宝になっている。

 その中に、割烹料理の「山ぐち」が載っており、紀尾井町に来てからは、しばしば行くようになった。
 本によれば、京都の「割烹すだ」という名店で長年修行して10年くらい前に当地で開業したらしいが、僕は「すだ」は知らないし、店主の個人情報には、あまり興味もない。

 店は場所柄か、文芸春秋絡みの出版関係の客が多いようであるが、個人客は少なく、従って、お店は満員か(カウンター5,6名と離れの6人までのテーブル席が一つ)、我々一組かという感じで、予約を断られない時は、大概空いていて女子と2,3人で行くには、極めて使い勝手が良いのである。

 料理は、経歴からして当然京料理だが、いかにも京都らしいという、例えば「菊の井」とは違うし、「と村」、「京味」とも違う、うまく言えないが、も少し野趣味を感じさせる、江戸前京料理という言い方が相応しいかもしれないというものである。
 多分、店主の山口さんは関西の出ではないのではないか(おそらく関東)。

 料理は8700円を中心に上下に2,3種類のお任せコースのみである。
 基本的に献立表は無いのだが、当日は女将に頼んで書いてもらったので、当日の料理の案内に一緒に載せておきます。
 小生は、普段は中位のコースですが、当日は家族サービスで奮発し松コースにしました。

献立

献立

先付

先付

前菜

前菜

椀

造り

造り

 料理は正統で、丁寧で手抜きが無くとてもよいし、亭主も腰が低く居心地もいいが、ここの名物は、なんといっても,女将であろう。
 初めて行った時は、あまりに客あしらいが荒いので、女将ではないのかと不審に思い、「あなたが女将さん?」と、尋ねると、「いいえ、おかめです」、と答えるから、妙に納得したりしたものだが、何回か通ううちに、とても味のあるなかなかの女将と認識を新たにしました。
 今や女将会いたさで行くようなもので、癖になる女性です。主人のみる目は料理だけではなかったようです。

焼き物

焼き物

炊き合わせ

炊き合わせ

食事

食事

菓子

菓子

 さて、諸兄は「東京いい店やれる店」という兄弟本?を御存知でしょうか?
 ホイチョイプロダクション名で小学館から出しているものでありますが、隠れたベストセラーらしいです。
 こちらの著者は、なかなかの情熱を込めて恋愛作法を熱く語っています。
 もちろん小生も愛蔵していますが、タイトルがやばくて布団にもぐって、懐中電灯で読んでますよ。なんせ本の帯は「この本はエロ本です」ですよ!

 ちなみにこの本で「傾向と対策」を練って、イザ出撃しても完落ちどころか半落ちすらしたことはありません。オール完敗です。

 著者は本当に文字通りに成功しているのでしょうか?あの情熱に満ちた確信的表現は、単なる欲望から来る願望表現なのでしょうか?

 いずれにしろ、本の中のこと故、真実は不明です。

 

ゴールデンウィークにした事、その①一「男のだいどこ」を再読

東京から疎開してきている本達

東京から疎開してきている本達

 GWは、長野県の立科の山荘開きに行くのが恒例であり、今年も5泊6日で出かけた。
三日もすると、持ち込んだ本にも飽きが来て、家から昔疎開してきていた本棚を覗いてみると、古いグルメ本が何冊もあった。
中でも映画評論家の故荻昌弘の「男のだいどこ」は若い頃読んで、もっとも啓発された印象深い本であったので、暇つぶしに再読してみた。

男の台どこ 単行本

男の台どこ 単行本

 かつて、この本を読んでからというもの、小生も、京都に行けば錦市場、札幌に行けば二条市場、金沢に行けば近江町市場を徘徊するようになったし、合羽橋で厨房用品を探す楽しみも覚えたのである。

 この本は昭和47年6月が初版であり、僕が持っているのは昭和48年3月の第6刷であるから、なんと9か月の間に6冊を重ねたベストセラーであったのである。
昭和48年は僕が大学を卒業した年であるが、小生もそうであるが、既に今のダンチュウ族の元祖たちが啓蟄を待つ蟹のようにうごめいていたことになる。
 その後バブルの到来でグルメブームは爆発したのであるが、当時と昨今のグルメの決定的な違いは、当時は料理を自分で作ることが基本的関心事であり、そのための情報収集に食べ歩き、食材や器、盛り付けなど、プロの美学を自分で再現しようとしたのであって、決して高級店へ出入りする自慢や、新規開業の店の太鼓持ちなどはしなかったのである。
 バブルは男のグルメを、単なる食通気取りに変えたのである。
 荻は食通と言われることを本気で嫌がっていたそうである。

男のだいどこ文庫本

男のだいどこ文庫本

 荻の文章は、高い知性と深い教養を伺わせるだけではなくユーモアに溢れており、珠玉のエッセイ集になっている。
 食一般に興味のある方には、これは必見の書であることは断じて保証出来る。
「男のだいどこ」は、まもなく文春文庫にもなったが、今は光文社からも文庫本になっているので簡単に手に入る。
 後ひとつ必読の書を上げるなら、壇一雄の「壇流クッキング」をお薦めしたい。これも文庫本になっている。

 男のだいどこの冒頭の「君子厨房に入る」では、男が食うを語るはみっともないか、と問いかけ、男が買い物籠を下げて商店街を歩く快感を言い、男の食い意地でみっともないのは、通ぶって有名店の顔であることや、店の評判を自分の手柄のように自慢し威張る輩であると断じている。

 そして、京都の大市のすっぽんは「世界でこれ以上旨いものはない」宣言されても、否定する根拠は見つからないといいながらも、美味珍味はたまに食べるからこそ旨いのであるとし、大市のすっぽんでも3日と続けては食べたくはないと言っている。

 そして戦後の社会が獲得した「特権の市民化」は「名品」の規格量産化につながり、千葉のいわしのみりんぼしや白と青の缶のクッキー(泉屋のことか?)の大衆化と、その変質を皮肉っている。
 その対称的な存在として、麹町のクッキーのローザとか、日本橋のアラレの枡久、京都の干菓子の亀屋伊織をあげて、利に走らない頑固さを賞賛し、さらに全国の地方で見つけた埋もれた逸品を、余すことなく見事な語り口で紹介し見聞の広さを見せている。

 当時の、食を書かせて優れた名文家は、獅子文禄、吉田健一、開高健、丸谷才一、石毛直道、渡辺文雄、伊丹十三など食を職業としない人に多いが、食と性という二大本能をうまくかみ合わせ巧みなジョークに組み立てる才能は荻の独壇場であるし、味覚を語る語彙と表現力の豊かさは、今日の食を語るグルメ評論家の遠く及ばないところである。
 試しに「鍋物大全」の章をお読みになれば、小生のいわんとする意味がお分かりいただけよう。

 昨今のメディアのグルメ番組に登場し、「軟らかーい,甘ーい」と目をつむり、のけ反るだけの芸能人の表現力の乏しさは、慣れっこになったが、一方で車好き向けの「ノーカーノーライフ」というテレビ番組で、ゲストと共に登場する車を毎回、「カッコイー」としか表現しないMCを務める芸人はどうにかならんものだろうかといつも思う。これらの番組は生放送ではないのだから、台詞として誰かが教え込めばいいだろうにと思うのだが、番組制作者にも、もはやその力もないということなのだろうか。

 当時、荻は50歳そこそこであるのに、バー、クラブという女子の居る店から足を洗ったいい、その言い草は「女を口説くには酒はあったほうがいいが、酒を飲むときは女は要らないサカナである」といっているが、小生は60をはるかに過ぎても、うまい食事には、テーブルに美しい花があったほうが更においしくなると思うし、銀座の超庶民的キャバレー「白いバラ」へ行って、娘の年より若い女子(小生には実娘はいないが)と、でたらめな嘘のつきっこをして、もてたようにだまされた振りをするのが、また楽しくなった。要は、小生は、女を口説く楽しみがある時以外は酒は飲まないということになるのであろうか。
 

この本は、小生には、まだまだ修行が足りないゾと、色々教えてくれる教科書にもなっている

 そしてあとがきで、著者の主題は二つであるとし、一つは、食を語り、台所に入って食の実作に手を染めることが男にとって恥でも何でもないではないかという提言であり、もう一つは最近の(注昭和47年頃)日常の市販食品の胡散臭さは何とかならぬかという問いかけ対する同意である。
その最も酷い例として鶏のブロイラーを上げ、人間が作ったあれほど無味で虚無的な食品もないだろうから、さすがにブロイラーの運命もあと10年だろうと予言している。
 これは卓見であった。現在では、あの数十年前には鶏の代名詞であったブロイラーも、さすがにまともなスーパーからは姿を消したように見えるし、男の料理は、今では恥でも何でもなく、持て男の一つの要素にすらなっていると聞く。

 しかし芸能人が料理をして見せる番組は、どうも胡散臭くていけない。料理は、それを職業としない限りは男にとって、趣味道楽のものであり、お足を稼ぐものであっては本道を外れると思うからである。

 もっとも僕にとっては、料理は生活の手段にもなっている。なぜなら、ここ蓼科生活では全食作るのが、昔から小生の義務になっているからである。

年期の入ったダッジオーブン

年期の入ったダッジオーブン

Dancyu最新の永久保存版

Dancyu最新の永久保存版

 今回は久しぶりに、ダッジオーブンなんぞを持ち出して、オー・プロバンソーの中野シェフのレシピでブッフ・ブルギニオン(彼はハヤシライスと言っているが。)なぞ作ってみましたが、いざソースの仕上げに入るや、フォンド・ボーの缶が無いことに気付き、味は半端なものになってしまいましたが、「ここは山中にてやむを得ない、第一、美味しいいちぼ肉が手元にあるだけで有難いではないか」と諦めることが出来る心境に小生もあいなりました。この心境こそは、中村天風師の説く安定打座(あんじょうだざ)の教えが導きたもうたかもしれぬと、中村天風を教え、薦めてくれたN.Y.君に感謝したのである。

 そう、今年の山籠もりは精神修養の場でもあったのです。

 

すっぽん大市―京都で最高に贅沢な昼ごはん

 いつの頃からか、京都に行くと必ず一度は大市で昼ご飯を食べるようになった。

 良くは覚えていないが、若い頃読んだ映画評論家の故萩昌弘の「男のだいどこ」か俳優の故渡辺文雄の沢山のグルメ本の何かに載っていて、これは食べるしかないと決めたものの、時代はバブルに向かっていて、なかなか予約が取れず、しばらくお預け状態であったが、やがてバブルが終焉して、普通に予約が取れるようになったので、通うようになったのである。

 昼ごはんにしては随分値が張るのだが、晩御飯に食べるにはコース内容が余りにそっけないので、せっかく京都に来たからには夜はもっと色んなものが出る京割烹が優先してしまうから、たまのことだからと、こんな贅沢もいいだろうと昼ごはんに奮発してしまうのである

 ちなみに予約が取れないときは祇園の「いずう」の鯖寿司を食べに行くか、あるいは「平八」か「美云卯」のうどんすき、はたまた、「権兵衛」か「おかる」の狐うどんにします。

 今回は学会に合わせて行ったので、予定は一年前から分かっていたので、早めに予約して無事大市にありつくことが出来ました。

北野天満宮お守り

北野天満宮お守り

 予約時間の20分前には千本通りに着いてしまったので、時間つぶしに近くの北野天満宮に寄ってみた。
 修学旅行の中学生に交じって、頭がよくなりますようにと、石の牛の頭を撫ぜたり、帰りに「学業成就」のお守りを買うと、
「お兄さん、まだ勉強しはりますの?」と連れが呆れて言いました。
「はい、男は死ぬまで勉強どすがな」と訳の分からない京都弁?で返事をしておいた。

 大市は創業300年以上の老舗で、建物も京都でもひときわ旧く、ちょっと前までは上七軒の花街とともに西陣の旦那衆で賑わったそうである。また、すっぽん料理は、いかにも田舎者の成り上がり侍が好きそうでもあり、そのためか玄関口の天井も鴨居も低く、刀が振り回せないようになっているが、それでも鴨居には新選組の刀傷が残っている。

丸鍋

丸鍋

 何と言っても有名なのはすっぽん鍋に使う丸鍋で、信楽焼きの底の浅い平鍋で、今では亀甲鍋の名で売られているものであるが、丸鍋は、刀鍛冶のフイゴよろしく、コークスを燃やすクドに空気を送り2000度にもなる火にかけるので、さすがに一年は持たないそうで、年中窯元が焼いて補充するという。

すっぽん時雨れ煮

すっぽん時雨れ煮

スープ

スープ

 さて料理であるが、まずは突出しとして「すっぽんの時雨れ煮」が出され、ビールで一杯やっていると、丸鍋が運ばれてくる。鍋の底は未だ赤い状態である。まずはスープのみが供される。これを日本酒で割るのを薦められるが今回は遠慮しておいた。うま過ぎて1杯では終わらないし、数時間後には夜の席が待っているのでここで酔ってしまう訳にはいかなかったからである。

すっぽん

すっぽん

 次にすっぽんのぶつ切りが2,3度に分けて取分けられ、鍋は底ザライされ完全に無の状態になる。
 そこで、一旦鍋が下げられ、しばらくすると、又同じように丸鍋が運ばれてくる。
二度に分けて出されるのが大市の定石であるが、一人で来ても同じようにされるかは、一人では来たことはないし、聞かなかったので分からない。

雑炊

雑炊

雑炊

雑炊

 鍋が終わると、次が私にとっての本命の雑炊が運ばれてくる。雑炊は鍋とは別のスープで作られる。スープが程よく染み込んだ状態のお米の上に生卵が二個乗っている。客の目の前で卵をほぐし、かき混ぜて茶碗によそってくれる。

 一般に雑炊は、汁っ気を米にからめて、ほとんどとってしまう作り方と、汁の中に米が泳いでいるような作り方の2種類があるが、河豚やすっぽんのように旨味が濃く汁が澄んだ鍋ものでは、雑炊は断然前者の方が旨いと個人的には信じている。

 これほど美味いのなら、雑炊のお代りを言う客もいるだろう、と尋ねてみると、それは可であるとのことであった。無論丸鍋の追加注文もありである。
 しかし、たったこれだけのコースでありながら、通常は満腹感も満足感も十分なのである。

アンコール

アンコール

 あとは果物が出てお終いである。今回はアンコールという柑橘であったが、
果肉は味が濃くて美味いのだが、種が多く女性が品よく食べるのは難しそうで、さすがの振る舞いの美しさを誇る京女も、やや勝手が違うように見受けられたのである。

坪庭

坪庭

 最後に一緒に行った連れの紹介をしておきます。そうでないと、誤解が元で家庭の平穏が乱れても困ります。

?

?

 連れは、最近現役を引退した宮川町の元売れっ子の芸妓,年00さんです。以前のブログ(CASA=AF2012.7.7.)で嵐山の鵜飼や貴船の川床でも一緒にいましたおねえさんで,小生の花街唯一の知り合いです。
 かつては、京踊りでセンター?をとっていたほど島田髷の似合う京女です。ご紹介はここまで、以上です。

その夜は現役の宮川町の綺麗どころとご一緒しました。それはまた続編で。

 

春はお皿からーオ・プロバンソーのアスパラづくし

前回、プリズマの‘アスパラと蛤のフォンドゥータ‘というスープ仕立ての、春らしい和風なイタリアンのお皿をご紹介しましたが、先日、紀尾井町オ・プロバンソーを尋ねたら、正統フレンチのアスパラづくしのコースがありましたので、少々感動を込めてご紹介したいと思います。

メニュー

メニュー

このメニューは3月一杯とのことでしたので、皆さまにもぜひ味わっていただきたいとの思いから、2週続けてグルマンライフの更新になります。

 アスパラガスはもちろん白のフランスはロワール産(フランスにグリーンアスパラがあるかどうかは知りませんが。)でしたが、和の食材と同じ様に、やはり季節の早目のものが喜ばれるのでしょうか?パリでは、初夏の頃になると、ビストロで大きなアスパラガスの料理が出回りますが、3月ではやはり高級食材なのでしょうね。

アミューズ

アミューズ

 まずアミューズではアスパラのムースに赤ワインとバルサミコのソースがかかり、その上にコッパ(頭?)という生ハムが乗ったものでした。

白と緑のアスパラガス マセトドワンヌ レモンジュレ エストラゴン

白と緑のアスパラガス マセトドワンヌ レモンジュレ エストラゴン

 オントレは、 ‘白と緑のアスパラガス マセトドワンヌ レモンジュレ エストラゴン‘で、
マセドワンヌと野菜の賽の目切りですが、ここではアスパラを斜めに小口切したものと、スキャンピエビの茹でたものにゼリー状になったレモンソースが乗せられたサラダ仕立ての、春のお花畑を連想させるような見た目も美しい一皿でした。下にパスタの生地のようなものが敷いてありましたが、何か聞き忘れました。

アスパラのラビオリ コンソメスープとコンテ

アスパラのラビオリ コンソメスープとコンテ

 ‘次いでアスパラのラビオリ コンソメスープとコンテ‘
コンソメはテーブルでかけてくれるという演出つきでしたが、まあ手の込んだ洋風ワンタンスープという感じでしょうか。

ホワイトアスパラガス 茹でたてをオランディーヌソース

ホワイトアスパラガス 茹でたてをオランディーヌソース

 ‘ホワイトアスパラガス 茹でたてをオランディーヌソース‘
 熱々のアスパラに定番のオランディーズソースで食べますが、湯で加減が絶妙で文句のない一品でしたが、個人的にはソースは、もっと酸味があった方がアスパラには合うような気がしており、ビネガーソースの方が好きです。それにラギヨールのナイフでなくとも切れる位、言えば缶詰のアスパラのように柔らかくゆでて、ハーブビネガーでマリネしたような、初夏のパリのビストロのテラスで食べたアスパラの味が忘れられませんです。まあ、初めて行ったパリで、食べたという心象が強いのでしょうが。あくまでも個人的な意見です。

ホワイトアスパラガス

ホワイトアスパラガス

ビネガーソース

ビネガーソース

実は5日後に、裏を返して再びこのコースを食べに行ったのですが、その時はシェフがビネガソースにしてくれました。別に初めてでも、客の注文は聞いてくれますからお好みな方をどうぞ。

鱈のオレンジ風味、ホワイトアスパラガスのサヴァイヨンとロワイヤル

鮃のオレンジ風味、ホワイトアスパラガスのサヴァイヨンとロワイヤル

次は魚料理で、’鮃のオレンジ風味、ホワイトアスパラガスのサヴァイヨンとロワイヤル‘
オレンジを入れたオリーブオイルでマリネした鮃の切り身にサヴァイヨンソースをかけてオーブンで焼き、ロワイヤルソースで頂くという一品でした、濃厚な2種類のソースが楽しめる、最近はあまり見ないフレンチらしい、ソースで勝負というシェフの自信作でした。

仔牛ひれ肉のパイ包み焼き<ウエリントン>

仔牛ひれ肉のパイ包み焼き<ウエリントン>

メインディッシュは、仔牛ひれ肉のパイ包み焼き<ウエリントン>
文字どおりのお料理ですが、ウエリントンの意味はよくわかりませんでした。
ソースはポートワインとトリュフのソースで、やや匂いのある仔牛のひれ肉にはよくマッチしていました。

レモンのクリームブリュレとベルベーヌのシャーベットとキイチゴのマリネ

レモンのクリームブリュレとベルベーヌのシャーベットとキイチゴのマリネ

デザートはレモンのクリームブリュレとベルベーヌのソルベとキイチゴのマリネでした。いずれも丁寧に作られており美味しかったですが、レモンのスライスがこんがり焼けたのは新鮮な味で楽しめまました。東京の名物に野菜のおせんべいがありますが、あれの暖かいものを想像されると、当たらずとも、遠からずです。

 春はいろんなところからやってきます。花粉症で春到来を知る方もおられるでしょうし、毎朝のウォーキングで、風の匂いで季節が変わったと気が付くこともあるでしょう。
 それになんといっても春の食材が出回り始めると本当に春が来たと実感します。
 和食なら、タケノコや山ウド、あいなめやホタルイカ、タイのお刺身もいいですね。 大きな浅蜊や蛤、そしてフキノトウから始まってウルカ、コゴミ、タラの芽、アブラナと山菜の天然ものが出てきます。そしてイタリアンならなんといってもフルールトマトのパスタでしょう。今は高知だけではなく愛知をはじめあちこちでいいものが出ています。
 

そして木々も芽吹き、日に日に緑が増していくのは、生命力を感じていくつになっても良いものです。
 冬至が済んで、暗く寒い夜長がピークを過ぎて、やがて春分が来ると、みるみる日が長くなっていきます。これから夏至に向かう間が何か希望があって一番いいですね。
 この気持ちだけは、いくつになって変わりませんですねえ。もう希望を持つ年でもないとは思いつつ、気持ちが前向きになります。
 春が来ても、もうさすがに気持ちが浮き浮きするってことはありませんが、これって、体のほうがもう枯れてしまっているのでしょうかねえ。(?)

 

誕生日あれこれーところでミシュランって何?

今年も誕生日が巡ってきて、「また一つ年を取ってしまった。」、というより、「今年も誕生日を迎えられた。」という方が実感に近いという年になってしまいました。
フェイスブックにブログが掲載されるためか、見ず知らずの多くの方からお祝いのメッセージを頂き、年甲斐もなく嬉しい気分になりました。皆さん、お気に掛けて頂き本当にありがとうございました。
また今年は、色々な心のこもったお祝いを頂きました。

しろたえのチーズケーキ

しろたえのチーズケーキ

まずは私のクリニックのスタッフが、昼休みに話題にしたことのある赤坂の‘しろたえ’のチーズケーキを買ってきてくれ、ろうそくに火をつけハッピーバースデーを歌ってお祝いしてくれました。私が鈍いのか、本当にサプライズでした。
‘しろたえ’をご存知の方には、その価値がお分かりのことと思いますが、クリニックから徒歩10分以上はかかると思うのですが、探し当てて買って来てくれたのには、少々感激しました。

ジョージ氏のアールデコのアンティークグラスボトル

ジョージ氏のアールデコのアンティークグラスボトル

私のクリニックと同じ建物の一階にある、美容室イエス・ジョージの畏友ジョージ氏が、しばらく前に自分のためにチェコで買って封を切らずに愛蔵していたウイスキーを入れるガラスのボトルをプレゼントしてくれました。アンティークガラスで、アールデコのシャープなデザインが素晴らしく素敵なもので、早速クリニックのサイドボードの上に飾ってあり、毎日眺めては満足感に浸っています。美しいものはいつまでも美しいのは人と同じですねえ。

隣は山梨の遊び人です。

隣は山梨の遊び人です。

そして、さて、これはどこでしょう?銀座の、今や女子供でも知っている戦前からある大人の花園ですが、誕生日を知ってかどうか、ショーのダンサーたちがフロアーに招き記念撮影をしてくれました。突然のことで、小生の茫然自失の様子が良くお分かりかと思います。

バースデーケーキ、斎藤シェフ作

バースデーケーキ、斎藤シェフ作

最後は誕生日の食事に青山のプリズマ(グルマン2013.5.10,CASA-AF2013.6.18)に行ったら、斎藤シェフがバースデイケーキを作ってくれていて、心のこもったお祝をしてくれました。

どれもこれも嬉しく心に残るものでした。

そこで今回はプリズマの近況を綴ります。

一年ぶりの訪問だったので、シェフとマダムのお二人でお出迎えをしてくれ、ちょっと懐かしい親戚におよばれしたような気分になりました。相変わらずお二人で切り盛りされていましたが、料理のタイミングも私達の早いペースに見事に合わせてくれ、少しも手持ち無沙汰など感じさせない見事なコンビネーションプレイを見せてくれました。

キッチンではコンロの上に3つも4つものフライパンに火が入り、オーブンでは絶えず何かを焼きながら、鍋ではパスタを茹でるという離れ業は、料理人の職人芸というより、サーカスの曲芸を見るような思いで、思わず見とれてしまう程でした。

プリズマのメニューa

プリズマのメニューa

プリズマのメニューb

プリズマのメニューb

鯵のパンタネッラ

鯵のパンタネッラ

リードボーのラビオリ春のトリフと

リードボーのラビオリ春のトリフと

アスパラとハマグリのフォンドゥータ

アスパラとハマグリのフォンドゥータ

料理の完成度は、益々円熟の域に入ってきており、今回は‘鯵のパンツァネッラ’と‘春トリフがのったリードボーのトルテッリ(ラビオリ)’が新鮮なお皿でした。
また‘ホワイトアスパラと蛤のフォンドゥータ(スープ仕立て)’はプリズマならではの春を告げる幸せな一皿でした。
鯵は鮨屋で板前が目の前でさばいてくれるものと同じような新鮮さであり、僅かにスモークされた香りが魚介を得意とするシェフのセンスの良さを見せており、パンツァネラという家庭の冷やご飯のような料理を洗練された一皿に仕上げていました。

キャビアと赤ワインソースのタリオリーニ

キャビアと赤ワインソースのタリオリーニ

タリオリーニは十八番であるからもちろん美味いのですが、今回はキャビアがしっかり驕られていて、私には久ぶりということもあってか、目がくらむような味わいでありました。赤ワインソースも隠し味が何処かイカ墨のような味わいを出しており、イタリアンの技の渋さが光った一品でした。

小鳩のサルサぺヴェラーダ

小鳩のサルサぺヴェラーダ

メインは小鳩のローストでソースはぺヴェラーダという胡椒の効いた肝系の濃厚なものですが、よくある血のソースより、僕はズーとこちらの方が好ましく感じました。血の匂いもジビエ好きにはたまらないらしいが、僕は元の商売柄、手術中に顔にかかる血の匂いが連想されてあまり好きではありません。この鳩のローストは絶妙な火加減で、正直言えば、トゥールダルジャンの鴨より美味しいと思えました。

とにかくプリズマの料理は、私の味覚では超一級ですが、なぜかミシュランでは無視されたままであります。一方文芸春秋が4、50年前から出している日本のミシュラン「東京いい店うまい店」では☆5つの最高峰であります。筆者の論評もべた褒めになっています。

私のグルマンライフで取り上げた、ラ・ボンバンス(2013.5.30.)は一つ星,イルペンティート(2012.11.2.)アメコヤ(2014.3.5.)はビブグルマン(5000円以内であがる美味い店)で星をとっているが、ペンティートが5000円で上がると思って行ったら、初めての人は、びっくりするだろうと思いますよ。
私のお薦めの白金のラシエット(2012.7.18.)や紀尾井町のプロバンソー(2014.12.3.)は無冠である。

この格差は何か?

というかグルメ本というのはこういう程度のものと思った方が良いということかもしれませんね。ミシュランに載ったからといって驕ってみても滑稽でしかないし、載らなかったと言って嘆くのも無駄な気苦労というものでしょう。

評価本の評価を必要以上に高めたのは他ならぬ巷の自称グルメたちだと思います。
聞くのと実際の違いは、誰もが食べログで経験していることと思います。
ミシュランはそれと同じか、それ以上と思った方がいいのだろうと思います。

要は、人の評価など当てにしないで、自分の足で自分の舌に合う店を探すしかないと言うことなのでしょうか。
元々ドライブ旅行でガソリンスタンドに寄る客のために、ホテルと地元のレストランのガイド本としてタイヤ会社がサービスで始めたのが、いつの間にかとんでもない権威を持ってしまって、当のミシュラン社自身が一番驚いているのではないでしょうか。

右がそば粉のガレット

右がそば粉のガレット

ところで、プリズマでは最後の飲み物でお茶菓子が出ますが、今回の注目はそば粉のガレットでした。
なんと静岡県島田市の‘藪宮本’(関連記事2012.8.1.)のそば粉で出来ていました。
それで、どれほどの味の差が出ているのかは良くは分かりませんが、その心意気が良いではないですか。

食材は少しでも質の高いものを求める、それこそプリズマの信条であり、真骨頂でもあります。
斎藤シェフご夫妻!今のまま精進されるのが一番だと信じています。

 

赤坂の洋食屋、東洋軒を初訪問ーエビフライの真髄は何か?

かつては宮内庁御用達であった三田の洋食屋、東洋軒が赤坂に復活したとニュースになった時は、むしろ青山一丁目のNARISAWAの成沢良浩シェフがプロデュースした店として驚きと共に伝えられた。

 東洋軒の名前は、明治、大正時代のかつての名門とはいえ、戦後生まれの小生が知る由もないが、ナリサワは有名すぎるシェフだから小生も小田原早川港に店があった時から知っているだけに関心があった。

 赤坂に仕事場を持って、より身近になったのだが、なかなか行く機会が無くようやく先日、観劇の後に早めの夕食で寄ってみた。

 場所は赤坂豊川稲荷の裏手にある赤坂Kタワーの一階にある。駐車場は地下の有料駐車場を使うが、お店の人が予約してくれるので、平置きが確保できた。エレベーターで昇って降りたところが入り口であった。
 お店は高い天井と茶系でカラーコーディネイトされたシックでスタイリッシュなインテリアであった。開店早々に入ったので他に客もいず、写真を自由に撮ることが出来た。

お店の空間

お店の空間

カトラリー

カトラリー

 メニュ―はアラカルトと2種類のプリフィクスメニューがあったので、お安い方の5800円のコースを選んだ。前菜2種とメインⅠ種を選んで、後は名物ブラックカレーかハヤシライスの2択となっており、それにデザートとお茶が数種類の中から選べた。  

 前菜は牡蠣フライとオニオングラタンスープにして、メインはメンチカツと海老フライとコロッケを頼んだ。それとカレーとハヤシライスを頼んだので、大方のお皿は網羅してしまったようなものであった。

カキフライ

カキフライ

オニオングラタンスープ

オニオングラタンスープ

メンチカツ

メンチカツ

フライ3種

フライ3種

ブラックカレー

ブラックカレー

デザート―モンブラン

デザート―モンブラン

コーヒーのプチガトー

コーヒーのプチガトー

 いずれも非常に美味しかった。とにかく丁寧に料理されているなあ、という印象であった。
 小生は愛知の出身なのでエビフライには一家言があります。エビフライは、デカければいいという名古屋の田舎者の発想を諸兄は予想をされるでしょうが、実は全く違うのですよ。
 愛知県と静岡県の境界にある浜名湖では知る人ぞ知る絶品のサイマキ海老が採れ、浜名湖の湖畔にある(あった?)寸座ビレッジというリゾートホテルではそれをエビフライにして供されたのですが、それが僕の人生のエビフライのスタンダードになっています。要するに、エビフライは海老の香りが命なのです。でかくとも冷凍ではエビフライになりません。
 香りの強い食材はいずれもフライにすると美味しいのは、松茸のフライをご存知の方にはよくお分かりの事と思います。
 東洋軒のエビフライは、パン粉も揚げ方も最高クラスでしたが、海老の香りとなると、愛知県人には今一つでした。
 しかし小生は東京での洋食の外食経験があまりないので正しい比較は来ませんが、東洋軒はグリル満点星のような庶民派ではないし、また、かつての斎藤元志郎氏の旬香亭やフリッツのように味にこだわり過ぎた押し付け感もなく、粛々とお皿が出され、淡々と食べた感じでした。ところが食べ終わると、言いようのない満足感で満たされたのです。それもノンアルコールビールでそれだけの気分にさせてくれたのだから、立派なものだと思います。

 ちなみに手元にあるグルメ評価本で東洋軒の評価を比較してみると、「東京いい店うまい店」では5つ星で最高の評価、「東京ミシュラン」ではビブグルマンでスプーンフォークが二つであった。「東京最高のレストラン」では4人の評者が王冠4ツを、1人が3ツと最高ランクの評価でした。
 3冊が揃って高い評価をすることはかなり珍しいので、東洋軒は本当に価値のあるレストランなのでしょう。その評価に、僕も別に異論はありませんし、又行きたいお店であることにも異論はありません。

 今は静岡に戻った旬香亭(現在は神田ポンチ軒、ごく最近は目白にステーキ屋旬香亭を開いたそうな。)の斎藤氏も、元は有名フレンチの出であるから、成沢氏との肌合いの違いが洋食にもよく出ていて面白い。両者のフライは甲乙つけがたいから、東洋軒も“とんかつ”を出してくれると、その違いが良く分かると思うし、フリッツの裏メニューにあった“ラーメン”まで行ってくれると、もっと良く分かるような気がするが、ナリサワにラーメン作らせたら一風堂からテロにあうかもしれないから、この話はやめておきましょう。

 

‘修善寺あさば’のお正月―「たまの贅沢の価値」を伝承する。

 今年のお正月は、海外に赴任中の息子夫婦が帰国したので、久しぶりに家族そろっての正月を過ごすことになった。
 彼等のたっての希望が温泉だったので、たまには贅沢を経験させるのもいいだろうと、間違いの無いところで修善寺のあさばに行くことにした。12月中旬に入ってからの予約であったが、運が良いことに2日に部屋が取れたので、奮発して行くことにした。部屋は能観劇の前回と同じ‘雨月’であった。仲居さんもお馴染みの人が担当であり、すっかりリラックスでき、良い骨休みになった。

 息子たちは初めてのあさば体験であり、私達もあさばの正月は初めてであり、大変優雅で贅沢な正月を体験出来た。

正月のロビー

正月のロビー

床の間の正月設え

床の間の正月設え

 立派な門松が飾られた、あさばを象徴する古い門をくぐると、いつもにも増して華やいだロビーが迎えてくれた。今回は若女将も若主人も玄関におられ、久しぶりにお会いできた。若女将は二児の母親となり、落ち着きと艶やかさが増し、さらに美しさが磨かれたかのように見受けられた。

正月の能舞台

正月の能舞台

 お正月は、能舞台で雅楽と舞が行われるとのことで、それは予想もしていなかったので、春先から幸運であった。今回は能と違って、浴衣のままの観劇でよいとのことであったが、写真を撮るのは懲りたので、目だけでしっかり眼福を楽しんだ。
 雅楽の奏者は3人で、笙とヒチリキと横笛を演奏し、横笛では鈴を持った巫女さんが登場し舞を舞った。黒田節のようなメロディから始まったので、おそらく最初の雅曲は越天楽であり、後はその編曲であったのかもしれないが、よくは分からなかった。
 雅楽をきちんと聞いたのも初めてで、西洋楽器と違って音階も不安定で、ハーモニーもとれていないように聞こえ、何とも奇妙な音色に違和感はあったが演奏する風情は抜群で、巫女さんの舞も美しかった。
 家の近所の大宮神社の巫女さんの舞とは、だいぶ違っていた。

 まるで平安時代の貴族になったかのようで、正月気分も盛り上がったところで夕飯になった。

正月の献立

正月の献立

3段重

3段重

 献立はお正月メニューでいつもとすっかり感じが変わっていた。まず、数の子から始まり、3段重のお節が出され、あさばでは、いつもは出ない鮪の刺身がヒラメと紅白で出された。恒例の黒米アナゴ鮨と鍋物は無く、ご飯はとろろであった。
 3段重は山海の珍味がこれでもかと言うくらい並んでいて、これでは我が家でお重を作ることはなかったと、悔やまれたのであった。種類も量も多く、女性たちはお重でもはや満腹の体であった。

からすみの飯蒸し

からすみの飯蒸し

鮪と平目

鮪と平目

蟹の真薯椀

蟹の真薯椀

伊賀牛いちぼの炭火焼

伊賀牛いちぼの炭火焼

ご飯は大間の鮪に自然薯

ご飯は大間の鮪に自然薯

 個人的には、初めて美味しいと思えた伊達巻というものに出会えたし、田作りも自作のものより口に合ったというのも初めての経験であった。料理人の仕事の深さを感じた。

シャトームートンロートシルト95年

シャトームートンロートシルト95年

デキャンタージュ

デキャンタージュ

記念のエチケット

記念のエチケット

 それに今回は友人から開院祝いに頂いたシャトームートン・ロートシルト95年を持ち込んでいたので、これ以上は無い贅沢な祝い膳になった。
 あさばには葡萄のエンブレムを着けたソムリエが居り、きちんとワインの世話をしてくれるからワインも安心である。
 ちなみにあさばのワインリストにはロートシルトもラトゥールもあった。
 参考までに言えば、開栓料は税込3500円でした。

京都風の雑煮

京都風の雑煮

サロンのコーヒー

サロンのコーヒー

 翌朝の雑煮は丸餅白みそ仕立てと切り餅澄まし仕立ての選択が出来た。サロンでのコーヒーも、凛とした正月の空気であった。

 まだ学生の頃、父親が何の風の吹き回しか、家族全員を引き連れて京都の俵屋で正月を過ごしたことがあった。5つ星の高級旅館に泊まるのも初めての経験であり、初詣に行った八坂神社で縄に火をつけて、くるくる回しながら旅館に帰ったことや、京都の丸もちの白味噌仕立ての甘い雑煮や、俵屋の設えの完璧さなど,細事にわたって良く記憶しているのは、それだけ感激も深かったのであろう。
 その鮮烈な記憶が、今、自分が親になって子供に同じようなことをする動機になっているのかもしれないなあと、風呂に入りながら亡き父親を思い起こした。

 白状すれば、私はまぎれもないファザコンであり、オヤジの背中を見て育ち、オヤジの背中を追いながら今日まで来、結果、超えるどころか丸で追いつく事すら出来ず、ただ徒に年を重ねてしまいました。

 僕は、息子には父親として誇らしいことは何も残せていないから、失敗続きだったけど、最後まで常に新しいことに挑戦し続けたという姿勢だけは貫いておこうと、思いを新にし、30年前の老いた父親を自分に重ねてしみじみとし、両手でお湯を掬い、何度も顔を拭ったのでした。

 帰路は、息子夫婦を新幹線三島駅で降ろすことになり、三島に来たからにはお昼は“桜やの鰻”にしようと電話してみると、予約待ち250名というので諦めた。
 250名という数字にはびっくりしたが、これは三島市民の正月行事?になっているのか、それともアベノミクスの効果なのでしょうか?

狩野川から見た富士

狩野川から見た富士

 三島からの帰りは、東名が大渋滞だったので、熱函道路、ターンパイクから厚木インターの迂回コースをとったのが大正解で、渋滞にもあわず、おまけに狩野川べりからの美しい富士山も見ることが出来ました。

 このところのあさばは、何かしら安定感が薄らぎ、どこかに不安が感じられたが、今回の訪問では盤石で、再びためらいもなく、あさばファンを名乗れる自信を回復する旅となりました。

 

 

ログイン